理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-33
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ポスター発表
人工股関節全置換術前と術後早期における身体機能変化について
手島 礼子塩田 悦仁鎌田 聡吉村 ゆかり小谷 尚也矢次 彩戒能 宏治河村 ありさ
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抄録
【はじめに、目的】当院では人工股関節全置換術(以下THA)は術後荷重制限なく歩行開始となり,ほとんどの症例が2週間前後で転院となる.そこで術前と術後1週・2週での身体機能の推移を歩行速度と合わせて比較検討し,若干の知見を得たので報告する.【対象と方法】対象は2011.8~2012.10に当院で後外側アプローチによりTHAを施行した股OAの患者のうち13例13股(男性5股,女性8股,平均年齢62.4±8.9歳)とした.検査項目は筋力,股関節可動域(以下股関節ROM),疼痛検査,10m歩行とし,術前・術後1週・術後2週に実施した.筋力はHand-Held Dynamometer(日本Medix社製,以下HHD)を使用して股関節外転・屈曲,膝関節伸展の筋力(N)を測定した.測定肢位は,股関節外転は仰臥位で股関節外転・回旋・屈伸0°,股関節屈曲は座位にて股関節・膝関節屈曲90°,膝関節伸展は股関節90°・膝関節屈曲60°とした.力を受けるHHDセンサー部の位置は,股関節外転は大腿遠位部外側,股関節屈曲は大腿遠位部前面,膝伸展は下腿遠位部前面とし,ずれないようにセンサー部をベルト固定した.測定は最大等尺性筋力を2回測定し,その最大値を体重で除した筋力体重比(N/kg)を算出した.股関節ROMは背臥位にて内旋以外の角度を測定した.疼痛はVisual analogue scale(以下VAS)を用い術側股関節の疼痛を評価した.10m歩行は杖歩行にて実施した.統計学的処理はWilcoxonの符号付順位和検定を使用し,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者には検査実施前に研究についての説明を行い,同意を得た.【結果】術前と比較して術後1週で有意に改善したのは(術前→1週[平均値],P値の順に記載),非術側膝伸展筋力体重比(2.9±1.0→3.6±1.0N/kg;p<0.05),疼痛(6.3±3.2→4.2±1.8;p<0.05).有意に低下したのは術側股関節外転筋力体重比(1.9±0.9→1.3±0.7N/kg;p<0.05),術側股関節内転ROM(12.3±5.3→4.2±4.0°;p<0.01),両股関節伸展ROM(術側:6.9±9.5→-1.9±6.3°;p<0.01,非術側:15.8±8.4→11.9±10.3°;p<0.01),10m歩行速度(74.12±14.4→49.50±11.98m/min;p<0.02)であった.統計学的有意差は認められなかったが,その他の検査項目は術前と比較して術後1週では低下傾向にあった.術後2週で有意に改善したのは(術前→2週[平均値],P値の順に記載),非術側膝伸展筋力体重比(2.9±1.0→4.2±1.4N/kg;p<0.05),疼痛(6.3±3.2→2.8±1.8;p<0.05).有意に低下したままであったのは術側股関節伸展ROM(6.9±9.5→0.4±5.9°;p<0.01),10m歩行速度(74.12±14.4→59.81±11.52m/min;p<0.02)であった.有意差はなく低下傾向だったのは非術側股関節伸展・内転ROMで,その他すべての検査項目で改善傾向にあった.【考察】本研究では術後1週間という短期間で,疼痛と非術側膝伸展筋力体重比が有意に改善していた.これは筋力測定時に,疼痛の改善により筋出力を発揮しやすくなったことが非術側膝伸展筋力向上に影響を与えたと考える.対馬は股関節症患者における歩行速度低下の原因に股関節伸展や回旋ROM制限を挙げており,本研究結果と一致している.THA術後は荷重制限はないが,術後1週では跛行の原因の1つとされる股関節外転筋力が術側では有意に低下し,その他の筋力や股関節ROMも低下傾向でバランスの悪い歩行である.そのため術後1週までは歩行器などを使用し下肢の負担を軽減した歩行練習を行い,術後1週から2週にかけて術前よりも筋力や股関節ROMは改善傾向にあることから,杖歩行開始時期は術後1週以降が望ましいと考えた.【理学療法研究としての意義】以上の結果からTHA術後患者は,術後2週で疼痛,下肢筋力,股関節屈曲・外旋ROMは術前よりも改善傾向にあるが,歩行速度改善には股関節伸展ROMの拡大や変化した身体構造に適応した動作能力の獲得が必要であることがわかった.これらの結果をふまえ術後早期より股関節・骨盤周囲の可動性向上を意識したアプローチや身体機能の改善状態を考慮した適切な理学療法を進めていく必要があると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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