理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-42
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ポスター発表
他動運動における知覚対象の違いおよび対象識別の有無が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響 経頭蓋磁気刺激による運動誘発電位を用いた検討
富永 孝紀市村 幸盛大植 賢治湯川 喜裕平本 美帆森岡 周
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抄録
【目的】体性感覚は,巧みに道具を扱うために重要な役割を果たす.また,臨床において運動機能回復を目的に体性感覚を利用することは多い.体性感覚と一次運動野(M1)の神経活動動態の関係ついて,皮膚電気刺激によるM1 の興奮性増加(都丸2003),接触の有無と運動イメージとの関係におけるM1 の興奮性増加(Mizuguchi 2011),触覚識別の有無における感覚運動野の活性化(村上 2008)などの報告がある.しかし,他動運動による知覚対象との関係とM1 の興奮性の変化についての報告は少ない.今回,健常成人を対象に他動運動における知覚対象の違いおよび対象識別の有無がM1 の神経活動動態に及ぼす変化について,経頭蓋磁気刺激(TMS)を用い検討した.【方法】対象は,健常成人9 名(男性3 名,女性6 名,年齢25.7 ± 3.6 歳)とした.被験者は,椅子座位とし,両上肢は正面に設置したテーブル上に前腕回内位,手指軽度屈曲位で安静を保持するよう指示した.課題は,表面素材が異なる4 種類の平面パネル(接触条件)と物体形状が異なる4 種類の対象物(形状条件)を使用し,各課題前に被験者に提示した上で記憶するように指示した.課題は,4 課題を設定し,検者が被験者の右第3 指を保持してすべて他動運動で接触,形状条件を実施した.課題1 は,接触条件におけるパネルを1 種類のみ触れさせる課題とした.課題2 は,接触条件における4 種類のパネルからランダムに検者が選択し,被験者にどの素材を触れたか識別させることを要求した.課題3 は,課題1 の手順と同様に形状条件で実施し,課題4 は課題2 の手順と同様に形状条件で識別させることを求めた.課題中は,被験者から右手が見えないように台を設置し実施した.TMSは,各課題において磁気刺激装置(日本光電;SMN-1200)と8 の字平型コイルを用い,運動誘発電位(MEP)は,誘発電位・筋電図検査装置(日本光電;Neuropack MEB-9400)にて,右第1 背側骨間筋から記録した.刺激のタイミングは,対象物に触れさせ他動運動開始から約2 秒後に左M1 の手指領域の直上を刺激した.左M1 への刺激は,被験者のMRI画像より脳表3 次元画像を作成し,光学系ナビゲーションシステム(Rouge Resarch Inc;Brainsight2)を用いて,解剖学的に正確に刺激部位を決定し実施した.刺激強度は,安静時運動閾値の110%とし,安静時及び各課題中のMEPを10 〜15 回ずつ測定し,MEPの振幅値をもとに安静時に対する各課題時のMEP振幅比を算出した.統計学的処理は,各課題を要因としたMEP振幅比の値を一元配置の分散分析と,Tukey,s HSD検定を用いて比較し,危険率5%を有意性の基準とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,村田病院臨床研究倫理審査委員会の承認を得て,被験者に十分な説明を実施し,同意書にて同意の得られた対象者に実験を行った.【結果】MEP振幅比は,課題1;2.1 ± 1.2,課題2;3.7 ± 1.9,課題3;3.4 ± 1.4,課題4;5.3 ± 2.4 であり,課題の違いによって変化が生じることが示された(F (3,32)=4.23,p<0.05).課題4 におけるMEP振幅比は,課題1,課題3 に比較して有意な高い値を示した(p<0.05).その他の課題間におけるMEP振幅比には,有意な変化は認められなかった.【考察】今回,物体形状を識別させる課題4 においてMEP振幅比が高い値を示した.物体形状を認識するためには,主に触覚や運動覚の統合が要求される.感覚野からM1への入力は,3野,1野あるいは3野,1野,2野といった階層処理を終えた情報が,機能連結していると考えられている.そのため一次体性感覚野の階層処理が必要と考えられる課題4 は,主に触覚の情報が処理される課題1 に比較して左M1 の神経活動動態の興奮性を高めたと考えられる.さらに,物体形状を識別するということは,感覚情報に対して注意を向けるといった能動的触覚(active touch)の要素を含む.一次体性感覚野は,能動的触覚に際し活性化することが報告されており,課題3 に比較しより能動的な要素をもつ課題4 は,一次体性感覚野の活性化に伴ない左M1の神経活動動態の興奮性を高めたと考えられる.また,その他の課題間には有意な差は認められないものの,識別を要求する課題2,4 において左M1 の神経活動動態の興奮性を高める傾向が示唆された.【理学療法学研究としての意義】本研究は,健常人を対象とした体性感覚とM1 の神経活動動態の変化を検討したものであるが,今後の中枢神経疾患におけるM1 の神経活動動態を検討する上で基礎的な指標となる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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