理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-07
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一般口述発表
スタッフ教育を中心とした多因子介入が回復期リハビリテーション病棟における転倒発生率に及ぼす影響
鶴田 佳世橋本 加奈子山崎 美恵西川 由美子坂中 有子徳久 謙太郎高取 克彦庄本 康治
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抄録
【はじめに、目的】看護師・看護補助者は患者のADLに多く関わり、転倒・転落予防のキーパーソンである。しかしその実務経験年数や、教育的背景の違いによって転倒・転落とその予防に対しての知識、意識、リスク管理力には差があると考えられる。病棟スタッフのリスク管理力の向上はリスクアセスメント能力や病室などの環境調整能力を向上させ、転倒発生率を減少させる可能性がある。転倒予防には運動やアラームなどの単独介入よりも環境や服薬調整、職員に対する啓発活動などの包括的な取り組みが効果的であると報告されているが、教育的介入を中心とした対策による転倒予防効果は十分に検討されていない。本研究の目的は病棟スタッフに対する教育的介入を中心とした多職種連携での環境調整や転倒ハイリスク者のマーキングといった多因子介入が転倒・転落発生率を減少させるかを検討することである。【方法】回復期リハビリテーション病棟49床に勤務する看護師と看護補助者26名(看護師17名、看護補助者9名)を対象に介入を実施した。まず病棟スタッフに対して病棟における転倒・転落危険因子と予防対策をテーマに院内転倒予防セミナーを実施した(介入1)。セミナーは1回1時間、同内容のものを5回実施し、勤務の都合に合わせて参加する形式とした。その後、新規の入院患者に対して入院初期カンファレンスにて担当PT・OTと看護師で個別に環境の設定を行い、設定を随時チェックできるシステムを導入した(介入2)。転倒ハイリスク者に対してはマーキングを行い、病棟に出入りするスタッフに周知を徹底した(介入3)。マーキングは、移乗が見守り以上要介助者、適切に介助依頼が出来ない者に対して移動の補助具に黄色テープを貼り見守りを行うようにした。調査期間は平成23年12月~平成24年10月の11カ月間とし、同病棟の前年の同時期を対照期間とした。また、介入期間中は毎月事故内容、前年との比較や介入の現状についての報告を行った。評価項目はセミナー実施前後、3ヶ月後に、10項目20点のチェックテスト、転倒・転落予防に対する自己効力感の変容を本研究独自に作成した「転倒予防自己効力感アンケート」(5段階Likert scale、16項目(最高80点))を用いて測定した。また、調査期間中の転倒発生率‰(観察期間中の転倒件数/述べ入院患者数×1000)、外傷率%(外傷数/総転倒件数×100)も測定した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は施設長の了承を得て行い、病棟スタッフには、研究の趣旨を説明し、同意を得た。【結果】介入期間における転倒発生率は、対照期間に比較して有意に減少した(平均転倒発生率;対照期間3.8‰、介入期間2.3‰、p <0.05)外傷率は対照期間に比較して7%減少した。チェックテストの平均得点はセミナー実施前に比べ実施後に有意に改善しており(実施前15.4±1.4点、実施後18.1±1.1点、p <0.05)、その効果は3か月後も持続していた(実施前15.4±1.4点、フォローアップ17.3±1.6点、各p <0.05)。また転倒予防に対する自己効力感も実施前に比べ3か月後に有意な改善を認めた(実施前56.2±8.3点、フォローアップ時61.4±7.6点、p <0.05)。セミナーは4名が不参加で、後日受講者より伝達講習をうけた。【考察】介入期間における転倒発生率の有意な減少は、転倒予防の知識と意識の向上のみならず、転倒予防を考慮した環境調整を多職種が連携して実施するシステムが出来たためではないかと考える。外傷率が減少したことは、環境調整を実施するうえで、患者の転倒傾向をカンファレンスの中で予測して対策したため、大きく予測を外れた事故が少なかったのではないかと考える。知識面に関しては、セミナー実施によって転倒・転落とその予防に関する知識が一定の水準で得られたものと考えられ、フォローアップまでの維持は、日々の業務において転倒予防を意識した多職種連携での環境調整の検討や病棟スタッフにおけるチェック体制を取り入れたためではないかと考えられる。また、転倒予防の自己効力感の向上は、セミナーを通して当該病棟での転倒の現状を知り、具体的な介入方法を提案したことで実際の生活場面で転倒を考える機会が増え、主体的に転倒予防に関わる機会が増えたことで、フォローアップ時に向上しているのではないかと考えられる。【理学療法学研究としての意義】理学療法士として持ち得る知識を多職種で共有し、転倒・転落予防の方法を共に模索することが必要である。今回、理学療法士が、病棟スタッフとともに環境調整や、リスク評価に関わることで転倒発生率の減少に寄与できたことは意義があると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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