理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-24
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ポスター発表
高齢者・障がい者の就労支援を目的とした植物工場における作業環境のユニバーサルデザイン化に関する研究
岡原 聡片岡 正教島 雅人村田 臣徳谷村 広大上田 絵美中村 謙治奥田 邦晴
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抄録
【はじめに】 完全人工光型植物工場は,天候に左右されず安全な植物を安定して周年生産することができ,農業分野における国家施策の経済成長戦略の一環に位置づけられ,近年再び注目を集めている.その発展は,農業従事者の新規雇用に繋がる可能性があり,さらに高度に施設化された設備が農作業の軽労化・簡素化を可能とすることから,高齢者や障がい者の就労場所として期待できる.我々は第47回学術大会で,リフトロボットを活用した多層型植物工場をモデルに,高齢者や障がい者の就労の可能性を示した.本研究では,完全人工光型植物工場を高齢者や障がい者の農業就労施設として実用化することを目的に,まずは一般的な植物工場の立位作業における身体負荷と,ユニバーサルデザイン型植物工場をシミュレーションした坐位作業における身体負荷について解析したので報告する.【方法】 対象は,健常者10名(男性6名,女性4名,平均年齢23±2.9歳,身長165.5±8.7cm,体重62.2±14.2kg)で,全員右利きであった.対象者には,実際の植物や器材を用いて,種付けや苗の植え替えなど,植物工場における「播種」「移植」「定植」「収穫」の4工程を順に行わせ,筋活動を測定した.各作業間には2分の休憩を設定した.作業環境は(1)立位作業(作業台:75cm),(2)坐位作業(作業台:75cm),(3)坐位作業(作業台:対象者の肘の高さ)の3条件とし,ランダムに実施した.なお,条件(3)については,作業範囲を狭小化し上肢補助のためスリングを用いた.また,立位・坐位ともに作業台と体幹の間隔は20cmとなるようにし,条件(2)(3)では股関節・膝関節屈曲90°で足底全体が地面に接するように座面高を調整した.各作業については事前に十分な説明を行い,植物を丁寧に扱うよう指示を与え,作業速度は任意で実施させた.筋活動は,表面筋電計(Noraxon社製)を用いて測定し,対象筋は右腰部傍脊柱筋(RLP),左腰部傍脊柱筋(LLP),右僧帽筋(Tra),右三角筋(Del),右橈側手根伸筋(ECR)の5筋とした.測定波形は整流化し,各筋の最大随意収縮を基準に正規化(%MVC)した.また,作業における各筋活動の許容値を捉えるために,振幅確率密度関数(APDF)を用いた筋電図の解析を行い,Jonssonの原文に基づき平均活動レベルを示す確率P=0.5における%MVCを求めた.統計学的手法は,Friedman検定後,有意差を認めたものにBonferroni補正Wilcoxon検定を用いて比較し,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 研究倫理審査委員会の承認を得た後,対象者には本研究の主旨を口頭および文書を用いて十分に説明し, 書面による任意の同意を得た.【結果】 APDFを用いた筋電図の解析より,腰部の筋活動は,条件(1)でRLP13.1±3.1%,LLP14.5±4.5%,条件(2)でRLP7.7±2.7%,LLP8.2±3.4%であり,坐位で有意に低かった(p<0.05).条件(3)では条件(2)と同様に,条件(1)よりも腰部の筋活動が有意に低かった.一方,上肢の筋活動は,条件(1)でTra7.5±5.0%,Del6.7±2.4%,ECR4.6±2.3%,条件(2)でTra15.9±4.8%,Del8.1±2.8%,ECR3.9±1.7%であり,Traの筋活動が,坐位で有意に高かった(p<0.05).条件(3)ではTraの筋活動(10.0±4.4%)が,条件(2)と比較し,有意に低かった.【考察】 1時間以上の作業において確率P=0.5の%MVCは10%を超えるべきではなく,14%を越えてはならないと提唱されており,許容値を超える筋活動が継続される場合,筋骨格系傷害を誘発する可能性があることが指摘されている.作業環境のユニバーサルデザイン化をシミュレーションした本研究の結果,坐位作業は立位より腰部への負荷が軽減されるが,上肢,特に肩関節周囲筋への負荷が大きくなることが確認された.しかし,作業範囲の狭小化や作業台の調整等による環境設定によって,上肢の負荷を軽減することができた.植物工場の設計を車椅子の使用者においても作業可能な環境とし,さらには個々に適した環境設定や,それらが調整可能なデザイン,アシスト機器の開発等により,同程度の作業効率を維持しつつ筋骨格系傷害を予防できる可能性が示唆された.ユニバーサルデザイン型植物工場が実用化していくことで,高齢者や障がい者が持つ潜在的な労働力が十分に発揮でき,彼らの安全な雇用促進や労働条件の改善への後押しになると考える.【理学療法学研究としての意義】 高齢者・障がい者の身体特性を捉えた理学療法学研究により,彼らに好適な作業環境を備えたユニバーサルデザイン型植物工場を提案し,これまで希望しても従事困難であった農業分野への就労支援に寄与するとともに,彼らの社会参加を促進し豊かな暮らしを支える一助になり得る.
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© 2013 日本理学療法士協会
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