理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
超音波療法とストレッチングの併用における効果持続時間の検討
平賀 篤高田 浩瑞山村 俊一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Fb0800

詳細
抄録

【はじめに、目的】 物理療法分野において超音波療法(以下US)は比較的使用頻度が高く、臨床でもその効果は高いと言われている。USには温熱作用、非温熱作用があり、深部組織まで到達し関節可動域の改善や疼痛の緩和などの効果が報告されている。特に近年ではUSを単独で行うよりも運動療法との併用のほうが効果が高いとの見解も多い。しかしながらUSの効果持続時間や運動療法との併用に関する研究報告は少ない。そこで本研究ではUSの持続時間と運動療法の併用の観点からより効果的な条件を検討することを目的とした。【方法】 対象は右下肢に既往のない成人男性19名(平均年齢25.8±4.1歳)とした。右下腿後面(下腿三頭筋筋腱移行部)にUS(ULTRASOUND US-700:伊藤超短波株式会社)を照射した。USの設定は周波数3MHz、出力1.0W/cm2、照射時間率100%、照射時間は5分間とした。US終了後、右下腿後面に対しストレッチを2分間行った。ストレッチはUS終了後0分、5分、10分間(以下0分、5分、10分)の時間をおいてから開始するよう設定し、1日1条件を無作為で選択し計3日間行った。効果判定として関節可動域・組織硬度・圧痛を計測し、実験前後の差を経過時間で比較した。関節可動域は足関節背屈(腹臥位、膝屈曲位にて自動・他動運動の2試行)をデジタルカメラにて撮影し、ImageJを使用し画像上で角度計測した。組織硬度・圧痛は組織硬度計、圧痛計(総合評価システムOE-220:伊藤超短波株式会社)を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】 研究に際して被験者には実験趣旨、安全性と個人情報の取り扱いについて文章と口頭で説明し、署名にて同意を得た。【結果】 実験前後での背屈角度差(他動)はUS照射後ストレッチ開始時間0分:3.74±2.10度 5分:2.04±1.51度 10分:0.62±1.42度となり、5分・10分に対して0分の他動背屈角度差が有意に大きい結果となった。また背屈角度差(自動)はストレッチ開始時間0分:3.86±2.24度 5分:1.64±2.08度 10分:0.82±2.69度となり、10分に対して0分が有意に大きい結果となった。実験前後での組織硬度差は変化率(%)で表し、数値が大きくなるほど組織硬度が減少するよう表した。ストレッチ開始時間0分:8.05±6.68% 5分2.99±11.67% 10分-1.22±6.85% となり、ストレッチ開始時間10分に対して0分での組織硬度が有意に減少した。実験前後での圧痛差は経過時間で有意な差はなかった。また背屈角度差と組織硬度差の間には有意な相関(r=0.9)が見られた。【考察】 結果より、US照射からストレッチ開始までの経過時間により背屈角度と組織硬度に有意な差があることが確認できた。超音波はその温熱効果により軟部組織の粘弾性増加や血流増大などが期待できる。一方USで加温した組織は極超短波等に比べ冷めやすいといった報告もあり、組織温の低下により上記の効果も低下する可能性が高い。ストレッチでは組織の粘弾性が高いほど効果的であり、ストレッチ開始時間の違いにによって背屈角度と組織硬度に有意差がでたのは超音波照射後10分程度で組織温が低下し軟部組織の粘弾性低下が起きた可能性が考えられる。今回の研究からUSとストレッチを併用して行う場合ストレッチの開始時間が組織変化に影響を及ぼすと考えられ、少なくとも5分以内にストレッチを開始すること、さらにはできるだけ早くストレッチを開始することがより効果的な条件ではないかと示唆される。今後の課題として、USの照射やストレッチ併用の際の条件を多角的に検証する必要があると思われる。また、今回は健常成人での研究であったが、実際の症例での検証も進めていきたい。【理学療法学研究としての意義】 臨床経験上、可動域制限に対しUSとストレッチを併用して行うことは多く見られるが、物理療法を空き時間に行うものとして捉えている部分も否定できないと感じる。本研究の結果は物理療法自体の効果に加え、運動療法との相乗効果にも関連することから、治療の順序を含めたより効率的な治療方法の選択ができるものと考えられる。

著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top