理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-S-01
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セレクション口述発表
入院期高齢心不全患者に対する歩行能力を維持するための歩行開始時期の検討
小澤 哲也齊藤 正和安達 裕一堀 健太郎上脇 玲奈塩谷 洋平中澤 麻里子坂本 純子秋保 光利鈴木 秀俊岡村 大介
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抄録
【はじめに】 2011年に改訂された「急性心不全治療ガイドライン」では患者の病態が安定したら可能な限り早期に離床を進めることが推奨されている。一方、高齢者ほど身体機能の予備能が低く、早期離床が推奨されるが、明確な開始基準は示されていないのが現状である。そのひとつの要因として、急性心不全の病態や治療内容が多様であることがあげられる。そのため、離床開始時期を検討する際には急性心不全の病態や治療内容を統制する必要がある。近年、収縮期血圧(sBP)を指標に急性心不全の病態を分類し、治療方針を決定するクリニカルシナリオ(CS)分類という考え方が推奨されている。CS分類はsBPと病態からCS1(sBP>140mmHg)、CS2(sBP100~140mmHg)、CS3(sBP<100mmHg)、CS4(急性冠症候群)、CS5(右心不全)の5群に分類する方法である。我々は、CS分類に基づいてCS1から3群の急性期治療、入院期心臓リハビリテーション(心リハ)進行状況を比較した結果、CS3群は CS1、2群と比較して、急性期治療が遷延することにより、心リハ進行が遅れることを報告した(第18回日本心臓リハビリテーション学会)。そのため、CS1、2群はCS3群と分類して入院期心リハの開始時期や心リハ進行を検討する必要があることが分かった。そこで本研究は、CS1、2群の高齢心不全患者を対象とし、入院期心リハにおける歩行開始時期の目安を検討した。【方法】 対象は研究の趣旨に同意が得られた4施設にて平成23年1月から平成24年8月までに、心不全の診断名で入院し、主治医から入院期より心リハが処方された65歳以上の高齢心不全患者267例(男性143例、女性124例、年齢81±7歳、左室駆出率42±15%、NT-pro BNP 9687±10479 pg/mL)とした。なお、CS3~5、入院中の脳梗塞発症や死亡患者、入院前から屋内歩行に介助を必要とした患者は除外した。調査項目は患者背景因子、急性期治療、心リハ進行状況、退院時屋内歩行自立の有無とした。解析方法は退院時屋内歩行自立の有無を予測する歩行開始病日のカットオフ値をROC曲線を用いて感度と特異度から算出した。なお、入院日を第1病日と定義した。すべての統計学的解析はSPSS19.0(IBM社)を用いて、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の実施にあたり、当院倫理委員会の承認を得た。また、本研究への参加に対して事前に研究の趣旨や内容、さらには調査結果の取り扱い等に関して説明し同意を得た。【結果】 急性期治療として、非侵襲的陽圧人工呼吸器20%、気管内挿管を伴う人工呼吸器6%、血液濾過透析0.7%、補助循環装置0.4%使用されていた。また、薬物治療の使用率はイノバン2%、ドブタミン7%、ノルアドレナリン1%、カルペリチド63%であった。心リハ進行状況は、端座位開始病日4±5日、立位開始病日4±5日、歩行開始病日5±5であった。また、退院時に歩行自立していた患者は全体の78%であった。退院時歩行自立の有無を分ける歩行開始病日のカットオフ値は4日(感度0.65、特異度0.62、陽性適中率29%、陰性適中率86%、AUC 0.61、p<0.01)であった。退院時歩行自立の有無を従属変数、年齢、性別、歩行開始のカットオフ値4病日以内を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った結果、年齢(オッズ比1.12、p<0.01)と歩行開始4病日以内(オッズ比2.29、p<0.05)が有意な因子として抽出された。【考察】 近年、心大血管疾患術後や急性心筋梗塞後と同様に入院期心不全患者に対しても、早期離床の概念が推奨されている。しかし、入院期心不全患者の心リハ開始時期の目安を具体的に示した報告は少ない。そこで本研究は退院時歩行自立を維持するという観点から、入院時にCS1、2群に分類された65歳以上の入院期高齢心不全患者における歩行開始病日の目安について検討した。退院時に歩行が自立しているか否かに関わる歩行開始病日のカットオフ値は入院4病日目が感度、特異度、陰性適中率からも有用であると考えられた。また、今回は高齢心不全患者に対象を限定しているにも関わらず、年齢が有意な因子として抽出された。そのため、高齢かつ歩行開始が入院4病日目以上に遅延する可能性が高い患者は、心不全治療上、立位や歩行などの積極的な離床が実施できない場合でも、ベッド上での運動などを早期に取り入れていくことが必要であると考えられた。【理学療法研究としての意義】 本研究の結果より、入院期高齢心不全患者に対する歩行開始時期の目安が示された。具体的な日数を示すことにより、歩行能力低下のリスクを把握することが可能となるため、臨床上極めて有用であると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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