理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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臨床実習中の睡眠と身体活動に関する研究
齋藤 信夫石黒 友康
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p. Gb1442

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抄録
【はじめに、目的】 睡眠研究の科学的な成果に基づいて、健康を維持するにはどのような生活パターンを構築すればよいか、という問題が年とともに重みを増している(井上1999)。一般的に臨床実習中の学生は、さまざまの要因から睡眠不足になるといわれているが睡眠時間や睡眠効率などの客観的な報告はほとんどない。そこで実際に臨床実習中と普段の学生生活中の睡眠度と身体活動度を定量的に測定し、実習が睡眠と身体活動に及ぼす影響を明らかにする目的で本研究を行った。【方法】 対象は総合臨床実習に臨む男子大学生7名。年齢は21~30歳(平均23.1歳)であった。睡眠度と身体活動度を計測できる腕時計式小型3軸加速度計、Actigraph(アクチグラフ;ACT,米国A.M.I社製)を非利き手首に装着して1週間の連続した身体活動度と睡眠度を測定した。数値の算出と分析、概日リズムグラフの作成は、ACT専用インターフェースを介し専用ソフトにてパソコン上にて行った。実習中(実習時)のデータ収集は、実習開始から5週間目の1週間として測定し、非実習期間の学生生活中(平常時)の1週間と比較した。測定した指標は、身体活動度(Physical Activity; PA,1分間辺りのカウント数[カウント/min])、睡眠度としての、睡眠時間(Sleep Time; ST,夜間総睡眠時間[min]),睡眠効率(Sleep Efficiency; SE,入床から起床までの時間に対する睡眠時間の割合[%]),睡眠潜時(Sleep Latency; SL,寝つきまでの時間[min]),睡眠覚醒時間(Wake after Sleep; WS,睡眠中の総覚醒時間[min])であった。実習時の1週間分と平常時1週間分の各指標比較の統計的処理には、対応のあるt検定を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 実習を施行する学生と実習施設先指導者に対して十分に説明を行い、いつでもどこでも中止することができる旨も説明し了承を得た後に実施した。健康科学大学倫理委員会の承認を得た。【結果】 計測した5つの指標の平常時と実習時の平均値を以下に記載した。各指標の略号、平常時数値/実習時数値の順で示す。PA;212.8±28.36/218.7±26.35[1/min]、ST;382.0±104.7/355.5±188.1[min]、SE;93.9±5.82/94.0±5.84[%]、SL;15.4±19.7/10.4±8.27[min]、WS;27.3±27.9/23.4±26.5[min]。各指標において統計的な有意差はみられなかったが、実習時に、身体活動度の増加傾向、睡眠時間の減少傾向、睡眠潜時の減少傾向がうかがわれた。1週間の概日リズムグラフの比較からは、実習時にリズムを乱す傾向がみられた。【考察】 臨床実習中のある1週間における睡眠と運動の各指標に統計的有意差はみられなかった。しかし、身体活動度の増加傾向と睡眠時間の減少傾向と睡眠潜時(寝つきの時間)の短縮傾向がみられたことと伴に、概日リズムの乱れの増加傾向があり、実習中の負荷、ストレスなどによる睡眠と身体活動に対する影響が示唆された。今回各指標に有意差がなかったこととしては、男女差、個人差の問題、被験者数の問題、装着時期や期間の問題などが考えられたが、実習指導施設および指導者の臨床実習中の学生に対する過負荷の防止などへの対策・配慮による影響もあると推察した。今後の展望としては対象者数の増加や、実習中の測定期間の長さと時期の検討があげられる。【理学療法学研究としての意義】 学外臨床実習に臨む学生の睡眠と生活パターンを知ることは、臨床実習を進めていく上で重要であり、指導上も役立つと思われる。一般的には、睡眠障害による深刻な社会問題が世界的に増加している今日、理学療法士も睡眠と運動の関係を探究していくことは、臨床における患者指導においても意義あるものと考える。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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