理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
短時間インターバル形式の一過性運動が動脈スティフネスに及ぼす影響
出口 憲市三浦 哉後藤 強柳澤 幸夫
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p. Db0550

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抄録
【はじめに、目的】 近年,中強度の持続的トレーニングと比較して,インターバルトレーニングの方が一層動脈機能を改善させることが報告されている.これは,インターバルトレーニングでは高強度運動を繰り返すことにより,shear stressを高めることで血管拡張物質である一酸化窒素 (NO) の分泌が促進することが影響していると考えられている.このように,インターバル形式のトレーニングは,動脈機能を改善させる上で効果的であるが,運動強度が高く,高血圧治療ガイドラインにより推奨されている運動時間より長く設定されているために,中高齢の低体力者には,心負荷が高くなるなどのリスクが予測される.そこで本研究では,短時間で構成されるインターバル形式の運動が動脈スティフネスに及ぼす影響をみるために一過性運動前後の動脈機能の変化を検討した.【方法】 成人男性21名 (24.8歳±3.0) を対象とし,短時間インターバル形式の運動および持続的運動の2条件を無作為に割付し,自転車エルゴメータを用いて実施した.短時間インターバル形式の運動は,80%VO2peakを高強度設定とし,回復期の運動強度は50%VO2peakとし,ウォーミングアップ,クールダウンを含めて24.6分間実施した.持続的運動は,50%VO2peakを30分間実施した.なお,2条件の間で相対的な仕事量が同様となるように運動時間を設定した.運動負荷テストは,多段階負荷法を使用し,運動負荷テストおよび各条件時の酸素摂取量および心拍数 (HR) の測定には,自動呼気ガス分析装置 (AR-1 Type-3:アルコシステム製) およびハートレイトモニター (PUX-1001:NISSEI社製) を使用した.動脈スティフネスの指標である上腕-足首動脈間の脈波伝播速度 (baPWV) ,上腕収縮期/拡張期血圧 (SBP/DBP) は,血圧脈波検査装置 (form PWV/ABI:コーリンメディカル社製) を用いて運動前,運動終了3分後および15分後に安静仰臥位にてそれぞれ測定した.統計解析は,SPSS17.0Jを使用し,運動前後の各測定値の比較には,繰り返しのある二元配置分散分析後に多重比較を実施した.また,両条件の平均値の差には対応のあるt検定を用いた.なお,危険率は5%未満を有意水準として採用した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は,徳島大学総合科学部人間科学分野における研究倫理委員会の承諾を得たものであり,対象者には事前に文章および口頭にて研究内容・趣旨,参加の拒否・撤回・中断などについて説明し,承諾を得た後に研究を開始した.【結果】 運動前,運動終了3分後および15分後のSBPは,インターバル形式の運動で,それぞれ117.7±9.7mmHg,122.2±10.1mmHg,116.9±10.1mmHg,持続的運動で,それぞれ118.3±10.3mmHg,125.2±10.7mmHg,117.5±8.8mmHgであり,両条件の間に有意な差は認められなかった.HRは,インターバル形式の運動で,それぞれ60.9±3.7bpm,84.2±10.9bpm,75.0±9.2bpm,持続的運動で,それぞれ62.3±8.8bpm,74.7±9.0bpm,67.0±7.0bpmであり,両条件の間には有意な差が認められた (p<0.001).baPWVは,インターバル形式の運動で,それぞれ1170.9±102.2cm/sec,1128.0±104.9cm/sec,1101.8±93.3cm/sec,持続的運動で,それぞれ 1161.2±121.7cm/sec,1149.2±111.6cm/sec,1147.1±84.9cm/secであり,両条件の間には有意な差が認められた (p<0.01).【考察】 従来のインターバル形式の運動による研究では,運動強度の設定が高く運動時間も長いために,高頻度に高強度運動を繰り返すことになり,心負荷が高くなるなどのリスクが予測された.そのため,安全面を考慮し,高強度および中強度運動を血中乳酸除去が促進される比率および運動時間である1:1および3分間ずつを繰り返す設定とした.その結果,本研究で実施した短時間インターバル形式の運動は,持続的運動と比較して,baPWVの値が有意に低値を示した.これは,高強度運動を繰り返すことにより心筋収縮力が高まることで,血流量の増加にともない血管壁へのshear stressが増加したために動脈機能が改善したと考えられる.また,HRは,インターバル形式の運動において,運動終了15分後でも有意に高値を示していることから,血管内膜を構成する内皮細胞からのNOが持続的に放出され,動脈の機能的変化が生じたのではないかと考えられる.したがって,短時間インターバル形式の運動は,持続的運動と比較して運動後の動脈スティフネスを一層低下することが明らかになった.このことから,短時間インターバル形式の一過性運動は,運動時間を短縮しても高血圧治療ガイドラインで推奨されている中強度の持続的運動と比較して動脈スティフネスを改善することが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 今後,運動介入をすることにより中年男性に好発する急性心筋梗塞など循環器疾患の一次予防に効果的な運動プログラムの開発に寄与する可能性がある.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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