理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-S-05
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セレクション口述発表
腹圧性尿失禁に対する理学療法の治療効果と尿失禁手術実施に関連する因子の検討
平川 倫恵鈴木 重行加藤 久美子後藤 百万吉川 羊子
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キーワード: 尿失禁, 骨盤底筋, 女性
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抄録
【はじめに、目的】腹圧性尿失禁は女性において頻発し,生活の質(quality of life: QOL)に多大な影響を及ぼす。その治療法としては骨盤底筋体操が第一選択肢として推奨されている。骨盤底筋体操の補助的なものとして、機器を用い視覚、聴覚、触覚にて収縮を確認するバイオフィードバック療法がある。骨盤底筋体操にバイオフィードバック療法を併用することによる加算効果については一致した見解が得られていない。また、近年では低侵襲手術の登場により尿失禁に対する手術療法の普及が進んでいる。本研究では腹圧性尿失禁に対する骨盤底筋体操とバイオフィードバック療法の治療効果を比較・検討した上で、介入終了から1 年後に追跡調査し尿失禁手術の実施に関連する因子を検証することを目的とした。【方法】取り込み基準は泌尿器科医師により詳細な問診、ストレステスト等で少なくとも週に1 回以上の腹圧性尿失禁があると診断された女性である。本研究への参加の同意が得られた46 名に対し無作為割り付けを実施し、骨盤底筋体操群(体操群)に23 名、バイオフィードバック療法群(BF群)に23 名が割り付けられた。両群とも自宅での体操プログラムは10分間を2 回、毎日、12 週間実施するものとし、BF群は機器を用い収縮を確認しながら体操を実施した。評価指標は、King's health questionnaire(KHQ)、International consultation on incontinence questionnaire-short form(ICIQ-SF)、尿失禁回数、尿パッドの使用枚数、排尿回数、60 分パッドテスト、最大収縮時腟圧とした。介入終了から1 年後に尿失禁手術の実施の有無について調査を行い、手術群と非手術群の2 群において2 変量解析を実施した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は本施設の倫理委員会の承認を受けた上で実施した。本研究の被験者は事前に十分に研究内容を説明した上で同意が得られた女性のみを対象とした。【結果】12 週間の介入後、KHQは体操群では5 領域、BF群では7 領域においてスコアが有意に減少した。ICIQ-SFの尿失禁頻度、尿失禁量、QOL、及び合計スコアは両群とも有意に減少した。尿失禁回数は体操群では有意に減少した。BF群では尿失禁回数は減少傾向を示したが、有意な差は認められなかった(P = 0.054)。尿パッドの使用枚数、排尿回数には変化が認められなかった。60 分パッドテストにおける尿失禁量は両群ともに減少傾向を示したが、介入前後に有意な差は認められなかった。最大収縮時膣圧は両群ともに有意に増大した。すべての評価指標において両群間に有意な差は認められなかったが、0 週目における最大収縮時腟圧が10 cm H2Oに満たないような収縮力の弱いBF群の4 例は体操群の3 例と比較して、最大収縮時腟圧が大きく改善する傾向を示した。介入終了から1 年後において、尿失禁手術を実施していた女性は体操群では50%、BF群では31%であった。手術群(n = 16)と非手術群(n = 23)の2 変量解析の結果、「尿失禁罹患期間」、介入開始時における「睡眠・活力」、介入終了時における「心の問題」、及び「自覚的重症度」、介入による「社会的活動の制限」、及び「最大収縮時腟圧」の変化量に有意差が認められた。【考察】骨盤底筋体操は骨盤底筋群の筋力増強を促し,自覚的な尿失禁症状を改善させ,QOLの向上を図ることができる有効な治療法であることが示唆された。骨盤底筋体操にバイオフィードバック療法を併用することによる加算効果は認められなかったが、骨盤底筋群の収縮力が弱い症例についてはバイオフィードバック療法の良い適応となることが推測された。介入終了から1 年間で手術を実施していた女性の割合は先行研究と同様の傾向を示した。尿失禁手術の実施に関連する因子として「尿失禁罹患期間」や介入終了時における「心の問題」が挙げられたことから、より早期から介入を開始することが必要であり、心理面へのアプローチも重要であることが考えられた。また、介入開始時における「睡眠・活力」や介入終了時における「自覚的重症度」がより軽度であり、介入によって「最大収縮時腟圧」や「社会的活動の制限」がより大きく改善した女性では手術を回避できる傾向にあることが明らかになった。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は腹圧性尿失禁に対する理学療法の有用性を示すエビデンスを提供するものである。さらに、尿失禁手術の実施に関連する因子を検討したことによって、より適切な治療方法の選択が可能となるものと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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