理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-11
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一般口述発表
在宅要介護高齢者に対する訪問リハビリテーション実施後のBarthel Index改善に関連する要因の検討
齋藤 崇志大森 祐三子大森 豊
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抄録
【はじめに、目的】訪問リハビリテーション(訪問リハ)は、対象者の生活の再建、ならびに、生活の質の向上を促す活動の総称でありその内容は多岐にわたる。その中で、対象者の日常生活活動(ADL)能力の改善を図ることは、訪問リハの重要な役割の1つである。在宅要介護高齢者に対する訪問リハがADL能力に与える影響について、訪問リハ実施後のADL能力の改善を報告する先行研究が散見される。しかしながら、ADL能力の改善に関連する要因を検討した報告は少ない。ADL能力の改善に関連する要因が明らかになれば、訪問リハの適応を考える一助となると考える。本研究では、ADL能力の指標としてBarthel Index (BI)を用い、訪問リハを実施後にBIが改善した者と変わらなかった者の訪問リハ開始時の属性と運動機能、BI合計点を比較検討し、BIの改善に関連する要因を明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は、当事業所から訪問リハを行った在宅要介護高齢者の中で、訪問リハを6カ月以上継続し、BIが改善または維持し、後述するデータに不備がない59名(男性31名、女性28名)とした。なお、訪問リハ開始時点でBIが満点を示す者は対象から除外した。対象者の平均年齢±標準偏差は73.9±11.8歳、介護度は要支援が12名、要介護1-3が43名、要介護4,5が4名であった。主たる疾患の内訳は、脳血管疾患17名、骨関節疾患21名、内科疾患10名、神経筋疾患9名、その他2名であった。カルテ記録から、訪問リハ開始時の対象者の属性〔性別、年齢、主たる疾患名、介護度、障害高齢者の日常生活自立度、医療機関退院から訪問リハ開始までの期間(6カ月以上/6カ月未満)〕と運動機能、BI合計点を後方視的に調査した。運動機能は、等尺性膝伸展筋力体重比(膝筋力)とModified-Functional Reach Test(MFRT)の測定値を調査した。膝筋力は、訪問リハ開始時に低い値を示した方を障害側、高い方を健常側と定義し、障害側の膝筋力(障害膝筋力)と健常側の膝筋力(健常膝筋力)、障害側と健常側の膝筋力の平均値(平均膝筋力)を調査した。BI合計点については、訪問リハを開始してから6カ月後の値も調査した。統計解析は、対象者を2群〔6カ月後の再評価においてBI合計点が上昇した者(改善群)、変わらなかった者(維持群)〕に分け、訪問リハ開始時の属性と運動機能、BI合計点を単変量解析(χ2乗検定、t検定、Mann-Whitneyの検定)を用いて群間比較した。次に、BIの改善に影響を与える要因を明らかにするため多重ロジスティック回帰分析を行った。従属変数はBIの改善(0=維持群、1=改善群)、独立変数は単変量解析で有意差を認めた変数とし、年齢、性別は調整変数として強制投入した。統計解析には、PASW Statistics 18 を用い、両側検定にて危険率5%未満を有意水準とした。【倫理的配慮、説明と同意】所属会社の倫理規定に従い、被験者に対して事前に本研究の目的や内容等を説明し同意を得た。【結果】改善群(38名)と維持群(21名)の比較の結果、群間で有意差が認められた項目は、医療機関退院から訪問リハ開始までの期間〔6カ月未満の人数:改善群は18名、維持群は4名)と訪問リハ開始時のBI合計点(改善群:69.6±13.2点、維持群:79.5±16.7点)であり、運動機能に有意差を認めなかった。多重ロジスティック回帰分析の結果、BIの改善に独立して関連する要因は「医療機関退院から訪問リハ開始までの期間が6カ月未満」、「訪問リハ開始時のBI合計点」であり、オッズ比はそれぞれ4.47(95%信頼区間1.09-18.3)と0.93(95%信頼区間0.89-0.99)であった。【考察】BIの改善に関連する要因は、医療機関退院から訪問リハ開始までの期間が6カ月未満であること、訪問リハ開始時のBI合計点が低いことであった。医療機関から自宅へ退院した後の一定期間は生活パターンが崩れ生活が不安定となる「生活混乱期」と表現されることがある。改善群の対象者は、生活混乱期にあり、生活パターンが崩れていた結果としてBIの合計点が低下していた者が多く含まれていたと推測された。【理学療法学研究としての意義】医療機関退院からの期間が6カ月未満であり、BIの合計点が低い在宅要介護高齢者は、訪問リハ実施後にBIが改善する可能性があり、このような要因を有する者は訪問リハの適応を積極的に考える必要がある。ただ、冒頭でも述べたように、訪問リハの内容は多岐にわたりBIの改善のみが目的ではない。本研究の結果は、上記の要因を有さない者に対する訪問リハの適応を否定するものではない。
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© 2013 日本理学療法士協会
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