理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-46
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ポスター発表
片脚立位動作の中殿筋の動作前Silent Period出現が下肢関節の運動力学的挙動に及ぼす影響
行宗 真輝脇本 大樹木藤 伸宏
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抄録
【はじめに、目的】動作前の筋放電休止期(Pre-motion Silent Period:PMSP)は,急速な自発的動作に先行して主動筋に出現する筋放電の休止期であり,弾性エネルギーが蓄積により,筋力増強が得られることが報告されている.PMSPに関する研究は,上肢筋に関する研究が多く,下肢筋に関する報告は少ない.歩行時の立脚初期に中殿筋は急激な荷重に即応して衝撃吸収や前額面の身体安定性の保持に貢献している.そこで,歩行時の立脚初期に中殿筋はPMSPを生じることで,その後の前額面股関節モーメント発揮に関して有利に働いているのではないかと仮説を立てた.股関節周囲筋である中殿筋のPMSPに関して報告はなされていなため,PMSPが起こるか否かも不明である.本研究では立脚初期を反映する動作である片脚立位動作を課題に用いた.片脚立位動作時の中殿筋のPMSP出現ならびにPMSP出現時と非出現時の下肢関節の運動力学的相違を明らかにし,PMSPの機能的役割を明らかにすることを目的とした.【方法】被検者は,健常男性10 名(平均年齢21.2 ± 0.4 歳)とし,下肢に整形疾患や外傷の既往のない者とした.課題動作は体重の70,80%を左脚に荷重した両脚立位から聴覚刺激を合図に素早く左片脚立位動作を行った.左片脚立位動作中の左中殿筋のSPを計測するために筋電計Telemyo2400(Noraxon社製)を用いた.表面筋電図マニュアルに従い,左の中殿筋,大殿筋,大腿筋膜張筋にdisposable電極(ブルーセンサー:Mets社製)を貼付した.得られたデータから,PMSP開始時間,PMSP 持続時間,PMSP出現時の中殿筋活動電位量を求めた.PMSP出現時の中殿筋活動電位量は,全波整流後,単位時間あたりのIEMGを算出し,予備筋活動の単位時間当たりのIEMGで補正した相対的IEMG(%IEMG)で示した.左片脚立位動作中の運動力学的データは赤外線反射マーカーを身体各標点に貼付し,赤外線カメラ8 台からなる三次元動作解析システムVICON MX(Vicon社製)を用いて計測した.同時に床反力計(AMTI社製)2 枚を用いて計測した.得られたデータから演算ソフトBodybuilder(Vicon社製)を用いて,内部股関節外転モーメントとパワー,内部膝関節外反モーメントを算出した.聴覚刺激から右床反力が0Nになるまでを解析区間とした.内部股関節外転モーメントと内部膝関節外反モーメントは聴覚刺激時の値を基準とし,最大値との差を増加量,最小値との差を減少量,最大値と最小値との差を変化量とし,それぞれ求めた.股関節パワーにおいては正のパワーの積分値,負のパワーの積分値を求めた.統計解析にはR(Free software:GNU project)を用い,PMSP出現時と非出現時の比較にはWelchの検定を用いた.なお,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,研究の実施に先立ち,広島国際大学倫理委員会の承認を得た.また,被検者に対して研究の目的と内容を十分に説明し,文章による同意を得た後に実施した.【結果】各被験者のPMSP出現率は5 〜90%で平均30 ± 25.7%であった.PMSP開始時間は270 ± 92msec,PMSP持続時間は145 ± 81msec,PMSP出現時の中殿筋活動電位量は23.3 ± 6.75%IEMGであった.以上の結果より,中殿筋の%IEMG が33.3%未満となり,その持続時間が50msec以上のものをPMSP出現と定義した.全被験者の解析対象200 施行のうち,PMSP出現60 施行,非出現140 施行であった.PMSP出現と非出現の比較において内部股関節外転モーメントと内部膝関節外反モーメントの増加量,減少量,変化量に有意な差は認められなかった.また股関節パワーの正のパワーの積分値,負のパワーの積分値に有意な差は認められず,床反力鉛直成分の減少量においても有意な差は認められなかった.【考察】本研究結果より,片脚立位動作において中殿筋のPMSP出現が確認され,その出現率は上肢筋と同様に個人差が大きいことが明らかとなった.また,本研究結果ではPMSP出現と非出現の運動力学的パラメーターにおいて有意な差は確認されなかった.上肢筋の開放運動においてPMSP出現時に伸張性収縮が生じることで弾性エネルギーが蓄積され,その後の筋収縮時に放出されることで筋力増強が得られることが報告されているが,本研究の動作課題は閉鎖運動であり,下肢関節は冗長性を利用し,膝関節や足関節間で調節を行った結果,PMSP出現による運動力学的パラメーターの変化を捉えるまでに至らなかったと推測した.【理学療法学研究としての意義】PMSPが内部股関節外転モーメント発揮やパワーに機能的貢献することを本研究は明らかにすることはできなかった.しかしながら本研究結果より,片脚立位動作において中殿筋のPMSP出現が確認された被験者がいることやその出現は被験者間で変動があることを明らかにしたことは理学療法学研究として意義のあるエビデンスである.
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© 2013 日本理学療法士協会
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