抄録
【はじめに、目的】 大腿骨頸部骨折治療は、早期に手術し早期リハを行うことで在宅復帰につながることが示されている。また、地域連携パスの導入で早期より回復期病院に移行することで在宅復帰率の向上につながる。当院でも現在、大腿骨頸部骨折患者に対し地域連携パスを導入している。しかし、臨床において、実際には大腿骨頸部骨折患者の入院期間が長く、パス使用例が少ない印象を受ける。これは、パス連携病院が3施設と少ない事、また当院所在地である大田原市の65歳以上の人口の割合は19.7%と、県内主要部である宇都宮の16.8%に比べわずかだが高齢化率が高いことも関連しているのではないかと考えた。そこで今回、当院の過去3年間における大腿骨頸部骨折患者の年齢、転帰、在院日数、介入日数を調査した。【方法】 2008年4月1日から2011年3月31日までに当院において、大腿骨頸部骨折と診断され、入院した症例を対象とした。全体より平均年齢、パス使用の有無を転帰別に分け、各群の平均年齢、割合、平均在院日数、平均介入日数を調べた。群分けは、パス使用群として当院と連携している3病院、非パス使用群としては、(1)パス非使用の回復期病院、(2)療養型または施設、(3)自宅退院の3つの群に分類し、パス使用率・パス使用の有無による転帰への影響を検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 当院倫理委員会の承認を得ている。【結果】 3年間における頸部骨折患者は238症例。内、死亡例が6例であり死亡例を除いた232症例を対象とした。全症例の平均年齢は82.62±10.31歳、平均在院日数は37.36±41.55日、平均介入日数が24.94±26.93日であった。内訳は、パス使用群61名(26%),年齢83.6±8.35歳、パス非使用群回復期52名(22%),年齢83.6±11.3歳、療養・施設62名(26%),年齢82.7±9.76歳、自宅57名(24%),年齢80.9±11.8歳となった。平均在院日数,平均介入日数は、パス使用群30.50±15.85日,22.06±15.45日、非パス群(1)回復期39.61±44.19日,29.11±44.38日、(2)療養・施設40.87±49.78日,24.90±24.74日、(3)自宅39.86±48.79日,25.43±16.49日であった。パス使用群が他の3群に比べ在院日数が短縮している傾向があったが、介入日数や年齢においてはパス使用の有無による差違はみられなかった。【考察】 地域連携パスの導入後3年間の、大腿骨頸部骨折患者を対象に在院日数とパス運用状況を調査した。頸部骨折患者の在院日数は、平均37.36±41.55日であった。日本整形外科学会骨粗鬆症委員会がまとめた「老人骨折の発生・治療・予後に関する全国調査」によると、大腿骨近位部骨折の平均在院日数は2004年発生例で48.1日である。当院の在院日数は全国平均と比較し長期化していなかった。しかし、パス使用率については、他施設の報告では50~60%と高率な所もあるのに対し、当院は全体の26%と低値である。これは、当院の後方病院が3施設と少ない事、また後方病院が遠方である事や、待機期間が長い事、家族が転院を希望しない事などの問題が考えられる。パス使用群が非使用群に比べ在院日数が、わずかに短縮化の傾向があることから、地域連携パスの使用は有用と思われる。また、地方や都市部の病院では連携病院の数に違いがあり、当院では後方病院3施設と少なく,平均年齢が80代と高く,合併症も複数あるなどパス適応外となる症例も少なくない。こうした中で、当院は従来のパスの運用形態を継続するべきか、他の方法を構築していくべきかを考えていかなくてはならない。今後の課題として、パスの運用方法の統一や地域性も考慮したパス作成・導入についても再考が必要と考えられる。そのためには医療スタッフ、地域連携室との情報共有が必要であると感じた。【理学療法士学研究としての意義】 今回の調査により、大腿骨頸部骨折患者の在院日数や、転帰・パス運用状況を他施設の報告と比較し課題を見出した。これらの問題・課題を検討していくことは、患者の適切なニーズを引き出し、よりよいサービス・切れ目ないリハビリテーションを提供する上で、理学療法士としても重要であると思われる。