理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-44
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ポスター発表
視標追従課題を用いた下肢CKC条件下における筋出力調節能力の特性 —漸増・保持・漸減運動による検討—
上野山 貴士松村 宏樹滝本 幸治
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抄録
【はじめに】随意運動は筋出力の上昇と下降の組み合わせによって遂行され、正確に筋出力を調節するためには、出力上昇相と下降相などの切り換えを円滑に制御することが重要である。また、次第に力を入れていく漸増運動、発揮された力の保持、次第に力を抜いていく漸減運動の制御メカニズムは異なると考えられている。また、実際の日常生活場面において下肢ではClosed Kinetic Chain(以下CKC)下での動作が多く、例えば、歩行時の立脚側下肢や、椅子坐位からの立ち上がり等の動作は下肢のCKCによって行われている。そこで、下肢CKC下での筋出力調節課題を行うことにより、先行研究で行われている下肢のOpen Kinetic Chain(OKC)との筋出力制御メカニズムの違いや筋出力調節の特性を知ることを本研究の目的とした。【方法】対象は、健常成人10 名(男女各5 名、年齢平均22.0 ± 1.5 歳)である。今回は、一側の下肢のみ課題を実施するため左右下肢間の機能差の影響を考慮し、Chapmanの利き足テスト(ボールを蹴る・缶を踏みつける・片脚飛びをできるだけ速くする)を実施し、全対象者の利き足は右側であった。対象者の測定肢位は、椅子坐位にて股関節90°屈曲・膝関節屈曲30°・足関節底屈・背屈中間位で、固定されたプレート上に設置された筋力測定装置(フロンティアメディック社製)上に足部を置き、運動課題としてキッキング動作を指示した。最初に、同条件下で等尺性のキッキング最大随意収縮(Maximum voluntary contraction: MVC)を測定し、これを基に10%・20%・30%MVCを算出した。運動課題は、各%MVCの目標筋出力に5 秒で達する漸増運動、続いて目標筋出力を5 秒保持する保持運動、その後筋出力保持から5 秒間で完全脱力する漸減運動の3 種類の課題で構成した。対象者の正面に設置したPCモニターには、対象者自身の発揮した筋出力値がリアルタイムに示され、モニター上に表示される標的力線図(筋出力目標ライン)上からキッキングによる筋出力値ができるだけずれないように指示した。なお、各%MVCで漸増・保持・漸減運動(力量調節課題)を3 回ずつ行い、一課題ごとに10 秒間のインターバルを設けた。また、対象者には主観的運動感覚の内省報告をさせた。データ解析は、標的出力である各%MVCの目標筋出力値と実際の筋出力値の誤差を検出し、各力量調節課題3 回分の平均値(絶対平均)を検討指標とした。統計学的分析は、各%MVCでの各力量調節課題成績に相違があるのか、また各力量調節課題成績が%MVCの相違により誤差が異なるのか、一元配置分散分析と多重比較検定(Bonferroni法)を実施した。いずれも有意水準は5%未満とした。【説明と同意】対象者には事前に本研究の目的と方法を紙面にて説明し、同意を得たあとに測定を実施した。また、実験プロトコルは、学内論理委員会の承認を得た。【結果】各%MVCでの力量調節課題成績に有意差は認めなかった。一方、漸増課題と漸減運動ではいずれも10%MVCと30%MVCとの間に有意差を認め(前者より順にp=0.03、p<0.01)、いずれも30%MVCで誤差が大きかった。また、いずれの%MVCでも漸増運動より漸減運動の誤差が大きい傾向であった。対象者の内省報告からは、「漸増運動よりも漸減運動の方が難しい」「10%・20%・30%MVC全課題において、予想よりも負荷が大きい」などの表現がみられた。【考察】膝伸展によるOKCを用いた先行研究では、漸減運動で%MVCが小さい程追従能力が低下すると報告しているが、今回の結果は漸増・漸減運動ともに%MVCが大きいほど程追従能力が低下したことから、OKCとCKCでは筋の収縮様式や運動抑制機構が異なっていることが考えられる。筋出力時には、サイズの原理により繊細な運動では小さい運動単位が、粗大な運動では大きい運動単位が動員されるため、筋出力が大きくなると緻密な制御が困難になり結果にもこのような点が反映されているのではないかと考える。一方、漸減運動の方が漸増運動より誤差が大きい傾向であったが、漸減運動はその制御特性として、漸増運動とは異なり筋弛緩の作用にて行われており、漸増運動時と漸減運動時とでは神経系に対するコントロールが異なると考えられている。そして、漸減運動の場合は、単に筋を弛緩するだけではなく、微細な筋出力調節が加わることで行われていることから、漸減運動時の筋弛緩のコントロールがより複雑になった結果であると考える。また、漸増運動より漸減運動時の方が運動関連領野が広範に賦活するという報告もあることから、漸減運動時の方が課題難易度が高いということも今回の結果に反映されたと考えられる。【理学療法学研究としての意義】CKCにおける筋出力調節能力の特徴を知ることは、未だ確立されていない筋出力調節能力評価方法とともに、下肢トレーニングへの応用が期待できる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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