理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-07
会議情報

一般口述発表
企業と連携した職業準備評価を行うことによる効果
-外来リハビリテーションと職場体験実習を併用した事例を通して-
金谷 浩二源 夏野
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】近年、当院でも今後の就労を希望する若年脳卒中患者が増加しつつあり、回復段階から職業適応能力の判断が求められる傾向にある。そこで当院では、平成23年度より今後就労が可能かどうかの判断が難しいケースに対して、外来リハビリテーション(以下リハ)の段階から企業での職場体験実習を依頼し、共同で職業準備評価を行う流れをとっている。今回、企業と医療機関が連携を取ることによって得られる効果を確かめるため、外来リハ通院中に職場体験実習を実施した2例に対し、インタビューを交えて検証した。【方法】就労希望の為、外来リハ通院中にSHARP特選工業株式会社へ職場体験実習を依頼し、実習を受けた脳卒中患者2例を対象にインタビューを行った。インタビュー内容は、1.職場体験実習を受けて良かった事、2.職場体験実習後の心境の変化とした。実施日は平成24年6月7日とし、2例とも外来リハ通院が終了し就職活動中の時期で設定した。これにより就職活動に企業との連携評価がどのような影響・効果をもたらしているのか検証出来るようにした。【倫理的配慮、説明と同意】SHARP特選工業株式会社、症例に対しては本研究の主旨と個人情報の保護について文章・口頭で十分に説明し、同意を得た。その上で症例に対しインタビューを行なった。【結果】1例は、左被殻出血、右上肢の完全麻痺と失語症(重度ブローカ失語)を呈する30代の男性である。事務作業と軽作業を希望し、2週間の実習を受けた。本人は、出来ない事と出来る事がはっきり分かり、実習を通して働く事の喜びを感じることができ、再び仕事をしたいと言う強い気持ちを確認出来たとの発言があった。言葉を上手く表出できない中、沢山のコミュニケーションを取れた為に生活面でも自信がつき、実習後には 一人で遠方への外出や出来なかった買い物が一人でできるようになった。現在は就労継続B施設に通所中である。もう1例は、左被殻出血、軽度右片麻痺(Brunnstrom Stage:上・下肢・手指 VI)と過去にうつ病発症歴のある30代の男性である。集団活動に対するトラウマがあり、発症前からなかなか就職先が見つからなかった事を受けて、他者とのコミュニケーションが不可欠な連携作業を含んだプログラムで3週間実習した。本人は、実習を受けたことにより、就職面接時に自分の障害説明が上手く出来たと発言された。また、実習が、自分がどういう障害を持っているのか社会に説明できるようになる為の手段となったという感想もあった。実習後すぐにハローワークへ行き、有給研修施設をへて現在就職活動中とのことであった。【考察】依頼先のSHARP特選工業株式会社は、障がい者を対象とした職場体験実習の積極的な受け入れ体制などが整っている『大阪府障がい者就労サポートカンパニー』登録企業の一つである。実習を受けるメリットとして、企業で実際の職業体験ができ、就労に対する実感を持つことができることや、障がい者の就労・職場定着の為に必要な支援を行うとされるジョブコンダクターによる実場面での職業評価を受け、今後の就職活動の際に生かされることが挙げられる。2例の発言から、実習を併用した職業評価を受けることにより、自分の障害・状況を把握でき、実社会に復帰する際に必要な自己説明が患者自身でより具体的に出来るようになる事が確認できた。これは、実際の職業体験を行うことにより、自分の作業能力に対する気付きが得られやすい事と、実習評価を基に、より具体的な問題点に対するアプローチが外来リハで継続出来たことによる結果ではないかと考える。この流れは、職業作業においての『出来る・出来ない』を明らかにし、課題や目標を具体化させることにより、外来リハでの訓練効果が得られやすいという利点をもたらすと考える。また、方向性が明確になることで、支援する立場にとっても効果的なアプローチができる事だけにとどまらず、就労支援機関へ的確な情報提供をもって連携を取る事が出来るといった利点につながると考える。【理学療法学研究としての意義】今回の調査により、職場体験実習を受けることによって患者の自己説明が具体的に出来るようになる事や、患者の今後の就労についての方向性を明確にするなどの効果が得られる事が分かった。企業と医療機関とが連携した専門的評価を提示する事により、より患者の今後の目標・就労イメージが明確になると考える。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top