理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
2型糖尿病患者へのアームエルゴメーターによる運動介入の効果
─非介入期間を含む6ヶ月間の介入研究─
水谷 真康高橋 猛萩原 早保青木 正典若山 浩子出口 晃中 徹
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p. Da0331

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抄録
【はじめに,目的】 2型糖尿病患者(以下DM患者)の運動療法においては,バイクや歩行による下肢の持続運動の報告Lohmann H, et al(2010)などが多く,一般的に広く用いられている.しかし,臨床場面では下肢に運動機能障害をもち従来の運動療法が行えない患者も多い.そこで我々は予備的検討として上肢による有酸素運動を実施しその効果について若干の知見を得,第46回の本大会にて報告した.今回は,Applied Behavior Analysis designにて同様の運動介入を実施し,DM患者に対する臨床的介入としての有用性を検証した.【方法】 1 対象者:当院通院中の2型糖尿病患者で,糖化ヘモグロビン(以下HbA1c:JDS値)が6.5%以上,重篤な心疾患,上肢運動器疾患,中枢神経疾患,認知症を合併しておらず,ADLは自立レベルにあり,運動療法が処方された患者8名(男性5名・女性3名,年齢60.3±6.9歳,罹患期間71.0±52.0か月)を対象とした.2 期間設定:介入前非運動期間8週間(以下control期間),運動期間8週間(以下exercise期間),介入後非運動期間8週間(以下follow期間)と設定した.3 測定項目:血糖コントロール指標としてHbA1c,運動耐容能指標としてアームエルゴメーター(三菱電機社ergo meter strengthergo240 以下AE)でのRamp負荷運動負荷試験にて算出したAnaerobic Threshold(以下AT)の酸素摂取量(以下AT-VO2)・心拍数(以下AT-HR)・仕事量(以下AT-Load)をいずれも各三期の前後計4点測定し,exercise期間の前後2点にて運動能力指標として握力,Arm carl,DM治療への主観的意識指標としてProblem Areas In Diabetes Survey(以下PAID)による質問紙調査を行った.また,運動耐容能指標として介入初回・最終にAEによる消費熱量を測定した.4 運動介入方法:exercise期間直前に個々に測定して得られたAT-HRを目標心拍数として,心肺定常負荷による有酸素運動をAEにて週3日(30分/日)の頻度で8週間,計24回の介入を行った.5 統計処理:等分散を確認後,対応のあるt検定,一元配置分散分析-Tukey多重比較により有意水準5%にて検討した.【倫理的配慮、説明と同意】 当院並びに鈴鹿医療科学大学の倫理委員会の承認を得,対象者には研究内容を説明し文書による同意を得て実施した.【結果】 全対象者への介入実績は100%であった.HbA1cはcontrol期間で変化がなかったが,exercise期間では低下し(p<0.05),その後のfollow期間にて若干の増加を認めた.AT-Wattはcontrol期間で変化がなく,exercise期間で増加(p<0.01),follow期間で若干の低下がみられた一方,AT-HRは全期間で変化がなかった.AT-VO2では,有意差はみられなかったもののexercise期間で増加し,その後のfollow期間で低下する傾向がみられた.介入時の消費熱量は,初回に対し最終回で増加(p<0.05),運動能力指標である握力・Arm carlについても介入後有意に増加した(p<0.05).PAIDは内的整合性が高く(Chronback α0.95,0.96),scoreが介入後有意に低下していた(p<0.01).【考察】 HbA1cはcontrol期間で変化がなくexercise期間で改善し,その後のfollow期間で若干の悪化を認めた.これはAEによる有酸素運動が活動筋への糖代謝を促進・増大させることが可能であり血糖コントロールにおいて有効であったことを示している.日本糖尿病診療ガイドライン2004による血糖コントロール管理指標でみてみると,介入前は「不可」であったが,介入により「不十分」となり,細小血管障害など合併症の予防にも重要な役割を果たす血糖値のコントロールが行えたことは有用な結果であった.運動耐容能指標であるAT-Watt,介入時の初回・最終消費熱量は有意に向上,併せてAT-VO2に向上の傾向がみられるもののAT-HRに変化がみられなかったことから,心肺機能・全身持久力の向上が推察できた.押田らによると「全身持久力の指標とインスリン感受性は正の相関がある」としており,本運動によって運動耐容能指標が向上していることから,インスリン感受性の改善も示唆された.運動能力指標である左右握力,Arm Carlは有意に向上した.原らによるとAEの運動ではもっとも握力が運動耐容能と密接な関係があるとしている.よって,AEを使った運動により筋力が増加したと考えられ,持続的で合理的な運動が可能となり糖代謝を促進したと考えられる.糖尿病治療ヘの感情負担度を示すPAIDの有意な低下は課題や頻度の明確化および運動の習慣化によって,運動の目標が明確になることにより,DM治療に対する感情負担度が軽減した可能性を示している.【理学療法学研究としての意義】 AEでの有酸素運動は,DM患者の血糖コントロール及び運動耐容能へ有益な効果があることが示唆され,下肢機能に制限をもつDM患者の運動療法の一手段として有効であると考えられる.また,本運動は,継続し易くDM治療に対する感情負担度の軽減に繋がり,自己管理能力が強化される可能性が示唆された.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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