理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

専門領域 口述
慢性腎臓病患者の運動機能は糖尿病合併の有無により異なる
平木 幸治堀田 千晴若宮 亜希子井澤 和大森尾 裕志渡辺 敏柴垣 有吾安田 隆木村 健二郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. De0040

詳細
抄録
【はじめに、目的】 透析導入の原疾患の第1位は糖尿病腎症で,その約半数を占めている.また,糖尿病(DM)の身体的特徴として,筋力やバランスなどの運動機能が低下していることが報告されている. 透析を導入していない保存期の慢性腎臓病(CKD)患者を対象とした先行研究において我々は,腎機能の低下に伴い運動機能も低下していることを報告した.しかし,CKDの原疾患や併発症として多いDMの有無による運動機能の比較検討はできていない. 本研究の目的は,CKD患者の運動機能について,DM合併の有無と運動機能の関係について明らかにすることである.【方法】 対象は,当院腎臓・高血圧内科外来通院中のCKDステージ 1を除いたCKD患者145例である[男性102例,平均年齢66.5歳].除外基準は,透析患者,中枢および運動器疾患を有する者とした.なお,CKDステージ1の患者は年齢が若く,症例も少ないことが予想されたため除外した.対象をDM合併の有無によりDM群51例,非DM群94例に選別した.さらに,DM群のみを対象として糖尿病多発神経障害(DP)の合併の有無によりDP群26例,非DP群25例に分けた. 患者背景として年齢,性別,Body Mass Index(BMI),運動習慣の有無,CKDステージ分類を診療記録より後方視的に調査した. 運動機能指標は,握力,等尺性膝伸展筋力,片脚立位時間,最大歩行速度を採用した.握力は左右2回測定し,その最高値の左右の平均値(kgf)を算出した.等尺性膝伸展筋力は左右の最大値の平均を体重で除した値(kgf/kg)を膝伸展筋力として算出した.片脚立位時間は上肢の支持なく60秒を上限に,開眼にてそれぞれ2回ずつ測定し,最高値(秒)を採用した.歩行速度は10m歩行路の最速歩行時間を2回測定し,時間の短い記録を採用し,最大歩行速度(m/秒)を算出した. DM群に対するDP合併の有無は,「糖尿病多発神経障害の簡易診断基準」を用いて,自覚症状,アキレス腱反射,振動覚より判定した. 以上の方法より,CKD患者の運動機能指標をDMおよびDP合併の有無により比較検討した.統計解析はχ2乗検定,対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,危険率5%を有意水準とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は,当大学生命倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:第1624号).本研究に際し,事前に患者に研究の趣旨,内容および調査結果の取り扱い等に関して説明し文書にて同意を得た.【結果】 運動機能指標は,DM群と非DM群の順に,握力27.5 vs 29.8kgf (p=0.22),膝伸展筋力0.52 vs 0.61kgf/kg (p=0.01),片脚立位時間30.0 vs 60.0秒 (p<0.01),歩行速度1.8 vs 2.0m/秒 (p=0.02)で,握力以外のすべての指標でDM群が低値を示した.DM患者のみを対象とした検討では,DP群と非DP群の順に,握力23.5 vs 31.6kgf (p<0.01),膝伸展筋力0.45 vs 0.59 kgf/kg (p<0.01),片脚立位時間24.3 vs 60.0秒 (p<0.01),歩行速度1.8 vs 2.0m/秒 (p=0.02)であり,すべての運動機能指標でDP群は有意に低値を示した.なお,いずれの検討においても患者背景である年齢,性別,BMI,運動習慣の有無,CKDステージ分類には両群で有意差はなかった.【考察】 先行研究において,DM患者の運動機能は低下しているという報告は散見される.しかし,CKD患者の運動機能をDMおよびDP合併の有無により差異があるのかを検討したものはきわめて少ない.本研究では,CKD患者の運動機能はDMの合併の有無により差異があり,DM群は握力以外の指標ですべて有意に低値を示した.さらに,DM症例のみをDPの合併の有無で選別し比較した結果,DP群は非DP群に比して,すべての運動機能指標において有意に低下していることが明らかとなった.以上より,DMを合併したCKD患者の運動機能低下の要因には,DPが関与している可能性が示された.なお, いずれの検討においても患者背景の指標に両群で有意差はなく,それらの影響は少ないものと考えられた. ただし,今回は神経伝導速度やDPの重症度などは検討できていない.【理学療法学研究としての意義】 保存期CKD患者の運動機能に関する報告は少ないため,本研究結果はその参考値になるものと考えられた.また,CKD患者への介入時には,運動機能評価に加え,DM合併の有無や簡易に測定可能なDP検査についても参考にすべきと考えられた.
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top