理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
保存期慢性腎臓病患者の健康関連QOLに影響する因子の検討
齋藤 愛子下地 大輔樋口 謙次宇都宮 保典細谷 龍男安保 雅博
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p. Db0580

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抄録
【はじめに、目的】 近年、保存期慢性腎臓病(CKD)患者は増加の一途をたどっており、CKDステージの進行と共に健康関連QOLが低下すると報告されている。そのためQOL維持・向上は、透析導入までの期間を延長させると同様に、臨床現場において重要視されている。先行研究を概観すると、保存期CKD患者の健康関連QOLを低下させる影響因子として、貧血や全身倦怠感などの身体症状や食事・身体活動制限が挙げられている。しかし、その内容は透析導入直前の末期腎不全患者に見られるものが多く、軽度~中等度腎機能障害患者における健康関連QOLの影響因子は不明確である。軽度~中等度腎機能障害患者は腎機能障害特有の諸症状を呈さないため、病態理解や日常生活活動の量および質が健康関連QOLに影響を及ぼすと推察される。そこで、本研究の目的は、保存期CKD患者における健康関連QOLの影響因子について従来の検討因子に身体活動量も加えて横断的に調査し、さらに各CKDステージにおける特徴を分析することである。【方法】 当院腎臓内科外来を受診しているCKD患者に質問紙表を用いて調査した。有効回答数は80名、平均年齢56.9±12.3歳、男性58名、女性22名、CKDステージ分類の内訳は1:3名、2:18名、3:46名、4:13名である。身体活動量の調査は国際標準化身体活動質問表(I-PAQ)、健康関連QOLの調査はSF-36を使用した。血液検査所見として、血清アルブミン、総蛋白、ヘモグロビン(以下Hb)、ヘマトクリット値をカルテより後方視的に調査した。身体活動量は、I-PAQより得られた各身体活動の強度(METs)に時間(min)を乗じて合計した1週間当たりの値を算出し、「日常生活の活動量」と「運動時での活動量」に細分化した。健康関連QOLはSF-36から得られた身体サマリースコア(以下PCS)と精神サマリースコア(以下MCS)を算出した。検討方法は、健康関連QOLの影響因子について年齢、血液検査所見、身体活動量との相関を分析した。またそれぞれの分析は対象を全ステージと各ステージ(ステージ1・2、ステージ3、ステージ4)に分けて検討した。統計処理はSpearmanの順位相関係数を使用し、有意水準を5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、当大学倫理委員会の承認を受け、対象者に目的と方法を説明し、同意を得て実施した。【結果】 ステージ1・2において身体活動量とMCSに有意な相関を認めた。詳細は1週間当たりの活動量とMCSに中等度正の相関(r=0.503)、「運動時での活動量」とMCSに強い正の相関(r=0.670)を認めた。また、全ステージでは年齢・Hb・身体活動量とPCS、ステージ3では身体活動量とPCSにそれぞれ有意な相関を認めたが、その係数は弱いものであった。ステージ4では全ての項目において健康関連QOLと相関を示さなかった。【考察】 ステージ1・2は軽度腎機能障害群であり、身体機能・身体面での健康関連QOLは保たれている。しかしCKD治療の導入期にあり、障害受容の問題や自己管理、様々な制限に対する不安が生じると考えられる。CKDの診断による健康感の損失や過負荷による腎機能低下への不安は余暇活動や高強度の運動を制限する因子になり得る。そのため、今回の結果では精神面のQOLと「運動時での活動量」に有意な相関が得られたと推察される。保存期CKD患者において、健康関連QOL維持・向上のためには発症早期からの身体活動量維持が重要であり、中でも余暇活動を含めた中等度以上の運動量維持が必要であると考える。保存期CKD患者において軽度~中等度得腎機能障害患者は多数をしめているため、発症早期からの運動療法介入は重要性を増してくることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】 近年、保存期CKD患者のQOL向上に対する運動療法は注目されているが、その適応や内容については不明確な点が多い。今回の結果より、保存期CKD患者に対し、早期より活動量の向上・運動提示などが必要であると示唆された。そのため、今後、保存期CKD患者に対する理学療法部門の介入は重要性を増すことが予想され、得られた結果は意義があると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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