理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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整形外科疾患に特化した回復期リハビリテーション病棟における365日リハビリテーションの効果
志村 圭太濱中 康治今井 省吾長崎 稔西山 卓志上内 哲男田中 尚喜
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p. Cb1379

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抄録
【目的】 当院では2007年3月より整形外科疾患のみを対象とした回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟を新設した。これまで日曜を公休として、連休の場合には2日以上休日が続かない体制でリハを提供してきたが、2010年の診療報酬改定を受け2011年4月より祝祭日を含む週7日間365日体制でのリハ提供を開始した。365日リハを実施する効果として在院日数の短縮やADL改善率が高くなるという報告が散見されるが、これらの対象は大多数が中枢神経疾患であり整形外科疾患を対象としたものは少ない。本研究の目的は、整形外科疾患のみを対象とした回復期リハ病棟で365日リハを提供することの効果を明らかにすることである。【方法】 365日リハ実施前の2010年4月1日から9月30日までに当院整形外科一般病棟から回復期リハ病棟へ入棟し同年10月末日までに退院した整形外科疾患患者174例(通常群)と、365日リハ開始後の2011年4月1日から9月30日までに入棟し同年10月末までに退院した151例(365群)を対象とした。なお、入院中に死亡した者、急性増悪により他科へ転科した者は除外した。対象者の年齢、性別、診断名、入棟日、発症(または手術)から入棟までの期間、リハ実施単位数、回復期在棟日数、退院先、入退棟時Barthel Index(以下BI)を後方視的に調査し、自宅退院率、1日あたりのリハ実施単位数、BI利得、BI在棟日数効率を算出した。なお、診断名は標本数の多いものから変形性股関節症(以下股OA)、大腿骨近位部骨折、脊椎圧迫骨折、変形性膝関節症(以下膝OA)、その他の5つに分類した。データーの分析は通常群と365群で群間比較を行い、さらにそれぞれの疾患分類内で同様の比較を行った。統計学的解析にはIBM SPSS Statistics 19.0を使用し、Mann-Whitney U検定とカイ二乗検定を行い有意水準は危険率5%とした。【倫理的配慮】 すべてのデーターは電子カルテより後方視的に抽出しており有害事象は発生しなかった。また、個人情報の流出防止に留意した。【結果】 すべての診断分類を含む2群間の比較(通常群/365群)では、365群において年齢(71.1/74.9歳)が有意に高く、発症から入棟までの期間(12.3/14.9日)が有意に長く、一日あたりのリハ実施単位数(1.9/2.7単位)が有意に多く、入棟時BI(69.3/60.8点)が有意に低かった。診断分類は365群で股OA(28.7/18.5%)が有意に少なく大腿骨近位部骨折(19.5/33.7%)が有意に多かった。性別、自宅退院率、退棟時BI、BI利得、BI在棟日数効率には差がなかった。疾患分類別の比較では、股OAと大腿骨近位部骨折において発症から入棟までの期間とリハ実施単位数、膝OAと脊椎圧迫骨折では実施単位数のみに有意差が認められいずれも365群が高値を示したが、他の項目で差は認められなかった。【考察】 2群を比較した結果、365群の特徴として年齢が有意に高く、発症から入棟までの期間が有意に長く入棟時BIが有意に低い値だった。この理由は、365群では若年の股OA患者が少なく高齢である大腿骨近位部骨折患者が多いことで、全体的に機能的状態が低い患者が増加した結果と考えられる。発症から入棟までの期間が延長したことについては、ベッド数のコントロールや全身状態が安定しなかった症例が多かったことが影響したかもしれない。一方で、365群のリハ実施単位数は有意に多く、在棟日数と退棟時BIは通常群と差がなかった。つまり、365日リハを整形外科疾患へ提供することの効果は、実施単位数の増加に伴うリハの量的増加により、高齢で入棟時の機能的状態が低い者や回復期への入棟が遅い者であっても在棟日数が延長することなくADLが改善することだと考えられる。リハの量的増加はADL改善をもたらす正の因子と考えられており、過去の報告を支持する結果となった。本研究では過去報告されている365日リハ実施による在院日数の短縮やBI在棟日数効率の増加は認められなかった。当院の365群における実施単位数は入院1日あたり平均2.7単位であり、先行研究で報告されている値と比較しても低い。このため当院ではさらにリハ量を増加させる余地があると考えられる。また、在院日数の短縮には家族への早期介入や専従MSW導入などの対策が必要不可欠とされており、チームアプローチや人的資源の整備も今後の課題である。【理学療法研究としての意義】 整形外科疾患に対する365日リハの効果と課題を示すことで、今後の回復期リハ病棟における理学療法の一助になると考えられる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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