抄録
【はじめに、目的】我々のリハビリ施設では,障害を持った方々が、健やかで質の高い地域生活が遂行できるように,ICFの概念に基づいたリハビリアプローチを実施しており,その効果を,心身機能に対してはFIMを,活動・参加に対してはSF-36を用いることで,客観的に検証している.今回,ICFの概念に基づいた訪問および通所リハビリを,化膿性脊椎炎を呈した症例に対して実施したところ,良好な結果が得られた.ここに,症例に対して実施したリハビリアプローチについて,訪問および通所リハビリのそれぞれの観点より報告する.【方法】症例は,75歳男性,要介護3である.平成22年6月頃,坐骨神経痛と腰背部痛による歩行困難を呈したため,A病院へ救急搬送され,化膿性脊椎炎と診断される.保存療法による疼痛管理およびリハビリ目的に入院加療され,平成22年8月15日に自宅退院される.退院直後より,自宅内でのADLの自立を目標に,当院での介護保険による訪問リハビリが開始される.平成23年4月6日より,能動的な社会参加の継続を目的に,通所リハビリへと移行し,現在に至っている.訪問リハビリは,平成22年8月17日から平成23年3月15日まで実施した.訪問リハビリでは,個別的リハビリと社会的リハビリを実施し,個別的リハビリとして,運動療法およびADL動作へのアプローチを中心に実施し,社会的リハビリとして,通所リハビリへの移行の促しを実施した.通所リハビリは,平成24年4月6日から開始し,現在も継続して実施している.通所リハビリでは,個別的リハビリと集団的リハビリ,社会的リハビリを実施し,個別的リハビリとして,心身機能面の維持を中心としたプログラムを実施し,集団的リハビリとして,屋外歩行プログラムや,脳トレプログラム,創作活動,自主訓練プログラムを実施した.社会的リハビリでは,東日本大震災による被災者支援活動や,利用者およびその家族の自治会活動への参加を促すアプローチを実施した.統計処理は,平成22年8月,平成23年3月,平成24年10月のそれぞれのFIM・SF-36のスコアを,対応のあるt検定により比較した.有意水準は5%未満とした.統計処理には,SPSS16.0Jを用いた.【倫理的配慮】対象者には,書面にて本研究や取り組みによって期待される効果などを除いた,研究の趣旨,内容,個人情報管理方法について十分に説明し,書面にて研究参加の同意を得て実施した.【結果】訪問リハビリ開始時のFIMは71点(セルフケア:16点,排泄コントロール:7点,移乗:10点,移動:3点,コミュニケーション:14点,社会的認知:21点),SF-36の平均点は17.8点(身体機能:5.7,日常役割機能(身体):26.4,身体の痛み:15.3,全体的健康感:20.9,活力:22.5,社会生活機能:21.6,日常役割機能(精神):19.4,心の健康:10.8)であった.訪問リハビリアプローチの結果,平成23年3月15日,FIMは124点(減点項目:浴槽シャワーへの移乗,階段),SF-36の平均点は36.0点(身体機能:23.4,日常役割機能(身体):25.5,身体の痛み:49.0,全体的健康感:40.8,活力:44.1,社会生活機能:24.2,日常役割機能(精神):39.5,心の健康:44.1)まで向上し,自宅内での生活が自立した.平成22年8月とのFIMおよびSF-36の両スコアにおいて,5%未満の有意差が認められた.さらに,通所リハビリアプローチの結果,平成24年10月31日にて,FIMは125点(減点項目:階段)となり,平成23年3月とのFIMのスコアに対して,5%未満の有意差は認められなかった.一方,SF-36の平均点は40.0点(身体機能:30.5,日常役割機能(身体):52.8,身体の痛み:49.9,全体的健康感:43.5は,活力:50.2,社会生活機能:26.5,日常役割機能(精神):48.1,心の健康:41.1)と通所リハビリ移行時と比較して,スコアが向上し,平成23年3月とのSF-36のスコアに対して,5%未満の有意差を認めた.【考察】今回,ICFの概念に基づき,症例に対して訪問リハビリおよび通所リハビリアプローチを実施した.その結果,訪問リハビリでは自宅内での日常生活動作能力の向上に伴い,自宅内生活が自立し,症例自身のQOLも向上した.訪問リハビリから移行した通所リハビリでは,症例主体で心身機能や活動面の維持に対する健康増進活動や社会貢献活動に積極的に参加したことで,社会参加を高い意欲で継続することが可能となりQOLが向上した.これは,我々のリハビリアプローチが,障害の改善や受容のみならず,症例の持つ可能性や能力の開発も行ったことで,症例自身が,障害を克服し,自発的かつ能動的に社会へ1歩を踏み出すことができたためではないかと考える.今後,症例の心身機能面および活動の維持および,さらなる社会参加を促し,アイデンティティの再確立と生きがいの充実を図ることが継続的な課題として挙げられる.