理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
当事業所における短時間通所リハビリテーションの効果
─利用開始時と1年後における比較─
法山 徹西野 康子辻 寿彦松村 朋枝橋本 恵上野 弘樹後藤 伸介
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p. Cb0758

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抄録
【はじめに、目的】 近年,通所リハビリテーションにおける介護予防効果が検証され,身体機能の改善や行動変容を含めた生活機能の変化等の報告が散見されている.しかし,その主たるものは長時間利用を対象とした報告であり,短時間(1~2時間)利用についての報告は殆どみられない.そこで,本研究では当事業所における短時間通所リハビリテーション(以下短時間通所リハ)利用者の介護予防効果を後方視的に検証することを目的とした.【方法】 対象は,当事業所を利用している64名のうち,要介護度が3以上の者,2ヶ月以上の入院加療を要した者を除外し,利用期間が1年以上であった38例とした.利用者の内訳は,男性13名,女性25名であり,介護度は要支援1が17名,要支援2が8名,要介護1が10名,要介護2が3名,平均年齢は78.0±7.8歳であった.1回あたりの利用時間は全て1時間半とし,週あたりの利用頻度については,基本的に要支援1は1回,要支援2~要介護2は週2回としている.サービス内容については,利用者が主体的に取り組むことを目的に自主メニュー活動表を作成し,これを基に運動療法に特化したプログラムを行っている.基本的な運動種目は,レッグプレスマシン,エルゴメーター,ストレッチ,ボールを用いたバランス練習等である.また,必要に応じて理学療法士が個別にて徒手的な介入及び指導を行っている.評価は,身体機能面については10m最大歩行時間,Timed up and go test(以下TUG),30seconds Chair stand test(以下CS-30)とし,前者2つは2回測定した最小値を採用し,後者は疲労の影響を考慮し1回のみ測定した値を用いた.歩行補助具の使用については普段使用しているものを許可し,初回と1年後は統一した.生活機能評価については,自己記入式とし,家庭での役割,外出頻度,疼痛,転倒歴,転倒不安度,自覚的な下肢筋力低下,運動習慣を5件法にて評価した.その内訳は,家庭での役割は最大を毎日ある,最小を殆ど無いとした.外出頻度と運動習慣は最大をほぼ毎日している,最小を殆どしないとした.生活の充実感は最大をとても充実している,最小を充実していないとし,疼痛は最大を強い痛みがある,最小を痛み無しとし,転倒歴は最大を過去6ヶ月間無い,最小を3回以上あるとした.転倒不安度と自覚的な下肢の筋力低下は最大を無し,最小をかなりありとした.統計処理は,Excel統計2006を用いて身体機能は対応のあるt-検定を,生活機能はWilcoxonの符号順位和検定を其々利用開始時と介入1年後において比較した.なお,有意水準はいずれも5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 利用者には,本研究の趣旨を説明し書面にて同意を得て行った.【結果】 10m最大歩行時間(sec)は,利用開始時14.7±8.5から1年後11.7±4.6であり,TUG(sec)は15.6±6.7から12.6±5.1であり,CS-30は8.7±3.6から11.5±4.1であり,其々有意な改善がみられた(p<0.01).5件法における生活機能面では,家庭での役割は3.7±1.6から4.5±1.1であり,外出頻度は3.4±1.2から3.9±0.9であり,自覚的な下肢筋力低下は2.5±1.2から3.0±1.2であり,其々有意な改善がみられた(p<0.01 ,p<0.01,p<0.05).疼痛,転倒歴,転倒不安度,運動習慣については,有意な改善はみられなかった.【考察】 短時間通所リハ利用者において,介入期間前後での身体機能及び生活機能に有意な改善がみられており,従来の長時間利用の報告と同様の結果が得られ,運動療法を主体として行った短時間利用の有効性が示唆された.疼痛や転倒不安度については,有意な改善はみられなかったが,これは心理的及び環境的要因による影響が含まれているためと考えた.短時間通所リハは,利用者の1日の生活時間を制限し難く,在宅での活動を支障なく行うことが可能である.また,利用者自身が明確な目的を持って利用できる為,活動性や社会性が比較的高い軽度要介護者に有用であると考えられる.本研究では,短時間通所リハを通して在宅生活に行動変容をもたらしたことが,身体機能と生活機能の双方を改善させたものと考えた.今後,利用者一人一人のニーズに合わせたより個別性の高いプログラムを立案した上で効果検証を行っていくことが重要と考えた.【理学療法学研究としての意義】 本研究により短時間通所リハの効果が示唆されたことは,利用者へのサービス提供を推進するための根拠のひとつとなると考えた.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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