理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-04
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ポスター発表
スイスボールが座位での側方リーチ動作時の体幹筋の活動に及ぼす影響
阪本 誠
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抄録
【はじめに、目的】 端座位での側方リーチ動作は様々な日常生活動作に必要であり、高年齢になるにつれ、この能力は低下する傾向にある(ThompsonとMedley 2007)。スイスボールはバランス能力の改善、体幹筋の筋活動向上の為に脳卒中リハビリテーション場面で使用され、その効果も検証されてきたが(Karthikbabuら 2011)側方リーチ動作時の安定した座面上とスイスボール上での体幹筋活動の違いは現在まで検討されていない。本研究の目的は表面筋電図を用いて、座位での側方リーチ動作時の体幹筋活動に対するスイスボールの効果を検討することである。【方法】 対象は健常成人16名(男性14名、女性2名、年齢28.19±3.80、身長171.0±6.43cm、体重69.24±7.27kg、BMI23.72±2.20)であり、全員右利きであった。肥満(BMI>29)、妊娠中の被験者は除外された。表面筋電図(テレマイオ、ノラクソン社製)が筋活動測定の為に使用された。電極はAg/AgCl電極を使用し、電極間距離は20mm、サンプリング周波数は1000Hzとした。対象となる筋は両側外腹斜筋(以下EO)、内腹斜筋(以下IO)、脊柱起立筋(L4-5、以下ES)とした。EOの電極は臍から側方15cmの位置に、IOの電極は上前腸骨棘と正中線の中間に(Vera-Garciaら、2010)、ESの電極はL4-5の高さで棘突起から3cmの位置に(MarshallとMurphy、2005)、アース電極は上前腸骨棘に貼付された。皮膚前処理は体毛を剃刀で処理した後に、アルコール綿もしくはノンアルコール綿にて十分に処理した。最大等尺性収縮(MVC)は各筋につき3回ずつ測定(測定毎に1分間の休憩)され、その中の最大値を標準化に使用した。 運動課題は(1)調整可能なベンチ上、もしくは(2)スイスボール(60cm)上の二条件で無作為の順序で実施された。開始姿勢は大腿長の50%が支持面となるように座面に腰掛け、両足部間の距離は14cm、両手は膝上に設定した。条件(1)ではベンチの高さを膝関節、股関節屈曲90°となるように調節した。動作中の視覚情報を標準化する為、課題中は前方の一点を注視するように指示した。上記の開始姿勢から、右側方かつ右肩峰から上肢長の110%の位置に設置されたポールへの右上肢のリーチ動作を課題とした。一連の動作はビデオレコーダーで記録され、リーチ動作は右第三指が動き始めた瞬間から、ポールに手が触れ、開始性に戻るまでと定義し、その間の平均筋活動量を記録した。ビデオレコーダーはパソコンと接続され、MyoResearch XPを用い、動画と筋電図波形を同期した。運動可課題は3回練習を行った後に3回測定され、その平均値をMVCの値で標準化した値(%MVC)が比較に用いられた。測定値の比較には対応のあるt検定を用い、6つの仮説が存在する為、ボンフェローニの調整を行い、有意水準α=0.008に設定した。データが正規分布を示さない場合にはWilcoxon signed-rank testを用い、この際の有意水準は5%以下に設定した。統計処理にはSPSS ver.20 for Windowsを使用した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ条約を鑑み、測定の48時間以上前に実験概要とリスク、公表の有無と形式、個人情報の取り扱いについての情報を被験者に提供した。当日に同意書に被験者の署名を得た上で測定を開始した。【結果】左右EOのデータは正規分布を示さなかった為、Wilcoxon signed-rank testを使用し、その他の筋には対応のあるt検定を使用した。その結果、左右EO(p<0.05)、左IO(p<0.008)、右ES(p<0.008)の筋活動は条件(2)において有意に増大した。右IO、左ESの値は条件(2)において増大傾向にあったが、有意差は見られなかった。筋電図波形では両側IOの活動がEOに比べ早い段階で活動を開始し、長時間持続することが確認された。また多くの被験者では両側EOの活動は手がポールに到達する前後に最大値を示すことが確認された。【考察】条件(2)において、特に左右EO、左IO、右ESの筋活動が増大することが示唆された。これは座面が不安定であることに加え、機能的支持基底面が狭くなった状態では、リーチ動作時の姿勢保持により強い体幹筋の活動が要求されるためだと考えられる。リーチ到達前後にEOの活動が最大になることから、体幹の運動を減速させるために最も体幹筋の活動が要求されるのではないかと推測される。Weaverら(2012)は条件(2)での速い上肢挙上運動では体幹筋の活動が向上しないことを示しており、体幹筋をより活動させる為には支持基底面から体幹の質量重心を移動させる運動が必要になると考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究では側方リーチ動作時にスイスボールを座面として使用することで、体幹筋の活動が増大することが示唆された。この結果は、座位でのバランス能力の向上、ADL動作時の転倒予防の為のより効果的な理学療法プログラムの立案の一助となると考えられる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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