理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-07
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一般口述発表
非侵襲的陽圧換気が循環動態におよぼす影響
堀 晋之助与儀 哲弘木下 利喜生藤田 恭久森木 貴司幸田 剣中村 健田島 文博
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抄録
【はじめに、目的】早期リハビリテーション(リハ)の重要な意義のひとつに、早期に離床をすすめる事で臥床に起因する心肺機能低下や起立性低血圧を防ぐことがある。臥床に伴う心肺能力低下や起立性低血圧は、身体にかかる重力負荷が無くなり静脈環流量が増加し、さらに心拍出量が増加する事に起因する。心拍出量の増加は、体循環を維持するための心臓の仕事量を減少させ、心臓自体の機能の低下を起こす事が分かっている。非侵襲的陽圧換気法(NIPPV)は、睡眠時無呼吸症候群やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者に対する非侵襲の有効な治療法の1 つである。また、陽圧換気は、静脈環流を抑制し心拍出量の低下を起こす事が知られている。このため、我々は臥床中の患者にNIPPVを使用する事により、心拍出量の増加を抑制し心肺機能低下や起立性低血圧の予防に有効ではないかと考えている。しかし、NIPPVによる陽圧負荷がどの程度の心拍出量を低下させるか、あるいはどの程度の陽圧負荷で心拍出量が低下するかは不明である。今回、我々は若年健常者を対象にNIPPVを用いて、3 段階の陽圧負荷を加えた際の一回心拍出量、心拍出量、心拍数、血圧の動態を測定し、検討を試みたので報告する。【方法】対象は医学的に問題のない、若年健常男性7 名(平均年齢25.9 ± 3.6 歳、身長171.3 ± 4.0cm、体重69.3 ± 13.1kg)とした。プロトコールは非侵襲的陽圧人工呼吸器のフェイスマスク(BIPAP Focus フィリップス・レスピロニクス)を装着し、背臥位で20 分間以上の安静をとった後、安静データとして5 分間の測定を実施した。その後、4cmH2O、8cmH2O、12cmH2Oへと段階的に陽圧負荷を上げていき各7 分間の測定を行った。測定項目は、一回心拍出量、心拍出量、心拍数、血圧とし、一回心拍出量、心拍出量、心拍数は心拍出量計(メディセンス社製MCO-101)を用い、1 秒毎に測定した結果を1 分間平均した。また血圧測定は1 分毎に自動血圧計(TERMO製エレマーノ)で行い、そこから平均血圧(拡張期血圧+脈圧/3)を算出した。結果の解析は、安静および各陽圧負荷時の最終3 分の平均値を算出し、比較検討した。統計処理はKaleidaGraphを用いてANOVAを行い、post hocはTukey-Kramer法を使用した。なお有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づいて被験者に本研究内容および危険性などについて説明し,同意を得てから実施した。【結果】安静時、陽圧負荷4cmH2O、8cmH2Oでの比較ではそれぞれの測定項目に有意な変化は認められなかった。陽圧負荷12cmH2Oでは、安静時および陽圧負荷4cmH2Oと比較し、一回心拍出量(安静時:92.9 ± 20.88 ml 、陽圧4cmH2O:94.4 ± 0.48ml、陽圧12cmH2O:86.1 ± 0.33ml)、心拍出量(安静時:6.19 ± 1.69L、陽圧4cmH2O:5.94 ± 0.02L、陽圧12cmH2O:5.50 ± 0.03L)が有意に低下した。また平均血圧・心拍数については安静時および各陽圧負荷時と比較して有意な差は認められなかった。【考察】陽圧負荷12cmH2Oのみにおいて安静時と比較して一回心拍出量と心拍出量が有意に低下した。これは陽圧負荷時の陽圧換気下では、生理的には陰圧であるべき胸腔内圧が,陽圧になることで圧較差が少なくなり、その結果、右心房への静脈還流量が減少、一回心拍出量が低下したと考えられる。血圧に変動がみられなかったのは、静脈還流量が減少し、一回心拍出量の低下が生じたことで、圧受容器反射が惹起され、筋交感神経活動が増加し、末梢血管抵抗を上昇させたことで血圧維持が行われたと考える。また、今回のような陽圧負荷では心拍数での応答は惹起されない可能性が示唆された。陽圧負荷4cmH2O・8cmH2Oでは安静時と比較し、全ての測定項目において有意差が認められなかった。これは循環動態を変動させるほど、胸腔内圧に影響を及ぼすことが出来なかったためと思われる。今回、12cmH2Oの陽圧負荷をかける事で心拍出量を有意に低下させる事が明らかになった。このため、NIPPVを使用し12cmH2Oの陽圧負荷をかける事により、臥床時に伴う心肺能力低下や起立性低血圧をある程度は予防する可能性が考えられた。しかも、12cmH2Oの陽圧負荷であれば血圧や心拍に影響を与えず安全面においても問題は無いと考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果より、NIPPV使用により心拍出量の低下を起こす事が可能であることが実際に示された。また、NIPPVとリハを併用する事により、さらに臥床による心肺能力低下や起立性血圧の予防や改善を効果的に進める事が可能になり、早期リハに寄与する可能性がある。
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© 2013 日本理学療法士協会
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