理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-14
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一般口述発表
高齢者における歩行時の速度変化が骨盤および体幹回旋運動に及ぼす影響
斉藤 清次中島 弘貴村木 里志
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抄録
【目的】歩行のバイオメカニクスの重要な要素の1 つとして,水平面の骨盤回旋運動が重心の上下動の減少に貢献していることが挙げられる。また,歩行中の骨盤と体幹回旋運動はそれぞれ逆回旋をすることでバランスを保持すると言われている。臨床における高齢者の歩行の観察では,歩行速度の低下だけでなく,骨盤回旋運動の減少や体幹の左右動揺の出現に気付くことが多く,骨盤や体幹機能の変化が起きていることが予想される。これまでに高齢者における歩行時の骨盤と体幹回旋運動の基礎的な知見は得られていない。また,骨盤と体幹回旋運動が,歩行速度の変化によってどのように変化していくかを知ることは理学療法に必要なことであると考える。そこで本研究では,高齢者の歩行速度の変化における水平面での骨盤と体幹回旋運動の角度変化について検討することを目的とする。【方法】対象は整形外科的疾患および神経疾患のない高齢者21 名(男性12 名,女性9 名,年齢73.2 ± 3.8 歳,身長158.1 ± 8.7cm,体重59.8 ± 8.9kg)とした。歩行解析には三次元動作解析装置(Motion Analysis社製,赤外線カメラ8 台)を用いて,サンプリング周波数100Hzで計測した。約10mの歩行路で自由速度と早歩き程度の速度(以下,早歩き)の2 条件で歩行動作を行い,動作は各々4 回実施した。計測項目は,歩行速度,ステップ長,ケイデンス,骨盤回旋角度(左右の上前腸骨棘を結ぶ直線と前額面との成す角度),体幹回旋角度(左右の肩峰を結ぶ直線と前額面との成す角度)とした。骨盤と体幹回旋角度については,1 歩行周期における各回旋角度のピーク値の振幅の平均値をそれぞれ求めた。速度条件間には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。【説明と同意】対象者には,ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い,本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明し,書面にて同意を得た。【結果】歩行速度は自由速度で1.18 ± 0.14m/sec,早歩きで1.45 ± 0.16m/secであり,ステップ長(身長比)は自由速度で36.9 ± 2.5%,早歩きで40.1 ± 2.6%であり,ケイデンスは自由速度で2.02 ± 0.16steps/sec,早歩きで2.28 ± 0.2steps/secであった。骨盤回旋角度のピーク値の振幅は自由速度で12.40 ± 4.06°,早歩きで14.97 ± 4.31°であった。体幹回旋角度のピーク値の振幅は自由速度で6.58 ± 1.81°,早歩きで6.94 ± 2.16°であった。体幹回旋角度を除いたいずれの因子にも条件間で有意な差が認められた。【考察】早歩き条件の方が骨盤回旋角度の振幅およびステップ長が増加した。このことから,水平面の骨盤回旋運動がステップ長や歩行速度の増加に貢献していることが示唆された。対して,体幹回旋角度の振幅には2 条件間に有意な差が認められず,歩行速度の増加における体幹回旋運動の寄与を示すことはできなかった。歩行中は体幹上部と体幹下部が逆方向へ回旋することによってバランスを保持すると言われている。歩行速度の変化に伴い骨盤回旋角度が変化すれば,バランスを保持するために体幹回旋角度も変化すると予想したが,それを支持する結果は得られなかった。今後は骨盤および体幹回旋運動の角速度や角加速度についても検討していく予定である。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果により,高齢者の歩行速度の変化における水平面での骨盤と体幹の関係性が示された。高齢者の歩行機能を探求する上で骨盤と体幹機能により一層着目する必要があることが示唆された。今後は,前額面や矢状面での骨盤と体幹の関係性や下肢の関節運動や身体重心,床反力との関連についても検討していく予定である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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