理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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変形性膝関節症患者におけるバランス能力と機能的因子の検討
神成 透山中 正紀小林 巧堀内 秀人松井 直人角瀬 邦晃野陳 佳織大川 麻衣子
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p. Cb1137

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抄録
【はじめに、目的】 我が国は平均寿命の増加とともに高齢化率は上昇し、近年中には4人に1人が高齢者になることが予想されている。変形性膝関節症は高齢者において最も多い骨関節疾患の一つであり、理学療法の対象となる疾患である。その際には機能的因子として関節可動域(ROM)や筋力、疼痛などを評価することが一般的である。また、高齢になると転倒のリスクは増加し、それによって生じる骨折がADL能力やQOLを低下させる。現在、転倒の予測因子として様々なバランススケールが開発されており、臨床でも広く用いられている。近年、運動器不安定症という概念が提唱され、バランス評価が判断基準の一つとなっている。我々は、第46回日本理学療法学術大会にて、変形性膝関節患者においてバランス能力と筋力の関連について報告したが、他のパラメータについては検討していなかった。本研究の目的は、変形性膝関節症患者に対しバランス評価として一般的な片脚立位時間、Functional Reach Test(FRT)およびTimed Up and Go Test(TUG)を測定し、機能的因子であるROMや筋力、疼痛とどのように関連するかを調査することである。【方法】 対象は変形性膝関節症患者23例(女性19例・男性3例)、平均年齢は70.9±8.3歳、平均身長152.8±7.5cm、平均体重60.9±5.7kgであった。除外基準として、反対側の変形性膝関節症以外の整形疾患、平衡機能障害およびバランスに影響のある疾患の既往のある者、またはBMI40以上の者とした。方法はバランス評価として、(1)片脚立位時間:開眼立位で片脚を支持脚に触れないよう挙上させ、足底が離床し再び接地するまでの時間を測定した。(2)FRT:壁側上肢を90°屈曲した肢位を開始肢位とし、前方・水平に上肢をできるだけ移動させ、開始肢位から最大前方移動における第3中手骨遠位端の距離を計測した。(3)TUG:肘掛け椅子の背もたれに背をつけた座位を開始肢位とし、検者の合図により立ち上がり3m先の目印で方向転換し再び着席するまでの時間を計測した。機能的因子の評価として、(4)ROM:自他動における膝屈曲伸展可動域を測定した。(5)筋力:Biodex System 3を用い、角速度60°/secにて膝伸展および屈曲筋力を測定し、peak torque値を算出し各被験者の体重で除した値を使用した。(6)疼痛:立ち座り時、片脚立位時および歩行時の疼痛をVisual Analog Scaleを用いて数値化した。 (1)、(2)、(3)、(5)は3回計測しその平均値を用いた。また、両側性の関節症の場合、疼痛の強い方を患側とした。統計学的分析として、バランス能力と機能的因子の関連性の検討にSpearmanの順位相関係数を実施した。また、測定した全ての機能的因子からバランス能力予測のために重回帰分析を行なった。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には検査実施前に研究についての十分な説明をおこない、研究参加の同意を得た。【結果】 バランス評価と機能的因子の関連性について、片脚立位に関しては自他動の伸展可動域(r=0.52,0.51)および伸展筋力(r=0.53)に、TUGでは患側の他動伸展可動域(r=-0.43)と両側の伸展(患側r=-0.79, 健側r=-0.56)屈曲筋力(患側r=-0.58, 健側r=-0.66)および健側片脚立位時の疼痛(r=-0.44)にそれぞれ有意な相関を認めた。FRTに関してはどの項目についても有意な相関を認めなかった。ステップワイズ法による重回帰分析において、患側片脚立位には同側の膝伸展筋力、TUGにおいては患側の膝伸展筋力が投入され説明効率の高い単回帰式が得られた。FRTは全ての因子が除外され有意な回帰式は得られなかった。【考察】 本研究結果から、変形性膝関節症患者の片脚立位やTUGに関して伸展可動域、伸展筋力との関連性が高く、バランス能力の予測として膝伸展筋力が有用である可能性を示した。したがって、変形性膝関節症の機能的因子として疼痛よりも伸展可動域や伸展筋力がバランス能力に影響を与え、理学療法における重要性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 変形性膝関節症に対しは可動域改善や筋力増強を目的とし理学療法がおこなわれている。これらの機能的因子がどのようにバランス能力と関連しているかは重要なことである。有疾患者を対象としてバランス評価と機能的因子の関連を調査したものは少ない。全身的バランスあるいは姿勢制御では股関節・足関節戦略があり、これらの関節が注目されているが、本研究結果より膝関節疾患においては膝関節周囲の可動域や筋力なども影響を与えている可能性がある。今後は、変形性膝関節症における病期分類や性差、他の機能的因子およびバランススケールにおいてさらなる検討が必要である。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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