理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
脳深部刺激療法介入によるパーキンソン病患者の健康関連QOLの変化
─事前測定,事後測定,回顧的測定での比較─
山田 規央小林 量作近藤 隆春増田 浩村上 博淳白水 洋史亀山 茂樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Bb1415

詳細
抄録
【はじめに、目的】 パーキンソン病(PD)患者に対する脳深部刺激療法(DBS)の効果判定に健康関連QOLが用いられるが,これまで介入前の事前測定と介入後の事後測定の変化でのみ評価されている.一方,近年になって健康関連QOLは事後測定の際に介入前の状態を振り返って評価する回顧的測定が注目されており,事後測定と患者の内的基準を共有するため,その差は治療や時間経過の影響を考慮した変化量となる(Schwartzら,2010).本研究の目的は,DBS介入によるPD患者の健康関連QOLの変化を,“事後-事前”型と“事後-回顧”型の2種の比較から分析することである.【方法】 研究対象は(2010年7月から2011年8月)約3カ月間の縦断的評価を実施したPD患者で,西新潟中央病院でDBSを受けたDBS群12名(男8・女4,年齢56.5±10.9歳,罹病期間8.8±3.4年)と通院治療を継続する非DBS群24名(男14・女10,年齢72.3±7.6歳,罹病期間10.8±8.4年)である.改訂版長谷川式簡易認知機能スケール(HDS-R)で20点以下,アンケートに回答困難な症例は除外した.客観的指標としてHoehn-Yahrの重症度分類(on時,off時),Lド―パ服薬量を評価した.健康関連QOLはPDの疾患特異的尺度であるPDQ-39日本語版を用い,患者の自記式回答で評価した.PDQ-39は8領域39項目で構成され,総得点は156点で高値ほどQOLが低い.DBS群は介入前および介入後3ヶ月,非DBS群は初回および3ヶ月経過時点で各評価を実施し,PDQ-39については回顧的測定も行なった.なお,統計学的検定はPASW statistics 18を使用し,有意水準は5%未満とし,Wilcoxonの符号付き順位和検定,Mann-WhitneyのU検定,Friedmanの順位検定(分散分析)を行なった.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は新潟医療福祉大学および西新潟中央病院の倫理委員会において承認を得,全員に文章による説明を行ない,書面による同意を得た.【結果】 ベースラインの比較では,DBS群は非DBS群に比し有意に年齢が低く(p=0.000),on時重症度が軽く(p=0.014),Lド―パ服薬量が多かった(p=0.025).off時重症度,PDQ-39では有意差は認めなかった.客観的指標の前後比較ではDBS群で重症度がon時(p=0.008)とoff時(P=0.010)共に有意に改善し,Lド―パ服薬量の有意な減量を認めた(p=0.008)が,非DBS群では有意差は認めなかった.各群のPDQ-39結果を事前-事後-回顧で分散分析を行ない,DBS群では総得点はそれぞれ47.3±19.6,30.1±16.9,68.3±30.8で有意差(p=0.009)を認め,領域別では運動機能(p=0.014),日常生活活動(p=0.010),スティグマ(p=0.045),身体的不具合(p=0.046)で有意差を認めた.非DBS群では運動機能領域(P=0.001)にのみ有意差を認めた.各群の“事後-事前”,“事後-回顧”の比較では,DBS群は“事後-事前”で運動機能領域(p=0.032)のみ有意な改善を認めたが,“事後-回顧”では総得点(p=0.002)に加え,運動機能(p=0.006),日常生活活動(p=0.004),スティグマ(p=0.025),身体的不具合(p=0.032)の4領域に有意な改善を認めた.非DBS群は“事後-事前”(p=0.021),“事後-回顧”(p=0.000)の両者で運動機能領域のみ有意な低下を認めた.各項目の変化量は“事後-事前”型より“事後-回顧”型の方が多い傾向となった.【考察】 客観的指標の変化でDBS群は有意に軽症化,Lド―パ剤を減薬できたことは,DBSの期待される臨床効果を支持している(横地,2008).PDQ-39の総得点で,DBS群の“事後-回顧”でのみ有意に改善したことは,回顧的測定値が事前測定値より低下したことで,結果的に“事後-事前”より改善幅を大きく見積もったことになる.つまり事後での術前QOLに対する内的基準は事前測定時よりも下がり,「術前はもっと重症であった」と低く回顧したことで改善幅が拡大されたと考える.PDQ-39の領域別で,DBS群の運動機能のみ“事後-事前”と“事後-回顧”で,日常生活活動,スティグマ,身体的不具合は“事後-回顧”で有意に改善したことは,客観的指標の改善に伴う変化であり,疾患特性と関係深い領域の反応と考える.【理学療法学研究としての意義】 健康関連QOLの変化を“事後-回顧”でも測ることは,患者の内的基準の変化を反映した状態を測定できる可能性がある.
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top