理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
脊椎術後早期と慢性期の対麻痺患者にHALを用いた短期リハビリテーションの効果
榊間 春利松田 史代木山 良二川田 将之川畑 良大井尻 幸成
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キーワード: HAL, 対麻痺患者, 症例検討
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p. Bb0518

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抄録
【はじめに、目的】 Hybrid assistive limb (HAL)は、皮膚表面より微弱な生体電位信号を読み取り、膝・股関節運動を援助するロボットスーツである。HAL装着開始から停止までの間、生体電位レベル、床反力情報、アシストの強さなどがリアルタイムでモニタリングされる。本学会においても、HALを使用した理学療法の報告は散見されるが、まだ疾患別の症例報告やその方法、効果に関する報告は少ない。今回、脊椎手術後7週と術後1年9ヶ月経過した対麻痺2例に対して、HALを用いた理学療法を2ヶ月間行い、その効果について考察したので報告する。【方法】 症例1は胸椎OPLLに対して除圧固定術を施行された60代女性。HAL装着前、MMT:上肢5、下肢1-3、Th4以下不全知覚障害あり、AIS:C、ASIA下肢スコア:Rt12/Lt11、Walking index for Spinal Cord injury (WISCI II):0であった。回復期の本症例に対しては、HALを使用した立位・歩行練習により、椅子からの立ち上がりや歩行能力が向上するのかどうかを検討することを目的とした。HALを装着して椅子からの立ち上がり練習、平行棒内での歩行練習を1日30分間、週6回行った。症例2は胸髄腫瘍除去術が施行された40代女性。HAL装着前、MMT:上肢5、下肢3-5、両下肢しびれ感や左下肢の深部感覚障害あり、AIS:D、ASIA下肢スコア:Rt21/Lt18、WISCI II:16、ADLは自立していた。慢性期の本症例に対しては、HALを使用した歩行練習により、歩行能力や歩容が改善するかどうかを検討することを目的とした。そのため、HAL装着前と理学療法終了時に等尺性膝屈曲伸展筋力、10m歩行速度、Timed Up and Go test(TUG)を測定した。さらに、三次元動作解析システムを使用して歩行分析を行い、歩容を客観的に評価した。HAL装着による歩行練習は1日1時間、週2回行った。両症例とも練習時は装着具合を確認しながら、アシストレベルを調整し、パソコン場面から足圧中心(COG)をフィーバックさせた。HALに慣れるまでは理学療法士による介助や転倒防止のために見守りを行った。HALを使用した事による満足度をVisual analog scale (VAS)で評価した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は鹿児島大学医学部歯学部付属病院倫理委員会の承認を得て行った。対象者には事前に本研究の説明を十分行い同意を得た。【結果】 症例1は、HAL使用後2週頃より、端座位保持が可能になり、3週頃より平行棒内で立位保持が可能になった。2ヶ月後には平行棒内での立ち上がりが自立し、監視レベルで平行棒内歩行が可能となった。症例2は膝伸展筋力の向上を認めた。歩行解析において、右下肢の床反力前方成分の増加、立脚後期における股関節伸展可動域の増加が観察されたが、歩行速度、TUGにはHAL前後で向上は見られなかった。関節モーメントや関節角度に関しても著明な改善は認めなかった。今回の2症例ともにHAL使用による歩行練習に対する満足度は高かく、理学療法終了時のVASは7~8/10であった。【考察】 今回、脊椎術後の回復期と症状の回復が安定した慢性期の対麻痺患にHALを用いて短期間の理学療法を行った。その結果、回復期の症例においては立位・歩行能力が向上した。この要因として、可逆的な筋力の回復に合わせてHALによる適切な筋活動のアシストができたこと、COGの位置を視覚よりフィードバックすることにより自分の足部への体重移動などが確認できたこと、HALを装着することにより歩行練習に対する意欲向上が得られたことなどが考えられる。その反面、慢性期の患者では、HAL装着歩行練習により筋力の向上は認められたが、歩容改善効果は認められなかった。本症例はCOGや関節角度をリアルタイムで視覚によりフィードバックすることにより「自分の体重のかけ方がイメージできるようになった、歩きやすくなったように感じる」という感想はあったが、日常生活でうまく残存機能に適応し、自分の中で効率的な歩容を身につけており短期間のHAL使用では、著明な歩容改善は認めなかったと考えられる。しかしながら、今後長期的なHAL使用による歩行練習により歩容改善効果も期待できるかもしれない。【理学療法学研究としての意義】 今後HALを理学療法のツールとして、その適応、効果、使用時期などについて検討することは、理学療法の発展に寄与し意義がある。今後さらに多くの症例にHALを用いて、その効果や適応について検討していきたい。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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