抄録
【はじめに、目的】 実習において、指導者の業務後に実施される学生に対するフィードバック(以下FB)時間(実習指導時間)に関して、各施設ならびに指導者よってばらつきがあると考えられる。加えて長時間のFBが効率的かつ効果的に学生の実習目標の達成度や理解度を向上させるとは言い難い。また、昨今の養成校の増加による学生数の増加により指導者の不足、指導負担の増加が問題点としてあげられており、長時間のFBは指導者の指導負担の増加に繋がると考えられる。また、学生自身の問題としては、実習およびFB時における内容の確認、理解不足や改善度の低下、積極性の欠如等の学習姿勢が、FB時間を延長させる要因ではないかと考えられる。そこで本研究では、本校評価実習におけるFB時間と各調査項目(学生アンケート調査)の関連からFB時間に影響を及ぼす要因を検討し、実習におけるFBの在り方に関しての知見を得ることを目的とした。【方法】 本校における評価実習は2週間の検査測定実習後に4週間にて実施し、ある程度の助言・指導のもと基本的な理学療法評価を実施することができることを実習到達目標としている。本研究では本校理学療法学科2年生(42名)を対象とし、評価実習後にアンケート調査を実施した。実習地の内訳としては病院33名、介護老人保健施設9名であった。アンケート内容は1)FB時間、2)FB項目数、3)学習時間、4)睡眠時間、5)実習評定(4段階)、6)実習に対する自己評価(7項目)とした。6)に関しては5段階尺度にて5を「よくあてはまる」、4を「概ねあてはまる」、3を「どちらともいえない」、2を「あまりあてはまらない」、1を「全くあてはまらない」とし点数化した。アンケート調査からFB時間の平均が87.9±44.6分であったことから、FB時間90分未満(55.2±17.6分:22名)と90分以上(123.8±37.0分:20名)に分け、各調査項目における2群比較を実施した。統計処理はSPSSver16.0にて、t検定およびMann-WhitneyのU検定を用い有意水準はp<0.05未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究の目的、方法、プライバシー保護等について口頭ならびに文書にて説明を行い、十分な理解が得られたことを確認した上で、本研究への参加については本人の自由意思による同意を文書にて得た。【結果】 FB時間90分以上の群において2)FB項目数が有意に高かった(90分未満:4.6±1.7個・90分以上:7.0±4.9個)。また、90分以上の群において6)実習に対する自己評価の一項目である「FB内容を明確化する為に自ら問題点を指導者に確認出来た」の項目の値が有意に低かった(90分未満:中央値3.0・90分以上:中央値2.0)。【考察】 結果からFB項目数が多くなること、またFB時に学生自身がFB内容の明確化の為に自ら問題点を指導者に確認出来ないことで、FB時間が概ね90分以上と長くなることが示唆された。FB項目数が多くなることで、学生自身がFB内容や自らの問題点を的確に捉えることが困難となってしまい、FBにより時間がかかってしまうと考えられる。また、FB時において学生自身がFB内容、問題点を明確化する行動が必要であると考えられ、このFB内容の明確化により、指導者と学生間において学習目標がより明確に設定でき、共有が図れると考えられる。これらの事に関して実習指導者および学生が共通の認識をもってFBが実施されることが望ましいと考えられ、学校教育においてもFBの受け方、また学生がFB時に自らの問題点を明確化し解決できる能力を向上させるよう、学内学習や実習事前セミナーにおいて教育していく必要性があると考えられた。今後の課題としては具体的なFB時間ならびにFB項目数の検討、また指導者に対するアンケート調査を実施し、学生、指導者双方の視点からの検討が必要であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 実習においてFBが効率的かつ効果的に実施されることは、学生の実習における目標達成および理解の向上に繋がると考えられ、また指導者においても指導力の向上、指導負担の軽減に繋がると考えられる。これらのことから、実習におけるFBの在り方を検討することは、理学療法学における学生ならびに教育の質の向上に繋がるのではないかと考える。