理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 口述
介護老人保健施設における車椅子使用者の転倒の特徴
今岡 真和樋口 由美呉本 冬馬藤堂 恵美子
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キーワード: 虚弱高齢者, 車椅子, 転倒
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p. Ea1019

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抄録
【はじめに】 介護老人保健施設(以下:老健施設)に入所する虚弱高齢者の転倒発生率は、地域高齢者に比べ2~3倍と報告される。老健施設入所者のほとんどは転倒ハイリスク者であり、運動機能及び認知機能は低い。また、老健施設入所者の約70%は車椅子を使用しており、移動様式の違いから、歩行可能者と転倒の特徴が異なると考えられる。そこで本研究は、老健施設入所者のうち、車椅子を日常的に移動手段として利用した者を対象に、入所期間中における転倒の有無および転倒発生状況等について調査することを目的とした。【対象及び方法】 大都市近郊のA介護老人保健施設(入所定員100名)において、2010年1月~2011年5月までの1年5ヶ月間に、入所した車椅子利用者123名(男性41名、女性82名、平均年齢83.9±8.8歳)を調査対象とした。車椅子利用者の定義は、施設内生活全般の移動に車椅子を自走していた者とし、車椅子駆動全介助の者は対象者から除外した。また、入所時評価として長谷川式簡易知能評価スケール(以下:HDS-R)を検査した。調査期間の事故報告書から転倒事故を抽出し、対象者の転倒有無及び転倒状況を調査した。転倒の定義は、Gibsonの定義とし、車椅子からのずり落ちも転倒とした。調査項目は、1)転倒回数、2)転倒までの入所期間、3)転倒場所、4)転倒時間帯、5)転倒方向の5項目とした。複数回の転倒があった者の「転倒までの入所期間」は、初回の転倒時期により算出した。統計学的検討は対応のないt-検定、χ2検定を用いて分析し、有意水準を5%未満とした。全ての統計解析はSPSS 14.0Jを用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 調査実施にあたって、得られた結果の公表について十分配慮することを条件に、施設側から承諾を得、倫理的な配慮を行った。今回の対象者はインフォームドコンセントを受けることが難しい対象者も含まれており、対象者家族を代託者とした。本研究は大阪府立大学総合リハビリテーション学部研究倫理委員会の承認を得た。【結果】 対象全体のHDS-Rは平均11.0±9.1点、入所期間平均12.8±8.4カ月であった。調査期間中に転倒した者は68名であり、車椅子利用者の55.3%であった。転倒群と非転倒群の間に年齢、性別、HDS-Rによる認知機能、介護度には統計学的な差は認めなかった。転倒者68名のうち、転倒1回は31名、複数転倒は37名であり、転倒者の半数以上が複数回の転倒を経験していた。最も転倒件数が多かったのは入所から2カ月以内であり、21件が報告された。つまり、転倒者68名のうち約30%は入所から2ヶ月までに転倒していた。転倒発生場所は、ベッドサイドで61%の転倒が発生しており、次に多いトイレの26%と合わせると87%であった。転倒発生時刻は14時~16時の活動時間帯に最も多く(34件)、次いで6時から8時の身支度時間帯に21件が発生していた。延べ転倒件数176件のうち、転倒方向の把握がなされていたのは130件であった。後方への転倒が96件と最も多く、転倒方向が把握されたうちの74%を占めていた。次いで、前方が19件であった。【考察】 車椅子使用虚弱高齢者は先行研究の報告と一致して、転倒発生率が在宅高齢者に比べ高かった。施設入所の車椅子利用者の転倒は入所から2カ月までに集中しており、ベッドサイド及びトイレへの移乗動作にて後方へ転倒するケースが最も多かった。車椅子利用者の転倒状況については、転倒方向は後方が最も多く、転倒場面がベッド周囲とトイレに集中していたことを考え合わせると、車椅子とベッドもしくは便座への移乗時に後方へずり落ちていた可能性が高い。この転倒発生状況は車椅子利用者に特徴的な点であり、歩行が出来る高齢者の「つまづく」「滑る」といった転倒発生状況とは明らかに異なる。そのため、入所当初から屋内移動手段が歩行か車椅子かで分類し、それぞれに適切な転倒アセスメントを行う必要性がある。【理学療法学研究としての意義】 施設入所虚弱高齢者のうち、車椅子使用者は歩行可能高齢者と比べ転倒リスクは高いが、実態調査を十分に行った報告は少ない現状である。そのため、本調査は老健施設に従事する理学療法士数が増加する中で、リハビリテーションの運用にあたり、入所者の転倒リスク軽減を図るための有用なデータとなり得る。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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