理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
脳血管障害者に対する起立負荷時の頚動脈血流動態
井戸 尚則, 渡辺 将弘, 川田 尚吾, 足立 将秀, 江西 一成
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p. Ba0294

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抄録
【目的】 脳血管障害者に対する理学療法に起立歩行動作は不可欠であり,その際の循環応答の確認も重要である.しかし,脳血管障害者の起立時循環応答は必ずしも明らかではなく,しかも,心臓より上位の頚動脈や脳血流の起立時循環応答も十分には解明されていない. 我々は,前年度本学会において,脳血管障害者に対する起立負荷時の頚動脈血流,循環応答を報告したが,脳血管障害者の疾病と加齢という2因子の影響については不明のままであった. そこで本研究では,同年齢の健常高齢者及び健常若年者に対する起立負荷時の頚動脈血流,循環応答を観察し,脳血管障害者における応答と比較検討することを目的とした.【方法】 対象は発症後48.3±10.5日の男性脳血管障害者10名(脳卒中群,梗塞4名,出血6名,平均年齢56.1歳,身長166.5cm,体重65.5kg,modified Rankin Scale2~3),健常高齢男性9名(高齢群,平均年齢55.6歳),健常若年男性9名(若年群,平均年齢23.4歳)とした. 測定項目は,血圧,心拍数,総頸動脈血流量とし,血圧,心拍数は電子非観血式血圧計にて非麻痺側上腕動脈より測定した.総頚動脈血流量は超音波エコー(TOSHIBA社製Xario)を用いて,非損傷側総頚動脈より測定した.計測部位は,内頸外頚動脈分岐部よりも1.5cm以上離れた総頸動脈部とし,そこに超音波プローブ(7.5MHz)を当てた.総頸動脈平均血流速度はパルスドプラ法(ドプラ入射角60°以内,サンプルボリューム血管径約2/3)を用い計測した.その後,内膜間距離から動脈直径を計測して総頸動脈断面積を求め,断面積と平均血流速度の積より1分間あたりの総頚動脈血流量を求めた. 測定は,食事後2時間以上の経過,室温25℃の条件下で行った.手順は,Tilt table上で安静臥位をとった後,60度10分間の起立,及び再度背臥位とし,この間に総頸動脈血流量及び血圧,心拍数を1分毎に測定した. 総頸動脈平均血流速度・血管径・血流量及び血圧・心拍数の各安静時の値と起立時変化率を,各群内および3群間で比較検討した.統計処理にはBonferroniの多重比較検定を用い危険率5%未満を有意とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は星城大学倫理委員会の承認を受け,被験者には研究の主旨と方法を十分に説明,同意を得てから施行した.【結果】 総頚動脈血流は,起立10分間の平均血流速度では脳卒中群(-6.4~-1.0%),高齢群(-13.2~-6.7%)で減少傾向にあったが,若年群(4.0~13.9%)と増加傾向だった.起立時血管径は脳卒中群(-9.2~-6.5%,p<0.05),高齢群(-5.1~-2.1%),若年群(-9.2~‐4.8%,p<0.05)いずれも有意に減少した.総頸動脈血流量は脳卒中群,高齢群,若年群共に減少(-17.8~-7.2%)傾向にあったが,3群間に減少率の有意差を認めなかった. 起立時循環応答は,収縮期血圧で3群間共に減少(-11.9~-1.0%)傾向にあった.また脳卒中群では,起立1分時に高齢・若年群よりも有意な低下(-11.9%,p<0.05)を認めたが,2分以降(-9.0~-5.4%)は有意差を認めなかった.一方,心拍数では起立直後より3群共に有意な上昇(12.5~31.2%,p<0.05)を認め,若年群では1,2分時の心拍上昇が,他群よりも有意に大きな上昇であった.【考察】 本研究結果から脳卒中群において,起立負荷に対する総頸動脈血流量は減少傾向にあるものの維持されており,高齢群及び若年群と比較しても大きな相違を認めなかった.また,体循環では収縮期血圧が起立後1分時のみ低下するが心拍上昇という循環調節応答が発動し,血圧は維持された. 今回の結果から,脳血管障害者は心臓より上位にある総頸動脈部においても健常高齢者及び若年者同様起立負荷時に血流量の維持されていることが確認できた.しかし,起立直後に収縮期血圧の低下を認め,その原因に動脈硬化等による圧受容器の感受性低下が考えられるものの,鈍化した反応ながらも正常の作動していた. したがって,脳血管障害者に対する起立負荷は頸動脈部を含めた循環動態に大きな問題はないことから,理学療法における積極的起立負荷が安全かつ不可欠であることが明らかとなった.【理学療法学研究としての意義】 頚動脈エコーにより脳血管障害者及び健常高齢者,若年者の循環調節応答による血圧維持,同時に頸動脈血流の観察から疾病・加齢による脳血流維持の一端を確認することができた.理学療法を行う上で脳血管障害者の血圧調節を理解し,起立負荷の安全性を循環動態の点から認識することも重要である.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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