理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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呼吸介助法における胸腔内圧の変化について
山本 健太間瀬 教史久保 宏樹横井 祐樹川崎 友里菜眞渕 敏松浦 尊麿
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p. Db1205

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抄録
【目的】 呼吸介助法は、胸郭を用手的に圧迫することで深い呼気を促進し、増加した胸郭の弾性拡張力により吸気量の増大を得ようとするものである。呼吸介助法は気道内分泌物の移動や機能的残気量の減少などさまざまな効果が報告されている。一方、最大呼気まで絞り出すような過度な圧迫は胸腔内陽圧を著しく上昇させ、エア-トラッピングや肺胞虚脱の原因となる危険性も指摘されている。そこで今回は、呼吸介助法を最大呼気位程度まで行った場合、胸腔内圧が実際にどの程度上昇し、安静時や深呼吸と比較しどの程度異なるのか、について検討した。さらに、吸気時に生じる胸腔内陰圧の程度についても検討したので報告する。【方法】 対象(被術者)は健常男性5名(年齢31.0±7.8歳、身長175.0±6.8cm、体重66.2±4.1kg)、呼吸介助を行う術者は呼吸理学療法の経験年数が8年の男性理学療法士1名(年齢29歳)とした。測定肢位は、術者を立位、被術者を背臥位とし、術者が被術者に向かって左側に位置する設定で、2分間の安静呼吸(安静時)を行った後、上部胸郭に対しての呼吸介助法(介助時)と深呼吸(深呼吸時)をそれぞれ2分間ランダムに行った。呼吸介助法は、術者の両手掌を被術者の両側の乳頭より上部、鎖骨下前胸部に密着させ、呼気に合わせて胸郭上部を押し下げるようにし、可能な限り最大呼気位まで介助を行うようにした。胸腔内圧は食道バル-ン法で食道内圧(Pes)を測定した。食道バル-ンは、バル-ン(長さ10cm、直径1.2cm)をポリエチレンチュ-ブ(直径2mm)に付けたものを使用した。測定機器は総合肺機能検査システム(チェスト社製 CHESTAC8900)を用いた。肺気量位変化は呼気ガス分析器(ミナト医科学社製AE300-s)を用いて測定した。Pes、肺気量位の経時的変化はサンプリング周波数100HzでPCに取り込み、安静時、深呼吸時、介助時ともに安定した3~5呼吸を抽出した。その後、肺気量位変化から一回換気量(TV)、終末吸気肺気量位(EILV)、終末呼気肺気量位(EELV)を算出した。Pes変化は、安静時、深呼吸時、介助時それぞれの呼気時最大Pes(maxPes)、吸気時最小Pes(minPes)を求め、安静時maxPesを0cmH2Oとし、それに対する変化圧(⊿maxPes、⊿minPes)として表した。EILV、EELVは、深呼吸時に見られた最小の肺気量位を0%、最大を100%として表した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者及び術者には本研究の趣旨を十分に説明し、同意を得た。また本研究は甲南女子大学倫理員委員会の承認を得ている。【結果】 EELVは、安静時(20.8±3.3%)に比べ、深呼吸時(7.8±6.6%)、介助時(6.0±4.9%)でともに有意(深呼吸時p<0.05、介助時p<0.01)に低い値を示したが、深呼吸時と介助時では差はなかった。EILVは、安静時(33.7±7.3%)、介助時(41.5±9.3%)に比べ深呼吸時(95.7±7.2%)でともに有意(p<0.01)に高い値を示したが、安静時と介助時には差はなかった。TVは、安静時(0.53±0.12L)に比べ、介助時(1.40±0.24L)は有意(p<0.01)に増加していた。⊿maxPesは安静時(0.0±0.0cmH2O)に比べ深呼吸時(4.0±3.4cmH2O)、介助時(9.3±4.4cmH2O)でともに有意(深呼吸時p<0.05、介助時p<0.01)に高値を示した。深呼吸時に比べ介助時の⊿maxPesは全例で上昇していたが有意な差はなかった。⊿minPesは安静時(-3.8±1.6cmH2O)に比べ深呼吸時(-21.0±3.1cmH2O)、介助時(-8.9±4.3cmH2O)はともに有意(深呼吸時p<0.01、介助時p<0.05)に低値を示し、深呼吸時は介助時に比べても有意(p<0.01)に低い値を示した。【考察】 今回の結果から、呼吸介助法時に呼気時の胸郭への圧迫を最大呼気位程度行うと、胸腔内圧は、深呼吸時と同程度まで胸腔内圧が上昇することがわかった。さらに、有意差はないものの介助時⊿maxPesが全例で深呼吸時の値より高い値を示していたことから、呼吸介助法時には、深呼吸時以上の高い胸腔内圧が生じる可能性があることがわかった。また、吸気時の胸腔内圧は、安静時呼吸に比べ低い値を示し、呼気延長により相対的に増加した胸郭の弾性拡張力により、胸腔内に高い陰圧が生じることがわかった。【理学療法学研究としての意義】 呼吸介助法における胸腔内圧の変化を知ることで、呼吸介助法の効果的な手技の判明につながると考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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