抄録
【はじめに、目的】 福岡県八女市では、2009年4月より総合型地域スポーツクラブ「SOUTHクラブ」と協働で、当院理学療法士による子どものための運動教室「スポーツレクリエーションキッズ(以下スポレク)」を開催している。当院では週に1回「スポーツ外来」を開設しており、地域で運動をしている子ども達のスポーツ障害に対して理学療法を実施している。来院する子どものスポーツ障害の原因を評価していく中で、いわゆるover use(使い過ぎ)だけではなく、miss use(誤った使い方)もスポーツ障害と関連性が高いのではないかと感じた。さらに、miss useがスポーツ障害の原因であると考えられる来院者は小学生に増加しており、小学生以下の低年齢層に対しての障害予防活動が必要であると考えた。そこで今回、教室開催のための環境が整っている地域スポーツクラブと、専門的な知識と指導力を有する理学療法士が連携しながらスポレクを実施していくことで、障害予防活動の一環になるのではないかと考え、スポレクを実施することとなった。今回は第1報として、2009年4月からの2年間の活動経過について報告する。【方法】 スポレクの開催頻度は月2回、実施時間は90分である。対象はプレ・ゴールデンエイジと呼ばれる5~8歳、運動内容はコーディネーショントレーニングを中心としたプログラムを実施している。講師は、当院理学療法士、健康運動指導士およびSOUTHクラブのスタッフが担当している。また、教室の内容を充実させるため、年に1回、保護者へのアンケートを実施した。【倫理的配慮、説明と同意】 本報告の目的および個人情報保護について、SOUTHクラブスタッフおよび参加者・保護者に対して十分に説明し、同意を得た。また、アンケート調査に関しても、調査の目的をSOUTHクラブスタッフおよび参加者・保護者に対して十分に説明した上で記入して頂いた。【結果】 <参加>2年間でスポレクの開催数は42回、参加した人数はのべ837名であり、1回当たり平均19.9名の参加であった。<アンケート>スポレクに対する満足度は非常に高く、コーディネーショントレーニングを中心とした運動内容、スタッフの対応に関しても満足度は高い結果となった。<スポレクの継続>当院スタッフのスポレクへの関わりは2010年度までとなったが、参加者・保護者からのスポレク継続の希望が多数寄せられたため、2011年度から、NPO法人に引き継ぎを行い、NPO法人所属の理学療法士が関わりながらスポレクを継続して開催している。【考察】 近年、子どもの体力低下が話題となっている。文部科学省が公表した2010年度の「体力・運動能力調査」によると、基礎的な運動能力は6~19歳の男女ともに向上しているが、体力がピークであった1985年と比べるとまだまだ低い。基礎的な運動能力が低下している要因としては、室内遊びの増加による一日の活動量の減少、屋外で遊ぶ環境の減少などが考えられ、子どもの基礎的な運動能力の低下は、スポーツ活動によるスポーツ障害の増加を引き起こすと考えられる。そこで当院では、障害予防活動として、過去に小、中、高校生の部活動現場を訪問し、メディカルチェックやコンディショニング教室などの院外活動を実施してきた。さらに、幼児~小学生を対象とした「スポーツレクリエーションプログラム」を実施し、子どもの体力低下によるスポーツ障害予防のための活動を行ってきた。しかし、いずれも継続した活動ではないため、継続的な介入ができる環境が必要であると考えていた。今回、SOUTHクラブとの協働により、継続的な介入ができる環境を設ける事ができたことは、子どもの障害予防活動としては非常に有意義であると考える。環境の整った地域スポーツクラブと連携し、理学療法士としての専門性を活かし、体力向上・障害予防のための効果的な運動プログラムを子ども達に提供していくことで、理学療法士としての社会性を磨く一助となっていると考える。また、これまでの活動を通して、近隣の幼稚園や小学校から運動教室開催の依頼がきており、今後も当院の診療地域を中心に、このような活動を継続していきたいと考える。【理学療法学研究としての意義】 理学療法士が専門家としての知識や指導力を活かし、地域活動として子どもの運動指導に関わっていくことは今後益々重要になってくると考える。教育行政と連携し、子どもの体力づくり・健康づくりを行い、障害予防活動に繋げていくことは、理学療法士の社会的役割拡大からもその意義は大きい。