理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-01
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一般口述発表
膝関節屈曲アシスト装具による脳卒中片麻痺者への歩容改善効果の持続性について
相本 啓太渡邉 祐美子太田 進
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抄録
【はじめに、目的】我々は、先行研究において脳卒中片麻痺者の歩行時フットクリアランス改善を目的として、膝関節屈曲アシスト装具による効果の検討を行った。膝関節屈曲アシスト装具は、セラチューブの弾性力により膝関節屈曲をアシストする仕組みとなっている。フットクリアランスの改善を得ることはできなかったが、足関節底屈角度の減少傾向、最大歩行速度の増大などが得られた。また装具歩行中歩きやすく、その歩きやすさは装具を外した後も1日程度続いたと感想を得た。そこで本研究は、膝関節屈曲アシスト装具による効果が、装具を取り外した後も持続するかという歩容改善効果の持続性についての検討を目的とした。【方法】対象者は、脳幹梗塞発症後約6ヶ月の65歳男性であり、改定長谷川式簡易認知評価スケールは15点で、Brunnstrom Recovery StageはStage 5であった。FIM移動はシルバーカー使用にて6点であった。歩行分析は、歩行路を 9mとし、歩行路中央から垂直に4m のところに、デジタルカメラ(240Hz)のレンズ中心が床から 85cm(身体の中心が画面中央の高さ)となるように設置し、麻痺側矢状面の動画撮影を行った。反射マーカーを右大転子、右膝大腿骨外側顆、右外果、右第5中足骨骨頭に貼付し、右膝関節角度を右大転子、右膝外側関節裂隙、右外果でなす角度で定義し、フットクリアランスを右第5中足骨骨頭によって計測した。計測は、通常歩行(歩行1)を計測し、装具を装着して約3分(100m)の歩行練習を行った後、装具歩行(歩行2)の計測を行った。装具を外しての歩行を装具歩行計測終了後5分後(歩行3)、10分後(歩行4)に行った。それぞれの歩行計測は、T字杖を使用し3回ずつ行った。二次元動作解析システムToMoCo-Liteを使用し、膝関節角度、フットクリアランスを求め、1歩行周期の正規化後、各歩行3回の平均値を求め、代表値とした。【倫理的配慮、説明と同意】研究実施前に主治医に許可を得て、本人・家族に本研究の利益、不利益を文書と口頭で説明し、同意を得て行った。【結果】遊脚期の膝関節最大屈曲角度は、歩行1:42.2°歩行2:43.1°歩行3:45.9°歩行4:42.8°であった。歩行3が最も大きく、その他は同程度であった。フットクリアランスの最大値と、転倒に関与するとされる遊脚中期から後期にかけての最小足部クリアランスは、それぞれ歩行1(3.7cm、0.8cm)、歩行2(4.2cm、2.3cm)、歩行3(4.9cm、3.1cm)、歩行4(3.7cm、1.9cm)であった。患者からは、「歩きやすさは、全部同じくらい」との感想を得た。【考察】歩行2は、歩行1と比較して最大膝関節屈曲角度に著変はなかったが、最小足部クリアランスの増大がみられた。先行研究においてフットクリアランスは、遊脚期前半に着目して考察を行った。しかし、転倒に最も関連するのは遊脚中期から後期にかけての最小足部クリアランスと報告されている。先行研究においても最小足部クリアランスは改善がみられていた。セラチューブの弾性力により、先行研究と同様の結果が得られたと考えられた。歩行3では、遊脚期に膝関節が最も屈曲しており、遊脚期はほぼ全体を通じてフットクリアランスが最も大きい傾向にあった。装具による膝関節屈曲効果が残存している効果が大きいと考えられたが、歩行2よりも大きな値となった。これは、装具自体の重さや膝関節を圧迫されることによる動かしにくさが、なくなったことによる影響があると考えられた。歩行4は歩行3と比較して、フットクリアランスが減少傾向にあった。装具による膝関節屈曲の残存効果減少と、通常の理学療法プログラムと同等かそれ以上の運動量を実施したことによる疲労による影響と考えられた。患者の感想は、すべて同じ歩きやすさということであり、歩きにくくなっていない状況で、フットクリアランスが改善しているのは、有意義であり転倒リスクを下げる可能性があると考えられた。本対象者は、歩容の日間差が著明であり、装具を外しての長時間効果の検討を行えないと判断した。運動学習前における行動変化の観察に限定して行い、翌日以降の歩行分析を行わなかった。今後は、装具使用時間や装具を外しての効果持続時間の検討を行なっていく。【理学療法学研究としての意義】膝関節屈曲アシスト装具を外した後も、脳卒中片麻痺者のフットクリアランス改善効果が一定時間持続し、転倒リスクを下げる効果的な歩行練習を実施できる可能性が考えられた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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