理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-06
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一般口述発表
小児の痙性尖足歩行に対するボトックス治療の効果と適応
-歩容と家族の満足感に着目して-
竹内 知陽岩田 浩志北小路 隆彦
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抄録
【はじめに、目的】 2009年以降,本邦において脳性麻痺等に伴う小児の痙縮治療にA型ボツリヌス毒素による治療(以下ボトックス治療)が取り入れられ,当センターにおいても2012年2月から臨床適用を開始した。以降,独歩可能であるものの痙縮のために尖足歩行となり,児が疲れやすい,転倒しやすい等の訴えにより,家族の希望でボトックス治療を試みる例が増えている状況である。本研究では,ボトックス治療を試みた独歩可能な児の歩容と家族の満足感に注目し,ボトックス治療の効果と適応,意義について検討する。【方法】 痙性尖足歩行を主訴し,下腿三頭筋の痙縮軽減目的でボトックス治療を初めて試みた男児3名を研究対象とした。ボトックス治療時の年齢は3歳8ヶ月~6歳6ヶ月(平均5歳3ヶ月),対麻痺2例(症例1及び症例3)と右片麻痺1例(症例2)で,全例独歩可能であった。3例ともボトックス100単位を使用し,治療2週後に入院での集中理学療法を4~5日間実施した。歩容の評価は,歩行時の初期接地の状態,立脚期及び遊脚期の足関節底背屈角度,及び体幹動揺性を,簡易カメラ2台による3次元歩行解析にて行った。解析ソフトはPrivate Visual Studio 3D 2.0(L.A.B.社製)を使用した。評価は,ボトックス治療前(以下,治療前),治療後10~14日後(以下,治療2週後)及び治療後4週~1.5ヶ月後(以下,1ヶ月後)の3期に行った。また,満足感の評価として,(1)ボトックス治療に期待する効果,(2)ボトックス治療を試みての印象,(3)2回目以降の治療を希望するか,の3項目に関して,対象児のボトックス治療を希望した家族(母親)から聴取した。(1)は治療前に,(2)及び(3)は治療後の2回の評価時において,それぞれ実施した。【倫理的配慮、説明と同意】 家族を含む対象者に対し,本調査研究の趣旨を説明し,学術集会での報告について了承を得た者のみを研究対象としている。本研究は臨床実践の範囲内であり,当センター倫理委員会の承認を要する臨床研究に該当しなかった。また,研究に関連する利害の有無は存在しない。【結果】 歩行時の初期接地は,症例1では治療前,治療2週後及び1ヶ月後のいずれも足底前足部であった。症例2では,治療前は足底前足部での初期接地であったのが,治療2週後及び1ヶ月後では足底全面での接地となった。症例3では,麻痺の程度が軽い右側で治療前に踵での初期接地が見られたものの,治療後は足底全面接地であった。歩行周期中の足関節角度変化は,症例1では治療2週後の立脚期での背屈角度の改善を認めたが,治療4週後は治療前と同様であった。症例2では,2週後の評価で遊脚期での底屈角度の増大を認めたが,間代は消失し下腿三頭筋の痙縮は軽減していた。また,1ヶ月後は治療前と同等であった。症例3では,治療2週後において,麻痺の程度が軽い右側で立脚後期から遊脚期にかけての底屈可動域(Push off)の増大が認められた。体幹動揺性は,いずれの症例も治療前後で明らかな相違は認められなかった。他方,満足感の評価では,格好良く歩いて欲しい(全症例),早く走れるようになってほしい(症例2),転ばなくなってほしい(症例1,3),であり,機能向上に加え易転倒性改善への期待が強かった。また,治療後の印象は,治療前と歩き方は変わらない(全症例),転ぶ頻度は変わらない(症例1,3),足関節の可動性は一時改善したがすぐに元に戻った(症例1,2),膝を曲げてジャンプできるようになった(症例3)等,歩容や易転倒性は変わらないものの,運動性の向上を捉えていた。さらに,2回目以降の治療については,希望しない(症例2),希望しないが主治医に勧められたら受けると思う(症例1),その時期がきたら前向きに考えたい(症例3),と意見が分かれた。【考察】 歩行中の足関節底背屈角度の一部改善を認めたことから,ボトックス治療は痙縮軽減の効果を期待できると言える。一方で,体幹動揺性では治療前後で明らかな差を認めず,歩行バランスや効率性の改善といった,家族が期待する歩行能力向上の効果は得られにくいと思われる。他方,症例3ではボトックス治療の継続に意欲的な意見がきかれ,運動能力の向上など目に見える効果が家族の満足感に大きく関係するものと思われる。Engstromら(J Child Orthop, 2010)は,ボトックス治療における家族の認識の重要性を指摘しており,児の運動能力に加えて家族の思いを考慮した理学療法の併用が必要不可欠である。【理学療法学研究としての意義】 ボトックス治療の効果を,医療者側からだけでなく当事者の満足感を踏まえて評価した点で,臨床研究としての意義がある。医療者本位のボトックス治療適応とならないよう,特に独歩可能な小児においては多角的な視点を踏まえた理学療法実践研究が求められる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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