理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
変形性膝関節症を合併した脳卒中片麻痺患者に対するsemi long leg brace作製の試み
藤田 恭久木下 利喜生箕島 佑太佐藤 秀幸森木 貴司橋崎 孝賢児島 大介上西 啓裕梅本 安則幸田 剣
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p. Eb0639

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抄録
【はじめに、目的】 脳卒中患者に対する急性期リハビリテーション(リハ)では、安静による廃用症候群の予防やADL向上にむけて早期からの立位、歩行訓練が推奨されている。そのため、脳卒中により麻痺側下肢に支持性がない場合は下肢装具が必要不可欠となる。当院での装具処方は、原疾患の病態把握,画像所見を確認し、装具の適応と予後予測を検討した上で実施し、基本的にオーバーブレイスを選択している。また症例の合併症や重複障害に合わせて、装具に工夫を加え個別対応を行っている。今回、脳梗塞により左片麻痺(運動、感覚障害)を呈し、更に両側内反膝変形を合併している症例を担当した。歩行時に膝折れ、lateral thrust、膝の疼痛を認め、両側金属支柱付き靴型短下肢装具(以下SLB)に外側ウェッジを取り付け対応したが、膝折れは制動できたものの、lateral thrust矯正は困難であった。検討の結果、SLBではなくsemi longタイプの両側金属支柱付き靴型下肢装具(以下SLLB)に内反膝装具を連結させた装具を作製、使用した結果、lateral thrustの制動と疼痛軽減、ADLの向上を認めたので報告する。【方法】 症例は81歳、女性。右内頚動脈閉塞より左片麻痺を呈し、合併症に高脂血症、高血圧、変形性膝関節症を認めた。リハ開始時現症は、意識清明、見当識が不良であった。ROM検査では左右膝関節屈曲120°、伸展右0°、左-5°、左右足関節背屈15°、立位FTA右180°、左185°であった。膝関節は左優位の両側内反変形を伴い、左下肢の内外反ストレステストで動揺を認め、歩行時に左膝内側裂隙に疼痛を認めた。MMTは左上肢2~3レベル、下肢は腸腰筋、大殿筋、ハムストリングス、前脛骨筋、腓腹筋2レベル、大腿四頭筋3レベルであった。感覚は表在、深部感覚とも左上下肢で重度鈍麻であった。深部腱反射は左上下肢で亢進。高次脳機能障害は左右失認、病態失認、軽度の半側空間無視、運動維持困難を呈していた。歩行は装具なしで、平行棒内で左麻痺側立脚期に膝折れ、足部内反を認め内反捻挫の危険性を認めた。当院備品のSLBでは、左立脚中期にかけて膝のlateral thrustが出現し、左膝内側裂隙に疼痛を認めた。SLB装着下での歩行介助の程度としては、平行棒内で監視レベル。サイドケイン使用で軽介助レベルであった。装具処方の目的は、左片麻痺による膝折れ、失調様歩行、膝の疼痛軽減とし、特に既存のSLBでは矯正困難な荷重時のlateral thrust制動のために、SLBに内反矯正用膝パッドを連結させたSLLBを作製した。膝継手はフリーにし、足継手をダブルクレンザックとした。外側ウェッジに関しては、リハ医師と検討し、装具作製後必要に応じてインソールで対応することとなった。【倫理的配慮、説明と同意】 本症例と家族に対して発表の趣旨について説明を行い、情報の開示に対し同意を得た。【結果】 今回作製したSLLBを使用した直後より、歩行では左麻痺側立脚期から中期にかけて膝のlateral thrustが制動され、疼痛の訴えを認めなくなった。遊脚期においても装具装着により足底接地位置のばらつきが減少した。装具装着し歩行訓練、筋力増強訓練を中心としたリハを1週間行った結果、装具装着下で杖歩行が監視レベルとなった。MMTは左下肢、腸腰筋、ハムストリングス、前脛骨筋3レベル、大腿四頭筋4レベルとなった。ADLは装具装着下でトイレ動作が軽介助レベルとなった。【考察】 高齢の脳卒中患者では、運動器障害の合併は必発で、リハの阻害になることが多い。今回、左片麻痺と両側変形性膝関節症に伴い、運動・感覚障害、内反膝変形が問題となり、左麻痺側立脚期にlateral thrustと膝に疼痛を認めた症例に対し、装具処方に工夫を行った。この装具装着により、膝のlateral thrustと疼痛の改善を認め、訓練継続により下肢筋力とADLが改善した。内反膝変形に対する膝装具として、ソフトブレイスとハードブレイスがある。しかし、SLBを装着した片麻痺者において、ハードブレイスはSLBの上からの装着が不可能である。またソフトブレイスやSLBの足部に外側ウェッジを取り付けるだけでは、強いlateral thrust の制動は不十分である。今回作製したSLLBは、このような患者の膝関節の安定性向上の為に唯一装着可能な装具である。膝関節を超える両側金属支柱に加え、内反矯正用の膝パッドの装着により膝関節の安定性が高められ、疼痛が改善したと考えられる。装具作成後、疼痛の改善により、歩行訓練を中心に積極的に運動負荷を行えた事が、筋力改善による左麻痺側の支持性の向上、起立歩行動作の改善に貢献したと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 今回処方したSLLBは、変形性膝関節症を合併した高齢の片麻痺患者において装具選択の手段の一つとなる可能性がある。また装具処方の際は、合併症や重複障害を検討し、症例に適した的確な判断をする必要がある。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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