理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-O-04
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一般口述発表
動作分析における視点注視特性について
臨床実習終了者を対象とした視線計測装置による分析
山田 洋一堀本 ゆかり原澤 洋平
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抄録
【はじめに、目的】理学療法介入プログラムの立案に、動作分析は欠かせない。臨床では,評価と治療介入は常に同時進行で行われることが多いが、高額な動作解析装置を使用しての動作解析は導入が難しく、専ら視診、触診を中心に評価される。現状では、養成校卒業時点で、即戦力とは言い難く、評価の段階でも課題を抱えており、この解決は卒後教育に委ねられている。本研究の目的は、臨床実習終了後の学生の動作分析視点ポイントを解析し、その特徴を分析することである。【方法】対象は、4年生理学療法士養成校学生12名(男性6名、女性6名)である。平均年齢は22.8±2.3歳で、既に臨床実習はすべて終了している。 方法は等身大画像課題を学生に見せ、視点ポイントを確認する。提示した課題は、72歳 女性、右肩腱板断裂のため5ヶ月前に機能再建術を行っている。課題には、左右それぞれ上肢を挙上させ、前額面及び矢状面4方向より動画撮影を行った。学生は視線計測装置を装着後、この動画を2回見て評価を行う。1回目は患者のプロフィールは告げず、動画を見た後、注目点と思い当たる疾患名をあげさせる。2回目は疾患名を告げた後、再度動画を見て評価をさせ、視点ポイントの変化と自らの動作分析の注意点について回答させた。使用した視線計測装置はNAC社製アイマークレコーダーEMR9(以下EMR9)、解析ソフトはEMR-dFactoryである。データは停留点分析を行い、注視点と軌跡を確認した。統計解析はクラスカル・ウォリス検定および一元配置分散分析を行い、危険率p<0.05で処理した。使用ソフトは日本科学技術研修所製 JUSE-StatWorks/V4.0総合編である。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、当院倫理規定及びヘルシンキ宣言に則り、課題対象者及び対象に口頭と書面にて説明を行い、署名にて同意を得た。また、得られた情報は個人が特定できないよう十分に配慮した。【結果】疾患名を正答した者は12名中1名(8.3%)で、画像分析では注視範囲によって差がみられた。注視範囲は肩関節・肩甲帯・肘部ではクラスカル・ウォリス検定統計量19.483であり、p<0.05で有意な差が見られた。注視傾向は頭部から罹患肩関節周囲を集中的に見ている者と注視範囲が頭部、体幹、左右肩関節の比較的大きい者に分けられた。4方向の動画では、特に前額面後方(背面)より情報を得ようとする傾向が強く、ほとんどの学生が肩甲帯から腰部と視点ポイントを移して観察していた。次に疾患名告知後の視点ポイントの変化については、告知前と変わらないと回答した者が12名中6名(50%)であった。うち4名は視点ポイントをさらに肩や肩甲帯に絞り込んでいると回答していた。注視回数では、顔面、右肩、左肩、腹部、頚部が多い傾向であったが、告知前後で統計的有意差は認められなかった。告知後、視点ポイントが変化したと回答した者は、注視点部位が絞られ、注視回数は減少していた。しかし、肩甲帯に関しては増加する傾向を認めた。【考察】天野によるとアメリカでは医療プロフェッショナリズムの教育を重要視し、多くの医学部でその整備ができたと報告している。日本では多くの理学療法士は臨床能力的課題を残したまま、養成校卒業を迎え、その教育は就職した施設の教育力に依存しているのが現状である。今回の研究より、肩関節疾患では特に背面より情報を得ようとする傾向がみられたが、注視ポイントは学生間で分散しており、疾患名を正答するには至らなかった。特に、分析能力に関しては、理学療法士の技術的側面では根幹であり、臨床で迅速な評価と対応を求められる。評価対象者の動作的特性を短時間で見極めるトレーニングが必要であると思われる。豊田らは、視線計測装置を用いて、熟練者と初心者に対して、停留点と注視順の分析を行い、その差について報告している。学生や初心者は、先輩理学療法士の視診ポイントの齟齬を修正しながら、評価技能を向上させていく。今後、経験者の傾向を測定し、比較する必要がある。「プレプロフェッショナル」の時代に行うトレーニングの際に疾患特性と注視ポイントを示すことができれば、効率的な評価技能の向上が期待できると思われる。また、将来的に技術評価に関しては、遂行のプロセスも考慮したうえで体系化する必要性があると思われる。【理学療法学研究としての意義】現在、卒後理学療法士の評価技能を判断する方法は報告されていない。学内教育で課題を残した学生の卒後教育を行う際、評価の視点を情報提供することにより、より早期に評価技能を向上させることが期待できる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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