理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
他動的伸展運動療法による腰椎アライメント変化の検討
種田 智成吉村 孝之尾崎 康二曽田 直樹石神 誠大西 量一郎宮本 敬
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p. Ca0267

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抄録
【はじめに、目的】 臨床上腰痛を訴える症例を経験する機会は多い。McKenzieらは腰痛症例に対する治療の基本は生理的前彎位を獲得することが重要であるとする理論に基づき、腰椎の他動的伸展運動療法を推奨している。今回我々は、他動的伸展運動療法後の腰椎アライメントの変化について、X線学的及び理学所見の検討を行い、その効果を検証した。【方法】 1)対象腰部に既往歴の無い健常成人男性11名(平均年齢27.5±4.5歳、平均身長168.8±4.1cm、平均体重66.0±11.3kg)を対象とした。2)運動療法他動的伸展運動療法は、鈴木らの先行研究に準じ実施した。開始肢位は、ギャッジ・ベッド上に腹臥位とし、その際にギャッジの軸上にJacoby-lineが位置するようにし,骨盤をベルトにて固定した。5~10分かけてギャッジを用いて徐々に上半身を挙上することで体幹を伸展位へ誘導した。体幹伸展角度は、疼痛や違和感の無い範囲での最大とした。最大伸展位に到達後、10分間保持し、2~3分かけてゆっくりと10度頭位挙上位まで戻し、他動的伸展運動療法を終了した。3)検討項目対象者には運動療法前後に立位正面像および側面像のX線撮影、体幹及び股関節の伸展可動域の測定を行った。X線学的検討では、横河医療ソリューションズ社製DICOM画像ViewRを用いて、同一検者が腰椎前彎角、仙骨傾斜角を計測した。運動療法前後の腰椎前彎角、仙骨傾斜角、体幹及び股関節の伸展可動域に関して、対応のあるT検定を用い、比較検討した。統計解析には、SPSS17.0を用い、有意水準を5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究概要の説明を文章及び口頭にて行い、参加の同意を得た。なお、本研究は、平野総合病院倫理委員会の承認を受けている。(承認番号110901-4)【結果】 結果は、運動療法前/後で表記する。腰椎前彎角26.1±6.9°/28.8±4.5°(p=0.041)、仙骨傾斜角31.3±4.5°/33.0±5.9°(p=0.111)、体幹伸展可動域46.4±12.5°/53.6±15.5°(p=0.027)、右股関節伸展可動域23.2±5.6°/23.6±3.2°(p=0.756)、左股関節伸展24.1±4.4°/26.4±9.0°(p=0.492)であった。運動療法前後で、腰椎前彎角と体幹伸展可動域は有意に増加した。また、仙骨傾斜角、股関節伸展可動域は有意な変化を示さなかった。【考察】 腰椎前彎の消失は腰痛患者に多いことが指摘されている(宝亀ら)が,長時間座位姿勢の保持により出現する(Nachemsonら),椎間関節性腰痛の疼痛回避肢位(辻ら)等の指摘から,可逆的なものであることも示唆されており,理学療法アプローチにて対応できる可能性のある病態である.健常人男性を対象とした本研究において,他動的伸展運動療法によって、腰椎前彎角、体幹伸展可動域が増大することが明らかとなった。本療法が、腰椎の後彎化に伴う腰痛患者において,生理的前彎を獲得するために有効な運動療法の一手段となりうる可能性が示唆された。ただし,仙骨傾斜角には変化がみられず,腰椎前彎の消失により二次性にハムストリングスのタイトネスによる骨盤後傾がみられる(山本,宿南ら)ことを考慮すると,有症状例に対しては,ハムストリングスに対するストレッチ等を併用して骨盤後傾を解消することも併用されるべきであろうと考えられた.また,腰椎前彎が消失する病態は椎間板変性,圧迫骨折なども加えると多彩であり,本療法の適応についても厳密に評価されるべきであるが,このような治療前後のX線評価が効果判定に有効であることも示唆された.【理学療法学研究としての意義】 ・他動的伸展運動療法前後の腰部X線像を健常男性において比較検討した。・運動療法後に腰椎前彎角と体幹伸展角は有意に増加した。・腰椎生理的前彎を獲得する方法として他動的伸展運動療法は有効な手段となりうる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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