理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-05
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ポスター発表
慢性期脳卒中後片麻痺患者に対する低頻度反復性経頭蓋磁気刺激と集中的作業療法の併用療法が下肢機能と歩行へ及ぼす影響
松下 信郎田中 直次郎山岡 まこと福江 亮丸田 佳克藤井 靖晃橋本 陽平漆谷 直樹玉代 浩章岡本 隆嗣
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抄録
【目的】当院では慢性期脳卒中後片麻痺患者を対象に、低頻度反復性経頭蓋磁気刺激(以下低頻度rTMS)と集中的作業療法を15日間併用するNEURO-15(NovEl Intervention Using Repetitive TMS and Intensive Occupational Therapy-15 Days Protocol)を行っているが、NEURO-15のみによる下肢機能や歩行への治療効果についての報告はない。本研究はNEURO-15による下肢機能と歩行への影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は2010年12月25日から2012年9月21日までに当院でNEURO-15を実施した脳卒中後片麻痺患者35名(平均年齢64±11歳、男性27名、女性8名、発症後経過月数13~146ヵ月)であった。対象者に1Hz、20分間(1200発)の健側大脳への低頻度rTMS、60分の個別リハビリテーション(以下個別リハ)、60分の自主トレーニングからなるセッションを15日間の入院期間中に計21セッション行った。個別リハでは上肢練習のみ実施し、下肢や歩行に対する練習は実施しなかった。上肢機能評価として、Fugl-meyer Assessment(以下FMA)、Wolf Motor Function Test(以下WMFT)、Simple Test for Evaluating Hand Function(以下STEF)、慈恵版自己評価スケール(以下JASMID)を用いた。歩行評価は歩行分析計walkway(アニマ社製)を用いて対象者に最大歩行を指示し計測した。計測データから歩行速度は身長/平均身長の平方根で除して補正し、麻痺側と非麻痺側の歩幅も身長/平均身長で除して使用した。立脚、遊脚時間はwalkwayから算出された値をそのまま使用した。その他に10m歩行テスト、Wisconsin Gait Scale(以下WGS)、Timed up and go test(以下TUG)、Stroke Impairment assessment Set(以下SIAS)、四肢の筋緊張評価として改訂Ashworthスケール(MAS)を用いた。統計処理には入院時と退院時の比較にWilcoxon の符号付き順位検定を使用した。また、有意差のあった項目の中で互いの関連性を検討するために各変数の入院時と退院時の差を算出し、その変化量をSpearmanの順位相関係数で検討した。下肢機能評価において治療前後に有意差があった項目について改善群と非改善群に分け2群比較した。有意水準は5%とした。【説明と同意】全対象者には治療の説明とともに、研究内容を説明し同意を得た。本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った。【結果】全対象者が副作用なくNEURO-15を完遂し、上肢機能に関してはFMA、WMFT、STEF、JSMIDの全てに有意な改善を認めた。MASは上肢全項目において有意に軽減していた。SIASは合計点と下位項目の上肢と下肢運動機能合計、上肢運動機能遠位、上肢腱反射、上肢筋緊張、上肢と下肢関節可動域、参考値である麻痺側握力に有意差がみられた。歩行に関しては補正速度、両側の補正歩幅、補正平均歩幅、両側の立脚時間において有意差が認められた。また、10m歩行テスト、WGS合計、TUGにおいても有意差が認められた。SIAS下肢運動機能が改善した群は非改善群に比べ、入院時の下肢MAS合計が高かった。足関節可動域の改善群は非改善群に比べSIAS合計と下肢運動機能合計の値が低く、下肢MAS合計は高かった。【考察】NEURO-15は上肢機能改善を目的とするプログラムであるが、下肢機能や歩行に対しても有益な影響を与えている可能性が示された。下肢の随意性と筋緊張の改善は、その機序はまだ明かではないが、低頻度rTMSのもつ抗痙縮効果による影響が考えられる。また、歩行速度や歩幅の改善には、下肢機能の改善だけでなく上肢機能の改善も関与していると考えられたが、今回両者に有意な関連は見出せなかった。一方、下肢の随意性が低く筋緊張が高い症例に下肢運動機能の改善効果を認めた。今後は適応条件を明らかにし、NEURO-15に加え下肢の運動療法を併用することが有用と思われる。【理学療法研究としての意義】脳卒中後片麻痺患者に対する低頻度rTMSは上肢機能の改善のみならず、下肢機能や歩行も改善する可能性が示唆された。今後は低頻度rTMSの下肢機能への影響に対する神経生理学的な検討や、歩行や下肢機能の変化を捉えるための評価方法の検討が必要と考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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