理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
要介護高齢者における、うつと痛みに対する心理的要素との関連
谷川 大地, 三栖 翔吾, 澤 龍一, 土井 剛彦, 小野 玲
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キーワード: 要介護高齢者, うつ, 痛み
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p. Ea1016

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抄録
【はじめに、目的】 高齢者の精神疾患の中で、うつ病は認知症と共に頻度の高いものであり、うつが生活の質(QOL)に与える影響は大きい。また、うつの程度と介護保険の要支援・要介護認定リスクには相関があるとされており、うつ対策がQOLの向上のみでなく、介護予防や介護度重度化の予防の観点からも重要であると考えられる。高齢者のうつの原因は、身体の障害・痛み、新たな病気への罹患、自覚的な具合の悪さ、睡眠障害など様々なものが挙げられている。この中でも、高齢者の60%以上が何らかの痛みを有しているとの報告があることから、特に高齢者においては、身体の痛みがうつの非常に重要な因子であると考えられる。痛みとうつとの関連性について検討する際には、痛みの有無だけでなく、その強さや、痛みに対する心理的要素なども考慮する必要があると言われている。しかし、これらの研究の対象者は、若年者や、リウマチや慢性疼痛患者が中心であり、高齢者の中でも要介護高齢者における痛みに対する心理的要素とうつとの関連を検討した研究はほとんどない。本研究の目的は、要介護高齢者を対象にうつと痛みに対する心理的要素との関連を横断的に検討することである。【方法】 対象は、デイサービス施設を利用する要介護高齢者77名のうち、質問紙の内容を理解し回答することが可能であった65名(男性18名、女性47名、平均年齢±標準偏差;84.0±6.8歳、要支援1が10名、要支援2が22名、要介護1が20名、要介護2が7名、要介護3が6名)とした。うつ傾向の評価に、Geriatric Depression Scale (GDS)を用いた。痛みの評価は痛みの有無を問診により聴取し、痛みを有する者にはさらに、痛みの程度をNumerical Rating Scale(NRS;0-10に分布し、得点が高い程痛みの程度が高いことを示す)、痛みの破局化思考をPain Catastrophizing Scale(PCS;0-52に分布し、得点が高い程破局化傾向が強いことを示す)、痛みの自己効力感をPain Self-Efficacy Questionnaire(PSEQ;0-60に分布し、得点が高い程自己効力感が高いことを示す)を用いて評価した。その他に、身体機能の評価として、5mの歩行速度を計測した。統計解析は、最初に痛みの有無とGDSについて対応のないt検定を行い、続いて痛みを有する群において、GDSと痛みの程度、痛みの心理的要素の関連についてPearsonの相関を使用した。最後に、目的変数をGDS、独立変数をNRS、PCS、PSEQ、年齢、歩行速度とした重回帰分析を行った。5%未満を統計学的有意とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は神戸大学大学院保健学研究倫理委員会の承認を得た後に実施し、事前に書面と口頭にて研究の目的・趣旨を説明し同意を得た。【結果】 痛みを有する者は36名、有さない者は29名であった。痛みを有する者のGDSは平均値が6.3±3.2で、有さない者は3.9±3.3であった(p = .01)。痛みを有する者における評価項目の平均値は、PCSが25.1±9.5、PSEQが35.2±13.5、NRSが5.5±2.3、歩行速度は0.71±0.24 m/s であった。このうち、PCS(r = 0.37)、PSEQ(r = -0.51)は、GDSとそれぞれ中等度の相関を認めたが、NRS(r = 0.15)とGDSには相関を認めなかった。重回帰分析では、GDSと関連を認めた項目はPCS(標準化係数;0.28)およびPSEQ(-0.39)であった(R2=0.40)。【考察】 本研究の結果より、痛みを有する者は有さない者に比べうつ傾向が高く、痛みを有する高齢者の中でも、痛みの破局化思考が強い者、痛みの自己効力感が低い者は、うつ傾向が特に高いことが示唆された。一方で、うつ傾向は痛みの程度とは関連していなかった。したがって、要介護高齢者においても、痛みの程度よりも痛みに関する心理的要素がうつ傾向と関連することが明らかとなった。特に高齢者において、痛みの自己効力感とうつとの関連は、先行研究でも明らかにされておらず、うつと関連する新たな因子になりえると考えられる。今後は要介護高齢者において、これらの心理的要素がうつを予測する因子になりえるかどうかを、縦断的な調査により明らかにしていく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果より、痛みを有する高齢者に対して理学療法介入を行う際には、背後に存在する可能性があるうつ傾向を認識し、痛みとともに心理的要素を考慮する必要があることが示された。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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