理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-07
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ポスター発表
跨ぐ、踏む動作を加えたTUGに関する予備的研究
鳥居 真己間瀬 浩之篠田 真志櫻井 泰弘平井 達也
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キーワード: 高齢者, 転倒, TUG
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抄録
【はじめに、目的】 転倒を予測するための指標として、Timed Up & Go Test(以下TUG)は高い信頼性、妥当性が明らかにされている(島田ら、2006)(橋立ら、2005)。しかしながら、TUGでは、転倒につながる失敗(たとえば、跨ぐ際に躓く)を直接評価しない。マンパワーや測定時間の少ない地域・自治体での介護・転倒予防事業の際には、多くの指標を測定できないため、転倒を直接予見でき得る行動を含んだ評価が望ましい。そこで、我々は、TUGに跨ぐ、踏む動作を加えたmodified TUG(以下mTUG)を考案した。本研究では予備的調査として、健常若年者とデイ利用者で比較することと、要介護認定者の区分別でTUGとmTUGに差に違いが生じるかを調査することを目的とした。【方法】 対象者は、健常若年者16名(若年群:男性9名、女性7名、平均年齢22.2±3.6歳)、要介護認定者14名(介護群:男性5名、女性9名、平均年齢81.6±5.3歳、要支援1、3名;要介護1、5名;要介護2、5名;要介護3、1名)で、独歩またはT字杖使用にて歩行可能で、跨ぐ、踏む動作が可能である者を対象とした。また重度の認知機能障害および神経学的疾患を有し、測定が実施困難である者は除外とした。TUGの測定方法は、Podsiadlo(1991)の方法に準じ、座位から立ち上がり3m先のコーンを左廻りで戻ってきて着座するまでの時間を測定した。また、mTUGの測定方法は、上記TUGの方法に加えて、椅子から1m先に青い線、2m先に赤い線を引き、対象者に「青い線は踏む」、「赤い線は跨ぐ」ことを教示し、TUGと同様の時間を測定した。試行の途中で間違えた場合、止まることなくそのまま試行を続けるよう教示した。TUG、mTUGともに心因的要素を取り除くため、全て最大歩行条件で実施した。測定前に口頭と模倣動作にて説明し、各課題を3回ずつ測定した。TUGとmTUGの順は、対象者毎にカウンターバランスした。また、転倒の危険性に配慮し、TUG測定時に、検者1名を補助として配置した。統計学的解析は、各対象者におけるTUG、mTUGの3回の測定時間の平均値を従属変数とし、全対象者にて対象者要因(若年群、介護群)×テスト要因(TUG、mTUG)、介護群を対象にして要介護度要因(要支援1、要介護1、要介護2,3)×テスト要因(TUG、mTUG)で二元配置分散分析を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院倫理委員会の承認(承認番号:24-002)を得た後に実施した。対象者には本研究の主旨および倫理的配慮について口頭にて説明し、本人の同意を得た方のみ測定した。【結果】 若年群のTUG(平均時間±標準偏差)は4.4±0.8秒、mTUGは4.7±0.8秒、介護群では、TUGは15.4±4.5秒、mTUGは18.7±7.4秒であった。分散分析の結果、介護群は若年群よりTUG(F(1,54) = 45.0、p < 0.01)、mTUG(F(1,54) = 70.6、p < 0.01)とも有意に遅かった。対象者要因とテスト要因に有意な交互作用を認め(F(1,27) =7.7、p < 0.01)、若年群では、TUGとmTUGに有意差はなかった(F(1,27) < 1)が、介護群ではTUGとmTUGに有意差を認めた(F(1,27) =18.7、p < 0.01)。介護群のみの分析の結果、要介護度要因に有意な主効果は認められなかった(F(2,11) < 1)。一方、テスト要因に有意な主効果が認められた(F(1,11) =7.2、p < 0.05)。要介護度要因とテスト要因に交互作用はなかった(F(2,11) < 1)。【考察】 本研究の対象者要因とテスト要因の分散分析の結果、交互作用が認められたことから、TUGとmTUGが異なる機能を反映する可能性が示唆された。つまり、mTUGはTUGの立つ、歩く、転回する、座るに加え、跨ぐ、踏むが要求されることから、視覚運動制御やそれを実現するためのバランス能力を要し、それらの機能の低下を反映したかもしれない。また、跨ぐ、踏むという正確性を要求する課題に注意が向き、歩行のスピードが落ちるというトレードオフ効果も含んでいた可能性も考えられた。要介護度別でTUGとmTUGを比較したところ、TUGとmTUGとの間に有意な差が認められなかった。本研究では、対象者が少ないことや対象者の属性が統制できておらず、整形外科的疾患患者、中枢疾患患者など様々な条件の対象者を含んでいたことが問題であったと考えられた。今回は予備的調査であり、今後、年齢をマッチさせたコントロール群との比較や、mTUGの妥当性、および転倒を反映する指標となるかについて精査していく必要性がある。【理学療法学研究としての意義】 本研究結果より、跨ぐ、踏む動作を取り入れたmTUGはTUGとは異なる機能の問題を検出できる可能性が示唆された。mTUGは高齢者の転倒要因をより効率よく評価しなければならない現場において貢献するかもしれない。
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© 2013 日本理学療法士協会
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