理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
人工股関節置換術後早期における歩行時の中殿筋の筋活動量は運動機能と関連する
吉岡 佑二南角 学柿木 良介
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p. Ca0913

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抄録
【はじめに、目的】 人工股関節置換術(以下,THA)術後のリハビリテーションにおいては,股関節機能の改善とそれに伴う歩行能力の向上を図ることが重要である.THA術後早期の歩行能力の低下に関わる因子として股関節外転筋力,膝関節伸展筋力の低下が挙げられている.一方,歩行時の中殿筋は前額面上で骨盤を水平に保持する役割を担っており,筋力評価で行われる股関節外転運動時の筋力発揮とは筋活動様式や関節運動が異なる.このためTHA術後早期の歩行能力などの運動機能の改善を図るためのより有効なトレーニングを立案していくには,下肢筋力と歩行能力の関連性を検討するだけでは不十分であり,下肢筋力や歩行能力と動作中の筋活動量との関連性を検討することが必要であると考えられる.しかし,先行研究において,これらの関連性を検討した報告は見当たらない.そこで本研究の目的は,THA術後早期における下肢筋力および歩行能力などの運動機能は動作中の筋活動量と関連するかどうかを検討することとした.【方法】 対象は初回THAを施行され術後3週が経過した27名(男性7名,女性20名,年齢58.5±10.9歳,BMI21.9±3.0kg/m2)とした.全症例において,手術方法は前外側アプローチ法で術後より荷重制限はなく,同様のプロトコールにて理学療法を実施した.また,歩行や各動作時には特に痛みを訴える者はいなかった.歩行時の筋活動の測定には表面筋電図計Data LINK(Biometric社製)と電気角度計を使用した.測定筋は術側の中殿筋(以下,Gm),大腿直筋(以下,RF)とし,一歩行周期の筋活動を二乗平均平方根により平滑化した.その後,各筋の最大等尺性収縮(以下,MVC)時の筋活動を100%として各測定値を正規化し,%MVCを算出した.歩行路は平坦な屋内平地路とし,自由速度で杖を使用しない歩行とした.また,歩行能力の指標として最大10m歩行時間を計測した.14mの平坦な屋内歩行路を,杖を使用しない最大努力で歩行し,前後2mを除いた10mの所要時間をストップウォッチにて計測した.下肢筋力として股関節外転と膝関節伸展の最大等尺性筋力を計測した.股関節外転筋力はHand-Held Dynamometer(日本MEDIX社製),膝関節伸展筋力はIsoforceGT-330(OG技研社製)を用いて測定し,筋力値はトルク体重比(Nm/kg)として算出した.統計学的分析は,各測定項目の関連性の検討にはPearsonとSpearmanの相関係数を用いた.統計学的有意基準はすべて5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき,各対象者には本研究の趣旨ならびに目的を詳細に説明し,参加の同意を得た.【結果】 歩行時の各筋の筋活動量は,Gmが平均51.0±24.5%,RFが平均32.4±19.4%であった.また最大10m歩行速度は平均7.77±1.92秒,下肢筋力は股関節外転筋力が平均0.61±0.21Nm/kg,膝関節伸展筋力が平均1.21±0.33Nm/kgであった.歩行時のGmの筋活動量は股関節外転筋力および最大10m歩行時間との間に中等度の相関を認め,相関係数はそれぞれr=-0.46(p<0.05), r=0.60(p<0.01)であった.また,股関節外転筋力と最大10m歩行時間の間に強度の相関が認められた(r=-0.72,p<0.01).歩行時のRFの筋活動量は膝関節伸展筋力との間に軽度の相関を認めた(r=-0.39,p<0.05).最大10m歩行時間は膝関節伸展筋力(r=-0.23,p=0.26)および歩行時のRFの筋活動量(r=-0.09,p=0.66)とは有意な相関を認めなかった.【考察】 本研究の結果では,THA術後早期における歩行時のGmの筋活動量は,健常人を対象とした先行研究よりも高い値を示した.さらに,THA術後早期における歩行時のGmの筋活動量が高い症例ほど股関節外転筋力の低下を認め,歩行能力が低いということが明らかとなった.以上のことから,THA術後早期における歩行能力などの運動機能の向上には,股関節外転筋力の強化を図るとともに,得られた筋力を動作中や荷重位で適切かつ効率的に活動させることが必要であると示唆された. 【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果はTHA術後早期の運動機能向上のための有効なトレーニング方法の立案の一助となることを示唆しており,理学療法研究として意義あるものと考えられた.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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