理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-S-03
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セレクション口述発表
地域在住の要支援・要介護高齢者における屋内生活空間評価の臨床的有用性と移動能力との関連
大沼 剛橋立 博幸吉松 竜貴阿部 勉
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抄録
【背景および目的】地域在住高齢者における日常の適度な身体活動は,生活機能の維持・向上や疾病・障害・虚弱の進行を予防するうえで重要である.障害により生活空間が狭小化し,屋内生活空間での活動を主とする要介護・要支援高齢者においては,自宅屋内における生活空間の身体活動を把握し,適度な身体活動を確保する必要がある.そこで本研究は,屋内生活空間の身体活動を簡便に評価できる質問紙指標home-based life-space assessment(Hb-LSA)を開発し,地域在住の要支援・要介護高齢者を対象にHb-LSAの臨床的有用性を検討するとともに,移動能力との関連を検証することを目的とした.【方法】対象は,訪問リハビリテーションを利用する要支援・要介護高齢者37人(平均年齢78.5±7.0歳)であった.Hb-LSAとともに,身体活動(life-space assessment(LSA),離床時間),基本動作能力(bedside mobility scale(BMS)),日常生活動作能力(functional independence measure(FIM)),身体機能(握力,30-s chair stand(CS-30),片脚立位保持時間)を調査した.Hb-LSAは,過去1か月間において,自宅屋内を中心とした生活空間を移動または活動したレベルと,その頻度および自立度を調べた結果を得点化する指標とした.自宅における屋内生活空間は,基点を寝室のベッドとして規定し,生活空間をレベル1:ベッド上,レベル2:寝室内,レベル3:自宅住居内,レベル4:自宅居住空間のごく近くの空間(庭やアパートの敷地内),レベル5:自宅屋外(敷地外)の5つの段階に設定した.これらの各生活空間レベルにおける移動または活動の頻度を,レベル1および2においては,1:1回未満/日,2:1~3回/日,3:4~6回/日,4:日中ほとんど,レベル3から5については,週単位に1:1回未満/週 ,2:1~3回/週,3:4~6回/週,4:毎日,と設定した.各生活空間レベルにおける移動または活動の自立度は,1:介助による動作介助を必要とする,1.5:補助具の使用または介助者による見守りを必要とする,2:補助具の使用および人的介助なし,として調査した.これらの調査結果に基づいて,各生活空間レベルにおける移動または活動の有無,頻度,自立度の得点を積算し,各生活空間レベルの積算値の合計をHb-LSAの代表値とした(得点範囲0-120点).【説明と同意】本研究の実施に際して,研究概要を対象者または家族介護者に対して事前に口頭と書面にて説明し,同意を得た.なお,本研究は杏林大学保健学部倫理委員会の承認(承認番号23-50)を得て実施した.【結果】Hb-LSAの調査時間は平均5分程度であった.Hb-LSAの検査再検査信頼性を検討するために級内相関係数ICCを算出した結果,ICC(1, 1)=0.986であった.また,Hb-LSAは身体活動(LSA:r=0.906,離床時間:r=0.462),動作能力(FIM:r=0.762,BMS:r=0.683),身体機能(握力:r=0.386,CS-30:r=0.531,片脚立位保持時間:r=0.454)の各指標と有意な相関を認めた.Hb-LSAを従属変数,BMSの下位10項目を独立変数とした重回帰分析を実施した結果,BMSの下位10項目のうち「移動」がHb-LSAに対する有意な関連項目として抽出された(標準偏回帰係数:0.749,p<0.001).さらに,移動自立の有無によるHb-LSAの差異を検討するため,全対象者をBMS「移動」が自立と判定された群(移動自立群)と自立ではない群(移動非自立群)の2群に分けてHb-LSAを群間比較した結果,移動自立群(75.8±18.8点)は,移動非自立群(45.7±20.2点)に比べて有意に高い値を示した.【考察】地域在住高齢者の自宅における屋内生活空間の評価指標であるHb-LSAは,指標の再現性が高く,身体活動や動作能力に関する各指標と有意な相関が認められたことから,指標の信頼性および妥当性が確認された.加えて,屋内移動の自立度に群間差がみられたことから,移動能力の低下している在宅高齢者は屋内生活空間の身体活動が低下していることが示された.【理学療法学研究としての意義】生活空間が狭小化している在宅高齢者の屋内生活空間における身体活動が簡便かつ短時間に評価できることは,対象者の活動実態を把握するうえで有用である.今後は,Hb-LSAが移動性の指標として,在宅リハビリテーションの効果判定に用いることが可能か検討する必要がある.
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© 2013 日本理学療法士協会
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