理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-09
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一般口述発表
CRPS機能障害評価法の妥当性の検証
臨床適応に向けて
白井 誠田中 孔明碓井 千晴大友 篤田邉 豊
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抄録
【目的】複合性局所疼痛症候群(Complex Regional Pain Syndrome:CRPS)の定義は,侵害性事象に引き続いて発症し,予想される通常の創傷治癒と比べて不釣合いな痛みを呈し,1つの神経支配領域を越えて拡がり、経過中にさまざまな病態が出現する症候群とされている.臨床では不釣り合いな痛みを主訴とするため,臨床像の解釈に難渋する.われわれはこれまでCRPSのリハビリテーション評価であるCRPS機能障害評価法の開発を進め,痛みの理学療法学研究会において内容的妥当性を検討し,2010年に学会発表,2012年には論文発表を行ってきた.本評価法は,身体領域(Body Region:BR)における機能障害の拡がりと複合について評価することを特徴としている.CRPSの機能障害評価に関する先行研究では,その拡がりと複合を評価する標準的な評価法は見当たらない.そのため,この観点において併存的妥当性の検証を行うことは難しい.今回,CRPS機能障害評価法の臨床適応に向けて,作業仮説「CRPSの機能障害の拡がりや複合は自発痛の強度や痛みによる動作の困難感と関連しているが,心理的側面(不安や抑うつ傾向)とは関連していない」を立案し,構成概念妥当性の検証を行った.【方法】CRPS患者18名(男性8名,女性10名),平均年齢42.8歳(21~69歳),きっかけとなる事象からの平均期間34.4ヶ月(1~192ヶ月)を対象とし,横断的にCRPS機能障害評価法,視覚アナログスケール(Visual Analogue Pain Scale:VAS):自発痛,疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS):痛みによる動作の困難感,外来患者不安抑うつテスト(Hospital Anxiety and Depression Scale:HAD):不安傾向(HAD・A),抑うつ傾向(HAD・D)の評価を行った.CRPS機能障害評価法では感覚,運動,姿勢の3つの観点から,質問紙による症状と検査による徴候の評価を行い,全身14のBRにおける陽性数を算出し,BR数,拡大数,複合数を結果とした.これらの指標とVAS,PDAS,HAD・A,HAD・Dの4評価の間でスピアマンの順位相関係数を求めた.統計処理にはSPSS ver.20.0を用い,有意水準は5%未満とした.【説明と同意】本研究は当院の倫理委員会において承認を受け(承認番号25番),各対象者に研究の趣旨と目的を説明し,同意を得て実施した.【結果】1)CRPS機能障害評価法(中央値±四分位偏差)では,BR数:症状11.5±3.0/徴候11.5±6.3,拡大数:症状6.0±1.8/徴候7.0±2.4,複合数:症状9.0±3.8/徴候5.5±4.8となった.2)他の評価(平均値±標準偏差)では,VAS:68.0±26.1,PDAS:26.4±11.7,HAD・A:6.6±3.5,HAD・D:6.6±3.8となった.3)相関係数では,拡大数の症状とPDAS(r=0.453,p=0.059),複合数の症状とPDAS(r=0.432,p=0.073)の間にはそれぞれ相関が認められなかったが,その他のBR数,拡大数,複合数の症状および徴候とVAS,PDASには相関が認められた(VAS:r=0.469~0.576,p=0.012~0.049,PDAS:r=0.490~0.690,p=0.002~0.039).一方,BR数,拡大数,複合数の症状および徴候とHAD・A,HAD・Dとの間には相関が認められなかった(HAD・A:r=-0.059~0.292,p=0.240~0.972,HAD・D:r=-0.257~0.024,p=0.303~0.975). 【考察】CRPS患者18名を対象とした本研究の範囲において,作業仮説が立証され,CRPS機能障害評価法の構成概念の妥当性が示された.CRPS患者の主訴である不釣り合いな痛みを解釈する上で,機能障害の拡がりと複合を評価することは有益であると考える.その意味合いにおいて,CRPS機能障害評価法の臨床適応を進める価値があると解釈できる.【理学療法学研究としての意義】CRPSの機能障害において,拡がりと複合を評価する標準的なリハビリテーション評価は見当たらない.この先駆けとして,CRPS機能障害評価法の臨床適応を進める意義は高いと考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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