理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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脳卒中片麻痺患者における側臥位での骨盤回旋力の検討
三木 啓嗣新田 收今井 智也國枝 洋太
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p. Bb1416

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抄録
【はじめに、目的】 脳卒中片麻痺患者において寝返り動作は,起居動作能力向上や早期離床,ADL向上に重要で,FIMや歩行機能等との相関関係も報告されており,早期獲得が重要である.寝返り動作可否要因は,諸家により様々な報告がされているが一定の見解は得られていない.また,臨床において四肢機能が良好でも体幹機能低下により寝返りが困難な症例や,逆に四肢機能が低下していても体幹機能が良好で寝返りが可能な症例を経験する.さらに,我々が行った先行研究において,片麻痺患者の寝返り動作をデジタルビデオカメラにて分析した結果,骨盤回旋力が動作可否に影響していることが示唆された.そこで今回,骨盤回旋力に着目した.先行研究では脳卒中片麻痺患者における左右の体幹機能や体幹回旋力には有意差がないと報告されており,その理由として測定肢位(座位)や両側性支配の影響が挙げられている.しかし,片麻痺患者の寝返り動作では麻痺側より非麻痺側への寝返りに困難さを認める症例が多く,体幹筋力や骨盤回旋力の左右差が存在するのではないかと考えた.本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者において麻痺側・非麻痺側の骨盤回旋力を比較検討することとした.【方法】 対象は脳卒中片麻痺患者5名(年齢66.0±12.6(平均±標準偏差)歳,性別;男性4名・女性1名,罹患期間63.0±98.9日,下肢BRS;II 1名・III 2名・V 3名)とした.取りこみ基準は,意識レベルがJCS0~1桁で,課題の理解が可能な者とした.骨盤回旋力の測定は,Hand Held Dynamometer(HHD)アニマ社製等尺性筋力計μTas F-1を用い,側臥位にて被験者の上側骨盤(上前腸骨棘)に検者が被験者の背部からセンサーパッドを固定し,背臥位に戻す方向への検者の抵抗に抗して被験者に姿勢を保つよう骨盤回旋運動を行わせた.なお,両上肢は胸の前で組み,両下肢は股関節45°・膝関節90°屈曲位とし両下肢の間にクッションを挟み,測定中は上部体幹や下肢を動かさないよう指示した.測定前に十分なオリエンテーションと数回の練習を行い,代償動作の無い正しい運動方向の理解が得られた後,5秒間の最大等尺性収縮を3回行った.5秒間の最大値を最大筋力値とし,3回の平均値を測定値とした.また,麻痺側・非麻痺側の測定順は無作為に行い,測定間の休息は30秒間とし,検者1名で行った. なお,本研究にあたり骨盤回旋力測定の信頼性を検討した.対象は健常成人8名(男性4名,女性4名,年齢25±4.2歳,身長164.0±10.3cm,体重53.9±7.9kg)とし,実験方法は上記に準じて行った.測定は検者1名で数日の間隔をあけて2回行った. 統計学的検討にはSPSS 17を用い,麻痺側・非麻痺側の骨盤回旋力の検討には対応のあるサンプルとしてWilcoxonの符号付き順位和検定を行った.なお,有意水準は5%とした.また,信頼性の検討には検者内信頼性を級内相関係数(ICC)にて検討し,ICC(1,1)を算出した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に沿って行い,対象者には口頭にて事前に研究内容を十分に説明し,同意を得た.なお,得られたデータは匿名化し個人情報が特定できないよう配慮した.【結果】 骨盤回旋力測定におけるICC(1,1)は0.80であった.また,脳卒中片麻痺患者における平均値は,麻痺側72.4±13.1N,非麻痺側77.3±10.9Nであり,非麻痺側において有意に高値を示した(p<0.05).【考察】 健常成人におけるHHDを用いた側臥位での骨盤回旋力の測定は高い信頼性を示した.また,脳卒中片麻痺患者における骨盤回旋力は,非麻痺側で有意に高い結果となった.つまり,麻痺側体幹機能,特に骨盤回旋能力低下が明らかとなり,寝返り動作時に体幹回旋筋群を用いた麻痺側骨盤回旋運動が十分行えていないことが考えられ,非麻痺側への寝返り動作の困難さに影響していると考えられる.今後は症例数を増やすとともに,寝返り動作や基本動作,歩行能力との関係も含めて検討していく必要があると考える.【理学療法学研究としての意義】 本研究で用いた骨盤回旋力の測定方法は,臨床上簡便に用いられるHHDを使用し,抗重力姿勢がとれなくても発症早期から安全に測定可能な側臥位姿勢であり,多くの患者に適用可能である.加えて,四肢の影響を受けにくく,信頼性の高い方法で定量的に骨盤回旋力を測定できることを明らかにしたことに意義があると考える.また,片麻痺患者で骨盤回旋力の左右差を認めたことは,基本動作能力低下の一つの要因として体幹機能低下が示唆され,体幹機能や骨盤回旋力に対する理学療法評価・治療の重要性が再確認されたと考える.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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