抄録
【はじめに、目的】2010年1月から2012年1月の約2年間、青年海外協力隊(以下、協力隊)として中国の錫北人民医院リハビリテーション(以下、リハ)科に理学療法士として派遣された。現地スタッフと共働しながら、臨床指導やシステムの向上、リハ普及に努めた。活動終了前にこれまでの活動と成果を配属先と共有すると同時に、配属先スタッフが協力隊の派遣や活動に対し、どう評価しているかを知ることを目的に、アンケートを実施し以下の通りまとめた。【方法】評価方法は紙面アンケートを用い、自由記載にて実施した。対象はリハ科スタッフ30人とし、内訳は治療師15人(PT10・OT1・物療2・実習生2)と他職種15人(医師5・看護師9・院長1)である。またアンケート内容において、治療師と他職種で一部質問項目を変え、協力隊派遣以降の変化や交流状況、活動に対する評価などについて質問した。また集計は治療師と他職種に分けて行った。【倫理的配慮、説明と同意】今回の報告に当たり配属先の病院職員に対して十分説明を行い、同意を得た。その際、任意の調査であり、それによって業務の遂行に一切の不利益が生じないことを説明した。【結果】まず治療師の結果は、協力隊との交流期間平均1年2カ月、交流頻度は非常に多い3人、多い3人、普通8人、少ない1人となった。協力隊赴任以降、環境やシステムでの変化として、OTの開設、PT記録の改善、自己の知識や技術面での変化は、評価が詳細になった、PT治療の向上、という回答が多かった。協力隊が実施した講義に対する評価は、内容が豊富、わかりやすい、また臨床指導に対する評価として、定期的に行う、自ら模範となり行う、であった。協力隊との交流で困難な点は、専門的な会話、スムーズに図れない、という回答があった。配属先の今後の改善点として、OT・ST治療、スタッフの連携、という回答であり、後任の協力隊は必要か?という項目に対し、全員が必要と回答し、理由として配属先への手助けが大きい、新しい理念を学びたい、であった。 次に他職種の結果は、協力隊との交流期間平均1年8カ月、交流頻度は多い6人、普通7人、少ない2人となった。協力隊と共同で実施した活動として、科内の業務管理、カンファレンスでの意見交換、が挙がり、協力隊赴任以降リハ科の変化として、患者数の増加、患者や家族の満足度向上、であった。協力隊の活動に対する評価は、仕事に対しまじめ、責任感が強い、が挙がり、協力隊との交流で困難な点は、意思疎通に時間がかかる、という回答があった。配属先の今後の改善点として、チーム連携、各職種の専門性、が挙がり、後任の協力隊は必要か?という項目に対し、全員が必要と回答し、理由として相互交流により向上したい、新しい技術を取り入れたい、であった。【考察】協力隊の派遣以降、リハ科のシステムやスタッフの治療知識や技術において向上したという意見が多かった。治療師において、個人の治療技術や勉強面、PT・OT内のシステムの変化や向上した点が多く挙がった。治療師は協力隊との交流頻度が比較的多く、患者治療を共に実施しながら、主に講義や臨床指導を通じて治療の考え方や方法を伝達した。講義に関して、不足している知識やスタッフから要望があった内容を取り上げ、スライドを作成した。臨床指導に関して、実際に患者治療を実施し、問題点や治療の展開方法、治療手技など直接伝達しながら行った。よって治療の考え方や方法が浸透し、同僚の治療に取り入れられるようになった結果、知識や技術向上につながった。これにより治療効果も上がり、患者や家族の満足度増加が患者数の増加につながったと考える。 次に他職種において協力隊赴任以降の変化として、各職種の水準の向上、治療内容や効果の向上、患者数の増加が挙がった。院長とは主にPT記録用紙の改定や早期リハの普及などシステムや科内の状況について話合った。医師と看護師は回診やカンファレンス時に意見交換し、また講義の際も参加を促し治療師と共にリハについて勉強した。よって他職種においてもリハ知識の向上につながったと考える。途上国では医療やリハ分野に関する専門的な知識や技術を有する人材が不足し、一方で専門職の質の向上が急務であるという報告から、リハ発展途上国での活動において、現地のスタッフと協力しリハ向上に努めることが重要である。【理学療法学研究としての意義】協力隊の活動に対し、意思疎通が困難という問題がありながらも、交流にとても友好的であった。後任の協力隊の必要性に関しても、全員が必要であるという回答から、継続的な交流を望んでいることがわかった。これより知識や技術向上したい、リハを発展させたいという意識は国内外を問わず共通していると考える。今後の理学療法士の活動展開として、リハ発展途上の海外の治療師を対象とした、教育や技術協力といった展開方法が考えられる。