抄録
【はじめに、目的】 脳卒中治療ガイドライン2009において、「くも膜下出血、ラクナ梗塞、深昏睡、発症前の日常生活動作が不良な場合を除く脳卒中急性期の症例は、専門医療スタッフがモニター監視下で、濃厚な治療と早期からのリハビリテーション(以下リハ)を計画的かつ組織的に行う脳卒中専門病棟であるStroke Unit(以下SU)で治療することにより、死亡率の低下、在院期間の短縮、自宅退院率の増加、長期的な日常生活活動とQuality of Lifeの改善を図ることができる(グレードA)」とされている。またSUの効果については先行研究で述べられているが、Stroke Care Unit(以下SCU)単独の有効性に関するエビデンスは少ない。当院では、平成15年にSCUを開設し、平成18年よりSCU加算算定要件を満たす施設として12床のSCUを運営している。平成23年より専任の理学療法士3名、作業療法士1名、言語聴覚士3名を配置して、組織的な早期からの集中的リハを提供している。これまで、SCU専任セラピストの増員による集中的リハの効果は明確ではなく、また安全性についても検証されていない。本研究の目的はSCU専任セラピストの増員と集中的リハが、急性期合併症の発生率と転帰に与える影響について検証することである。【方法】 対象は平成21年4月から平成23年9月に相澤病院SCUに入院し集中的リハを施行し、退院した脳卒中患者とした。そのうち、専任理学療法士2名体制(常時1名勤務)の期間である平成21年4月から平成22年3月の患者(以下A群)、専任理学療法士3名体制(常時2名勤務)の期間である平成22年10月から平成23年9月の患者(以下B群)とした。調査項目は、年齢、性別、入院時NIH Stroke Scale(以下NIHSS)、在院日数(SCU在院日数と退院までの在院日数)、リハ実施単位数、合併症(不眠、せん妄、誤嚥性肺炎、関節炎、抑鬱、転倒、褥瘡、深部静脈血栓症)の有無、再発(再梗塞・再出血・出血性梗塞)の有無、退院後の転帰(自宅退院率、死亡率)とし、電子カルテより後方視的に調査した。統計方法は、年齢、在院日数、1日当りのリハ実施単位数の比較はt検定を、入院時NIHSSはマンホイットニーのu検定を、合併症の有無、再発の有無、退院後の転帰はフィッシャーの正確確率検定を用いて危険率5%未満で判定した。【倫理的配慮、説明と同意】 当研究を行うに当り、個人を特定するような情報は提示しないよう最大限の配慮をして行った。【結果】 対象者の平均年齢は(以下A群/B群)75.2±12.6歳/74.5±13.1歳、入院時NIHSSの中央値は5/5であり、ベースラインとして2群間に有意な差は認めなかった。SCU平均在院日数は5.9±4.2日/5.6±4.0日、退院までの平均在院日数は26.4±19.0/29.3±20.4日で有意な差は認めなかった。またSCUでの1日当りのリハ実施単位数は、5.0±1.8単位/5.8±1.6単位で、B群の単位数が有意に多いことを認めた。(P<0.001)。合併症を有したものは、74例(不眠6名・せん妄19名・誤嚥性肺炎31名・関節炎4名・転倒1名・褥瘡8名・深部静脈血栓症3名)/52例(不眠3名・せん妄16名・誤嚥性肺炎26名・関節炎2名・転倒2名・褥瘡0名・深部静脈血栓症2名)で、B群において有意に低いことを認めた(P<0.05)。再発例は33例/17例で2群間に有意な差は認めなかった。退院後の転帰は、自宅退院率53.6%/54.2%、死亡率4.7%/3.6%でそれぞれ2群間に有意な差は認めなかった。【考察】 SCUにおける1日当りのリハ実施量を増加することで、急性期合併症の発生を予防する可能性が示唆された。SCUへの多職種専任セラピストの配置は、早期離床や活動量の増加、廃用障害や二次的合併症の予防など、組織的チームアプローチの充実に繋がるといえる。また専任セラピスト増員後に再発例や死亡率は増加していないことから、リハ実施量を増加しても、十分なリスク管理のもとで行うことで安全性は確保されると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 これまでSCU単独の効果を報告した研究は少なく、本研究はSCU内での急性期リハを充実させることが合併症予防に効果的であり、SCUでの集中的リハの重要性を示すエビデンスの一つとなると考える。