理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
脳卒中片麻痺患者における膝伸展筋力対称性とバランス能力およびADLとの関連性
鈴木 昌幸吉川 義之藤原 正盛吉川 絵美梶田 博之夏目 重厚
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キーワード: 脳卒中, 膝伸展筋力, 評価
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p. Be0013

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抄録
【はじめに、目的】 脳卒中片麻痺患者は中枢神経系の障害による運動麻痺があるが,筋力を測定することは重要とされている.また,脳卒中治療ガイドライン2009では麻痺側下肢の筋力トレーニングは下肢筋力を増加させ,身体機能を改善させると推奨されている.筋力測定は,徒手筋力検査やHand-held Dynamometerでの筋力測定に代表されるように,基準値 と比べる評価が多く,その個人内の対称性に関する研究は少ない.先行研究においても,脳卒中片麻痺患者における麻痺側膝伸展筋力,非麻痺側膝伸展筋力とバランス能力や立ち上がり動作,歩行動作などの日常生活動作(Activity of Daily Living:ADL)との関連については多く報告されている.しかし,その対称性とバランス能力,ADLとの関連については散見される程度である.そこで,本研究は脳卒中片麻痺患者における膝伸展筋力対称性とバランス能力およびADLとの関連性を検討した.【方法】 対象は,当院入院の脳卒中患者のうち分離運動が可能な下肢Brunnstrom Recovery stage(BRS)5以上かつ歩行が可能な者で,研究参加に同意が得られた20名(平均年齢72.4±13.2歳,男性13名,女性7名,BRS5:8名,BRS6:12名)とした.除外基準としては, Mini-Mental State Examination(MMSE)21点以下の者,関節可動域制限が著明な者,重度の運動失調,高次脳機能障害を有する者とした.測定項目は,麻痺側膝伸展筋力,非麻痺側膝伸展筋力,膝伸展筋力対称性,Berg Balance Scale(BBS),Timed “Up & Go” Test(TUG),Functional Independence Measure の運動項目(M-FIM)とした.膝伸展筋力は,徒手筋力測定器(ANIMA社製μTasF-1)を使用し,端座位下腿下垂位で行った.測定は2回実施し, 最大トルク値を体重で除した値(Nm/kg)を代表値として用いた .膝伸展筋力対称性については,麻痺側膝伸展筋力を非麻痺側膝伸展筋力で除した値(%)を用いた.統計学的検討については,各膝伸展筋力,膝伸展筋力対称性とBBS,TUG,M-FIMとの相関をspearmanの順位相関係数を用いて検討した.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は,事前に書面と口頭にて研究目的・方法を説明し,同意を得た者を対象者とした.また本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的配慮を十分に行った.【結果】 膝伸展筋力対称性と有意な相関関係がみられた項目は,BBS(ρ=0.63),TUG(ρ=-0.67),M-FIM(ρ=0.75)であった.麻痺側膝伸展筋力と有意な相関関係がみられた項目は,BBS(ρ=0.58) ,TUG(ρ=-0.53),M-FIM(ρ=0.58)であった. 非麻痺側膝伸展筋力 はどの項目とも有意な相関がみられなかった.【考察】 本研究の結果から,脳卒中片麻痺患者における麻痺側膝伸展筋力および膝伸展筋力対称性と,バランス能力およびADLとの間に相関関係が認められた.麻痺側下肢筋力とバランス能力およびADLの相関関係については諸家によって報告されており,本研究でもその関係性を支持する結果となった.先行研究と本研究結果から,麻痺側下肢筋力の増加により身体機能の改善が期待されるため,麻痺側下肢筋力を測定することは重要である。また,麻痺側膝伸展筋力よりも膝伸展筋力対称性のほうが,相関係数はすべてにおいて高く,麻痺側だけでなく対称性に着目し評価することは有用であると示唆された.本研究の限界としては,症例数が少なく限定的な結果であること,横断研究であり下肢筋力対称性が真に必要であるかは判断できないことである.今後の展開としては,縦断的に下肢筋力を測定し,脳卒中片麻痺患者における膝伸展筋力対称性とバランス能力およびADLとの因果関係を検討していきたい.【理学療法学研究としての意義】 脳卒中片麻痺患者における麻痺側下肢筋力トレーニングは重要であるが,身長,体重,年齢,性別などによってその個人が必要な筋力は様々であり,さらに脳卒中という病態からその必要な筋力はより複雑になる.しかし,その個人内の下肢筋力対称性という指標は臨床的に簡易に評価でき,脳卒中片麻痺患者における筋力トレーニングの際には,目標値設定の一助となることが考えられる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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