理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
喫煙が口腔内圧に及ぼす影響および,日本人の正常値の提唱
高瀬 雅代栗本 俊明田中 雄也宮本 顕二
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キーワード: 口腔内圧, 正常値, 喫煙
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p. Da0318

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抄録
【はじめに、目的】 呼吸筋力評価法として口腔内圧測定法が広く用いられている.しかし,測定方法は研究者により異なるため2002年にATS/ERSが標準的測定法を発表した.そのため,我が国でそれ以前に発表された報告はこの方法にそったものではない.また,我が国から発表された健常者の口腔内圧はいずれも喫煙者を含んでいる.新たな測定方法に基づいた日本人の正常値が必要である.そこで今回,健常者を対象に1)喫煙と口腔内圧の関係を,2)各年代毎の口腔内圧の正常値を男女別に提示した.【方法】 対象は,呼吸器疾患の既往がない,FEV1/FVC≧70%,%VC≧80%の健常者331名{男性146名(非喫煙者111名,喫煙者35名),女性185名(非喫煙者160名,喫煙者25名)}. 方法は,1)呼吸機能検査はミナトAS-307を用いてVCとFEV1,FEV/FVC,FVCを測定した.2)口腔内圧の測定はミナトAS-507を用いてATS/ERSガイドラインに基づき,被験者は座位でノーズクリップ装着下にPImaxとPEmaxを測定した.いずれも,口腔内圧を1.5秒以上維持させ,1分間の休憩を挟んで3回行い,口腔内圧の絶対値の最大値を採用した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は本学倫理委員会の承認を得て,被験者に事前に本研究の目的および方法を説明し,本人の書面による同意を得て実施した.【結果】 1)喫煙と口腔内圧の関係健常人においてPImaxとPEmaxに影響する諸因子を検討したところ,男性では年齢とのみ弱い相関を,女性ではPImaxのみ年齢と弱い相関を示した.喫煙の影響を調べるために,年齢を一致させた喫煙者群と非喫煙者群の2群(男性各35名,女性各25名)で検討したところ,男女ともPImaxとPEmaxは2群間で有意差を認めなかった. 2)各年代毎の口腔内圧の正常値今回,呼吸機能が正常な喫煙者では喫煙が口腔内圧に影響しなかったことから,喫煙者を含んだ全被験者の口腔内圧の絶対値の正常下限値を5パーセンタイルで,男女別,年代毎に提示した.以下,(中央値,5パーセンタイル値),単位はcmH20で示す.男性:PImax 18-34歳(104,67),35-49歳(96,67),50-64歳(80,47)女性:PImax 18-34歳(72,50),35-49歳(63,52),50-64歳(61,46),65-79歳(56,42)男性:PEmax 18-34歳(117,79),35-49歳(110,69),50-64歳(111,85)女性:PEmax 18-34歳(74,47),35-49歳(74,51),50-64歳(88,48),65-79歳(75,39)【考察】 健常人おいて,PImaxとPEmaxに影響する諸因子を検討したところ,男性では年齢とのみ弱い相関を,女性ではPImaxのみ年齢と弱い相関を示した.加齢により口腔内圧が低下するというのはこれまでの報告と一致している.さらに,口腔内圧の諸因子は年齢だけでなく,呼吸機能や体格との相関も過去には報告されている.しかし,いずれのパラメータも口腔内圧と弱い相関を示しているにすぎない.これは,口腔内圧測定自体が非常にばらつきの大きい検査であることによる.また,口腔内圧と喫煙の関係について,呼吸機能が正常な喫煙者では,喫煙がPImaxやPEmaxに影響しないことを示した.正常値については,口腔内圧測定自体測定値のばらつきも大きく,正規分布していない.また口腔内圧に影響する因子は年齢のみで極めて弱い相関であった.そのため,我々は正常下限値に5パーセンタイルを採用し,口腔内圧の絶対値がその値未満を異常値とした.なお,呼吸機能が正常である限り喫煙の影響はなかったため,喫煙者を含んだ口腔内圧の中央値と正常下限値を,男女別,年代毎に提示した.今回,我々が提示した正常下限値は,過去の我が国の報告や欧米人の報告と比べても明らかに低い.過去の我が国の報告は測定方法が異なるためだと考えられるが,それでも欧米人の報告値よりも低い.それには,人種や活動性などの様々な因子を含んだ体格差が関係しているかもしれない.【理学療法学研究としての意義】 呼吸筋力評価法としての口腔内圧測定は,呼吸不全,神経筋疾患等の診断および病態の把握に有用である.今回我々は呼吸機能が正常な喫煙者であれば口腔内圧に喫煙の影響がないことを提示した.さらに,ガイドラインに基づいた日本人の正常値を提示した.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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