抄録
【目的】わが国は高齢化が進み,2015年には国民の4人に1人(高齢者人口3500万人)が高齢者になると推計されている.このような現状で,元気に自立している高齢者が将来にわたって要介護状態にならないため,日々介護予防への取り組みが行われている.高齢者が日常生活活動制限をきたす原因には,大きく分けて疾病と加齢の2つの要因がある.このうち,要介護の原因は,疾病よりも衰弱や転倒骨折,認知症など加齢による生活の不具合で生じることが多いとされている.そのため,介護予防により身体機能の維持・向上は必須である.これまで,通所施設利用による介護予防の効果についての研究は報告されているが,我々が検索する限り,通所施設利用回数による介護予防の効果の研究については散見される程度である.日々の臨床の中,利用回数の少ない利用者ほど身体機能の低下が目立ち,利用回数の多い利用者ほど身体機能の維持ができている印象を受けた.そこで今回,身体機能の変化を通所施設利用回数に分けて比較検討し,どの程度の利用で身体機能の維持が可能であるかを検討することを目的とした.【方法】対象は,歩行が可能であり検査項目すべてが測定できる,介護保険で通所リハビリテーション施設(以下,通所リハ)を利用する要支援・要介護高齢者64名とした.なお,対象者の条件を統一するため,1年以上継続していない利用者および入院および長期で休んでいる利用者,短期集中リハビリテーション加算中の利用者はあらかじめ対象から除外した.研究デザインは3ヶ月毎に行う体力測定の結果を1年前の結果と比較する後ろ向き研究とした.測定項目は,Timed “Up & Go” Test(以下,TUG), Functional Reach Test(以下,FR), 膝伸展筋力の3項目とした.理学療法は機能低下および能力低下に対して,20分の個別リハビリテーション(以下,個別リハ)を実施した.比較方法は,1月あたりの利用回数による差を検討するため,ショートステイなどの利用で月4回未満の利用者(I群),月4~7回の利用者(Ⅱ群),8~11回の利用者(Ⅲ群),12回以上の利用者(Ⅳ群)の4群に分け比較した.統計学的検討は1年前の体力測定の結果と1年後の体力測定の結果を対応のあるt検定で比較検討した.有意確率は5%未満とした.【倫理的配慮】研究に関しては,研究目的,意義,方法,匿名性について保証することを対象者に説明し,同意書にて承諾を得た.また,プライバシーの保護には十分な配慮のもとで行った.【結果】各群の人数は,I群が11名,Ⅱ群が22名,Ⅲ群が20名,Ⅳ群が11名であった.I群においては,TUG,膝伸展筋力の測定結果が有意に低下し,身体機能低下が確認された.FRにおいては有意差が確認されなかったが,低下傾向であった.Ⅱ群においては,すべての項目で有意差は認められなかったが,1年前の測定結果と同程度であった.Ⅲ群,Ⅳ群においてはすべての項目で有意な改善を認めた.【考察】利用者の身体機能については,月4回未満の通所リハの利用では身体機能の維持が困難であり,週1回(月4~7回)以上で身体機能を維持することが可能であった.また,今回の調査では,週2回(月8回)以上の利用者については,1年前よりも身体機能が改善しているという結果が得られた.これらの結果より,通所リハの利用頻度は利用者の身体機能に影響を及ぼしており,機能の維持・改善のためには,少なくとも週1回以上の利用が必要であることが示唆された.通所リハでは各種プログラムを実施しているため,この結果はそれらの総合的な効果によるものといえるが,身体機能の維持・改善については,個別リハとして実施した理学療法介入の影響が特に大きいと考えられる.つまり,介護予防において理学療法が有効であることを意味しており,理学療法をどの程度の頻度で行えば利用者に対する効果が得られるのかという点について,ケアプランを作成するケアマネージャーに伝えていく必要があると考えられる.しかし,今回の結果は身体機能のみの結果であるため,今後は通所リハ利用によってADLやIADL,生活範囲がどのように変化していくかの検討が必要であると考える.p【理学療法学研究としての意義】通所施設の利用において,月4回未満の理学療法介入では身体機能の低下がみられた.月4~7回の利用では身体機能が維持され,月8回以上の利用では身体機能が改善された.これらの結果から,理学療法介入は介護予防に効果があり,理学療法士は積極的に介護予防に参加する必要があると考えられた.