理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
下肢装具の有無がBerg Balance Scaleの結果に及ぼす影響について
─脳卒中片麻痺患者での検討─
森 菜央上倉 洋人川﨑 仁史
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p. Be0014

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抄録
【目的】 Berg Balance Scale(以下BBS)は臨床場面において簡便で信頼性の高いバランス指標としてよく利用され、日常生活活動や転倒リスク・移動能力との相関が高く、脳卒中片麻痺者においてもその有用性を認める報告がなされてきている。しかし、本来BBSの測定には補助器具を使用しないことが前提であるが、脳卒中片麻痺者における過去の報告では下肢装具の装着を許可している。今回、脳卒中片麻痺者において、下肢装具の有無がBBSの結果に及ぼす影響について検討したので報告する。【方法】 当法人の医療保険及び介護保険サービスを利用し、理学療法を実施している45名(男性32名、女性13名)を対象にBBSを実施した。対象者の平均年齢は65.9±9.6歳であり、発症からの期間は、1ヶ月~17年であった。麻痺側は、右21名、左24名であった。下肢の麻痺の程度は、Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)にてII:6名、III:25名、IV:11名、V:3名であり、歩行能力は、Functional Independence Measure(以下FIM)にて自立(FIM6)23名、非自立(FIM5以下)22名(監視(FIM5)15名、介助(FIM4~1)7名)であった。BBS施行に支障をきたすような著しい高次脳機能障害や骨関節疾患を有している者、歩行において日常的に下肢装具を使用していない者、病巣が両側半球に認められる者は除外した。BBSは、座位保持検査を除く全項目について、下肢装具の有無別に測定を行った。使用する下肢装具は日常的に使用しているものとした。使用する椅子の高さは40~45cmとし、足のせ台の高さは20cmとした。対象者を「対象者全体」、「麻痺重度群(BRS-III以下)」、「麻痺軽度群(BRS-IV以上)」、「歩行自立群(FIM6)」、「歩行非自立群(FIM5以下)」の5群に分け、各群における装具の有無別のBBSの合計得点をWilcoxonの符号付順位和検定にて分析した。有意水準はp<0.01とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には、本研究及び報告の趣旨について口頭及び文書にて説明し、署名にて同意を得た。【結果】 BBSの合計得点の平均値は、「対象者全体(装具有り)」で37.5±12.3、「対象者全体(装具なし)」で35.3±12.8、「麻痺重度群(装具有り)」で33.5±12.6、「麻痺重度群(装具なし)」で31.1±13.0、「麻痺軽度群(装具有り)」で46.3±5.4、「麻痺軽度群(装具なし)」で44.6±5.5、「歩行自立群(装具有り)」で45.3±4.2、「歩行自立群(装具なし)」で43.3±4.4、「歩行非自立群(装具有り)」で29.3±12.7、「歩行非自立群(装具なし)」で27.0±13.4であり、装具を使用した方の得点が高い傾向がみられた。群分けを行った5つの群全てにおいて、装具の有無によりBBSの合計得点の間に有意差が認められた。【考察】 バランス機能とは「安定した姿勢を維持する機能」と「不安定な姿勢を修復する機能」から成るといわれており、歩行運動にはこの両者が必要であることから、歩行運動はバランス機能を構成する一要素であると考えられる。脳卒中片麻痺者の下肢装具は主として歩行運動における部分的代償を目的として使用されているが、BBSの合計得点がその有無によって異なっていたことから、下肢装具は歩行以外のバランス機能にも影響を与えることが確認された。また、BBSの合計得点が装具による下肢機能の部分的代償によって向上する傾向が見られたことから、装具を用いて下肢機能を代償することにより、日常生活活動における脳卒中片麻痺者の転倒リスクを軽減できる可能性が示唆された。日常生活において、下肢装具を使用する場面と使用しない場面の両方が存在する症例では、装具の有無により、場面に応じて「バランス機能の評価」と「転倒リスクの検討」を行うことが必要であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 脳卒中片麻痺者とその家族、さらには理学療法士であっても装具の使用に対して否定的である者が少なくない。しかし、本研究の結果は、麻痺や歩行障害の程度に関わらず、下肢装具を適切に選択・使用することにより、日常生活上の転倒リスクを減少させることができる可能性を示唆している。装具療法の有効性を示すデータとして、今後の理学療法を再考するための一助となるのではないだろうか。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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