理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-13
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ポスター発表
理学療法を実施した人工呼吸器装着患者における高度救命救急センター退室転帰の分析
関川 清一皿田 和宏對東 俊介堂面 彩加谷内 涼馬伊藤 義広木村 浩彰廣橋 伸之谷川 攻一濱田 泰伸
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抄録
【はじめに】近年、人工呼吸器装着患者に対して、早期から理学療法士が関わる機会が増えている。そのために理学療法士は、介入に関わる適切なリスク管理を行うことが必要である。また、救命救急医療や集中治療を要する患者は、一般病棟に入院している患者より院内死亡の危険性が高く、理学療法士は患者の生命予後を認識したうえで介入を検討することも必要であると考える。そこで本研究は、高度救命救急センターにおいて理学療法を実施した人工呼吸器装着患者を対象とし、退室転帰を予測する因子を明らかにすることを目的とした。【方法】2011年4月1日から2012年3月31日までに広島大学病院高度救命救急センター(以下センター)に入室し、24時間以上人工呼吸器を装着した患者のうちセンター内にて理学療法介入を行った患者を対象とした。但し、(1)入室後24時間以内にBest Supportive Careとなった患者、(2)定期予定手術後の患者、(3)前医で人工呼吸器管理となった患者のいずれかに該当する場合、対象から除外した。対象者の年齢、性別、センター在室期間、人工呼吸器装着期間、気管切開の有無、Acute Physiology and Chronic Health Evaluation Ⅱ(APACHEⅡ)、理学療法介入期間、センター退室時転帰を診療記録より調査した。生存退室群と死亡退室群間における各調査項目の比較は、カイ二乗検定およびマン・ホイットニーのU検定を用いて検討した。有意な調査項目を独立変数に、転帰を従属変数として多重ロジスティック回帰分析を行い、センター退室転帰に独立して影響を及ぼす要因について検討した。また,有意な項目に対してROC曲線を用いて曲線下面積(AUC)を算出し、カットオフ値はYouden indexを用いて算出した.統計処理は、IBM SPSS Statistics 21(IBM Japan)を使用し、有意水準は全て5%未満とした。【倫理的配慮】広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認(第疫‐478-1号)を得て実施した。【結果】条件を満たした人工呼吸器装着患者113名を対象とした。対象の属性は、年齢61.5±18.4歳、男性83名、女性30名、センター在室日数22.8±16.1日、人工呼吸器装着期間14.5±14.9日、気管切開あり37名、気管切開なし76名、APACHEⅡ30.7±7.8であった。生存退室群は94名、死亡退室群は19名であった。年齢、人工呼吸器装着期間、気管切開の有無において有意差を認めた(それぞれP=0.004、P=0.001、P=0.001)。センター退室転帰には、APACHEⅡが有意に関連する結果であった(モデルカイ二乗検定P=0.001・オッズ比1.125・正判別率83.2%)。人工呼吸器装着期間、年齢およびAPACHEⅡのROC曲線のAUCは、それぞれ0.743、0.709および0.737であり、カットオフ値は、人工呼吸器装着期間12.5日、年齢68.5歳、APACHEⅡ32.5であった。【考察】APACHEⅡは重症度評価のスコアとして予測死亡率の算出方法が報告されている。また人工呼吸器装着患者の生命予後の予測分析は、従来から多く報告されているが、理学療法を実施した患者を対象にした解析はない。本研究において退室転帰を予測する因子としてAPACHEⅡが関連することから、救命救急領域において理学療法実施患者の生命のリスクを検討する上で、APACHEⅡによる重症度判定が重要であることが示唆された。また、年齢および人工呼吸器装着期間の退室時転帰の判別精度がやや高いことから、重症度のみならず年齢、人工呼吸器装着期間が理学療法実施患者の生命予後に影響することが明らかとなった。以上より、理学療法介入のある救命救急患者は、APACHEⅡによる生命予後の推測が有用で、さらに年齢および人工呼吸器装着期間が、センター退室時転帰を判別する指標となる可能性が示唆された。本研究は、単施設での調査研究であり、さらにはセンターにおける理学療法の介入内容の検討に至っていない。今後は、多施設でのコホート研究を実施し、理学療法介入内容の検討を踏まえ、判断指標としての妥当性検証を行っていく必要がある。【理学療法学研究としての意義】本研究の成果を踏まえて超急性期にかかわる理学療法士は重症である救命救急患者の死亡転帰のリスクを認識し、生命予後を認識した上での理学療法戦略を立案することが重要である。
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© 2012 日本理学療法士協会
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